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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   レネットを読んで   青藍

 1986年4月26日、チェルノブイリ原子力発電所4号炉で原子力発電事故が発生。かつて広島に投下された原子爆弾の約500倍という、膨大な量の放射性物質が大地、空気、そして人体を蝕みました。放射能に汚染された地域に住んでいた子どもたちは、それ以来、甲状腺や心臓、胃、リンパの異常という「病気の花束」を一生にわたって抱えるという運命をたどり、周辺地域の深刻な放射能汚染は今もなお変わっていません。史上最悪の原発事故となったこの事故は、今から二十年以上前の出来事です。そして現在も、事故発生地から半径30kmが立入禁止区域に指定されていますが、一部の人々はまだその地域に住み続けているという現状があります。
 私は「レネット〜金色の林檎」という本を手に取るまで、これらの「チェルノブイリ原発事故」についての認識はゼロに等しいものでした。セリョージャや海歌との出会いをきっかけに、私はこの事故について詳しく調べ始めました。日本は原子爆弾が投下された世界唯一の国である一方、電力の約30パーセントを原子力発電に頼っているといわれています。事故当時を知らない私たち中学生は、セリョージャやレオニトのこと、そしてこれからの未来について今、学び、考える必要があると思います。
 私は去年の夏、市の援助により学校を代表して広島を訪れ、平和記念式典に参列しました。平和な時代に生まれ、戦争を知らない私にとって、原爆ドームや平和記念資料館の展示は大変な衝撃でした。当時広島で被爆した女性のお話をうかがう機会にも恵まれ、当時の様子や被爆の実態について克明に語ってくださいました。そのお話の中でも特に、放射性物質による被爆、現在もたくさんの人々を苦しめる原爆症の恐ろしさは想像以上のものでした。たとえ爆風を逃れて生き残ることができたとしても、ガンや臓器の異常、白血病や放射線障害と一生闘わなければならないのです。
 現在は広島も長崎も、汚染されていない自然が戻り、安全な食料を得られるようになりました。しかし、チェルノブイリに人が住めるようになるまでには、膨大な時間が必要だといわれています。きれいな空気、水、持て余す程の食べ物に囲まれた日本。ここでただ何気なく生活してきた私は、「病気の花束」という爆弾を抱えながらも明るく、懸命に生きるセリョージャに対して、すまないような気持ちで言葉が出てきませんでした。食べ物を平気で残し、新しい物を次々と買っては大量のゴミを出す、といった生活が、自分にとって当たり前になっていたことがとても恥ずかしく思えたからです。澄んだ美しい環境の中で豊かに生活しているというのに、私たちはそのことに対する感謝の気持ちを忘れがちだと思います。セリョージャやレオニトは、今日、私たちが口にしたきれいな水や食べ物、そして大好きな故郷での毎日がどれほどかけがえの無いものであるか、気付かせてくれました。
 確かに、原子力発電を今すぐやめるということは現在の日本において、かなり難しいことかもしれません。しかし、大きな地震が頻繁に起こる日本では、原発事故の危険性がとても高いと思います。実際、今年の七月に新潟県の柏崎刈羽原発で、微量の放射能を含む水が流出するという事故が発生しました。幸い、大規模な放射能漏れではありませんでしたが、地震といういつ起こるか分からない自然災害の影響は深刻であると思います。
 ドイツでは、十年以上に及ぶ議論の末、原子力エネルギーの利用を廃止する「改正原子力法」を2002年に施行しました。この法律により、ドイツの原子力発電所は今度数年に渡って廃止されていく予定です。原発廃止に踏み切った主な理由は、「重大な事故が起こる危険性が高いこと」だそうです。
 科学の発展が人間を滅ぼす、ということが決して起こってはなりません。人類が手にした原子力という巨大な力は、私たちに大きな利益を与えると同時に、使い方を誤れば取り返しのつかない事態を招く諸刃の剣であるということ、これをほんの一時も忘れてはいけないと思います。チェルノブイリ原発事故のような悲しい事故をもう二度と起こさないこと、それが私たち人類の未来を決める大きな課題であり、セリョージャたちのためにできることだと思います。

   講評   hamura

見事な作品に仕上がりました。
 読書や広島訪問といった経験から得た知識をもとに考察したことだけでなく、国内外の過去や現在の諸問題についてもよく調べられていて、簡潔に述べられました。特に、没頭のチェルノブイリやなかほどの広島の惨禍については、本当によくまとめられています。上手ですね。

 「すまない」という気持ちも輪郭を持ってはっきりと表現できています。すまない、から、恥ずかしいへの移行もよく伝わります。
 (ドイツの原発のところ)「今度」→「今後」でしょうか。

 本文を読み、自らも関心を持って考察(調査)を進める、という姿勢が立派です。


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