国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   「そこをなんとか」を読んで   えとわ

 「そこをなんとか」という言い方は極めて曖昧である。日本人は「そこをなんとか」と相手に熱心に頼まれたら、それをむげに断るのは、何か気がひけるように思ってしまう。日本人は、義理人情といって、正反対のものを一緒にし、折衷して、独特の判断領域を設定するのだ。つまり、一切の事柄は、時と場合に応じて、伸縮自在の形をとっているわけである。日本人の絵画の特質に「余白」の美というのがある。「余白」の美とは、「甘え」の美ともいえるわけで、作者は残りの空間を相手にゆだね、鑑賞者はそこを勝手に想像することで、作品を完成させるのだ。日本人は、きめつけを好まず、いつも融通無碍な可能性を残しておこうとつとめるからだ。
 日本人があいまいであるとよく言われることがある。友達に、
「この髪型、どう?」
と聞かれて、似合わないとは言わない。曖昧に答えるだろう。相手が傷つくから。相手の気持ちを考えながら話すことが多い。あるいは、おばさんに、
「かわいいね。」
と言われて、はいそうですとは言わない。自慢していると思われる。だから、
「いいえそんなことはありません。」
と答える。ところが、外国人は、YesかNoがはっきりしている。そういう時は、
「Thank you.」
と答えるだろう。また、
「Do you like …?」
と聞かれれば、Yes かNoと答えるだろう。私は、曖昧な返事をしてしまうかもしれない。人の欠点を言ったり、自分の長所を自慢したりしたあとは何となく不快な気持ちになり、人間関係も悪くなると思った。まるで、「物言えば唇寒し秋の風」のようだ。だから、余計なことはしゃべらないほうがいいと思った。
 他にも余白の美がある。余白の美は、書道にも当てはまる。習字の先生に、
「余白も大事だからね。ここは、あけて」
という言葉をかけていただいたことを思い出した。ここに余白があることで、作品がひきたつというわけである。そう言われてみれば、ぎっしりつまって書いたら作品が台無しになるかもしれないと思った。
 そこをなんとかという言葉は、私達子どもの世界では、あまり使わない言葉であるが、似た言葉でよく使う言葉がある。
「お願いお願い、なんとかして」
と頼まれれば、私もやってあげてしまう。断れば、自分のことをいじわると思われてしまうという考えが働く。自分のことをよく見てもらいたいという気持ちも働く。でも、私は、日本人の曖昧さは、時と場に応じているので、いいと思っている。そこには、思いやりが働くからである。

   講評   sugi

 日本人の言葉や態度の曖昧さについて、不思議に思っている外国人はたくさんいるだろうね。そういう外国人には、この感想文を読んでもらいたいと思ったよ。日本人がなぜ曖昧さを好むのか、しっかり分析してまとめることができたね。
 曖昧な答えをする例を二種類挙げることができたね。一つは、相手を傷つけないための曖昧さ。そしてもう一つは、日本人の好きな謙譲の美徳の精神から生まれた曖昧さ。二種類の実例を通して、なぜ曖昧な答えをするのかという理由を述べることができました。
 長文にも絵画の例が出てきたけれど、きめつけを好まない日本人の性質が、態度や言葉以外にも見られるというのは、興味深いことだね。えとわさんが例に挙げた書道も、まさに余白を大切にする芸術と言えそうだ。字の間隔はもちろん、一つの字の中にも、余白を入れてふところの深い字に書き上げたりするものね。
 実例はさまざまな角度から考えることができました。最後の段落では、日本人の曖昧さの理由を改めてまとめ直しておくといいね。えとわさんの分析によれば、「相手への思いやり」「自分をよく思われたい気持ち」「謙譲の美徳」「余白の美を大事にする」の四点になるかな。

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