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　　　外見と中身　　　清原和博

欧米のリンゴは大衆の中で育ち、生食用、加工用、料理用と多彩な用途に分かれ、味がよければよしとされている。一方、日本の場合、リンゴはぜいたく品として出発し、外観への極度にこだわる道を歩いてきた。それも今では、味よりも見てくれのほうが、「高品質化」の上位に座っていて、それは国民性といえるかもしれない。そのリンゴの着色は、外国人も驚くような方法であり、リンゴ園の地面を銀色のビニールで覆い、その反射光で着色させたり、リンゴをひとつずつ手で百八十度回してまんべんなく日を当てたりと、キメ細やかな技術である。しかし、その技術が、生産者自信が食べたくないようなリンゴを生み出してしまった。そのような奇妙な日本人の美意識を直す必要があるのではないのか。
　あるとき、お母さんとスーパーにプレゼント用のイチゴを買いに言った。そして店員に、
「イチゴを包装してもらいたい。」
とお母さんが言っただけなのに、その店員は、何重にも、また、ていねいにほうそうしてくれた。なぜ、食べられて、すぐなくなってしまう物にていねいに包装しなければいけないのか、僕は不思議に思った。また、そのスーパーには、普通の丸いスイカではなく、箱か容器の中に入れられ、四角く作られたスイカが売られていた。自然な形を人工的な形に作り変える必要は無いのではないかと思う。
　お母さんがドイツに暮らしていたとき、よく近くに立つ市場に出かけたそうだ。トラックで農家や海のほうから新鮮な食料が運ばれてきて、色とりどりの野菜や果物、魚など、のぞくだけでも楽しかったらしい。果物では、特にリンゴやみかんを見て驚いたそうだ。
日本では、店頭で見たこともない、ふぞろいな格好の悪いリンゴ。しゃきっとした歯触りと甘さとすっぱさが程よい日本のリンゴに慣れていたお母さんには、ただ庭の木から今もいできました、というようなふかふかしたすっぱいだけのリンゴにびっくりしたと言う。
デパートでも黙っていれば、無造作にビニール袋に商品をいれるだけ。店員もそういえば、日本と比べるとぶっきらぼうで、サービス精神に欠けているという印象だったそうだ。質実剛健なドイツらしい国民性だと思ったそうだ。いつかお母さんが新宿のデパートにドイツ人を連れて行ったところ、
「ここは、皇室とか特別な人が来るデパートなのか？」
ときかれ、普通のデパートだと答えると目を丸くしていたそうだ。最近外見重視の若い日本人が増えているのには、一見きれいでないものや古いものに価値を見出せない人が増えているのと重なる部分があるような気がすると、お母さんは言う。表面的なきれいさは、中から出てくる美しさがなければ、すぐはがれてしまうメッキのようなものだと思うそうだ。
　人は、誰でも美しいもの欲しがろうとする。例えば、真珠や宝石などを。それなのになぜ、りんごなどの果物になると、外観を気にしなくなるのか。僕は、そこのところが、矛盾していることが不思議に思える。

　　　講評　　　kira

　清原くん、こんにちは。日本のりんごは見た目もよくおいしいものが並んでいます。野菜も、泥や虫などついていないものを私たちは好みます。つくりはじめると、とことん高品質へ走っていく日本人の勤勉さが、見た目重視をうむのかもしれませんね。
　清原くんも、買い物をするときの過剰な包装に疑問を持ちました。四角いスイカは、自然に逆らっているようにさえ思えますね。
　対して、お母さんから聞いたドイツのお話は、どれも本物を大切にする質実剛健な心が伝わってきます。ドイツは環境先進国としてお手本にされていますね。
　最後のまとめの部分が「僕は、そこのところが、矛盾していることが不思議に思える。」と疑問で終わっています。見た目の美しさにこだわる立場と、中味が大切であると考える立場と、清原くんはどちらに賛成するのかをあきらかにしてしめくくるといいね。