創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   文化への愛着   れもん

 以前、山梨県の西部の町や村が合併して誕生する、「南アルプス市」という新たな市の名称に対する反対運動の様子を、テレビで見たことがある。日本の地名らしくない、日本語への冒涜だ、などと地元住民からの批判が寄せられていた。名称というのは、一見オマケのような存在に見えるが、そのモノの文化の象徴としての役割を担っている。昭和の始めに、日本が朝鮮への統治政策の一環として行った「創氏改名」や、住基ネットの11桁の住民基本コードに対して、不快感を感じるのも、その所以である。日本において文化は、戦争や天災などの状況下では、一番最初に切り捨てられるもので、生活を送ることに関しては、一番不必要なものと思われがちだが、世界では、自国の文化を守るために、戦争をしている国が多く存在する。私は、日本人の文化や固有名詞に対する意識の薄弱さが問題だと思う。(書き出し)(社会問題)
 その第一の原因としては、認識的な思いやりの喪失が挙げられるだろう。私は以前、学校の授業の一環で、地区センターのデイサービスの手伝いに行ったことがある。そこで手伝う際の約束事は、サービスを利用するお年寄りを、「おじいちゃん」などと呼ばずに、その人の名前で呼ぶということだった。よく、人の名前をすぐ覚えられる人は、人間関係を深く付き合っている人だと言われるが、人の名前を覚えるということは、その人自身を認識することでもある。学校で、あまり関わりのない先生に、名前を覚えてもらえていると嬉しいし、親近感がわく。自分にとっては一面化して見えるものでも、相手の立場に立って物事を考え、相手にとって大切なものを自分も大切にしようと思う思いやりから、文化に対する愛着は育まれるのだと思う。(複数の原因Ⅰ)(体験)
 第二の原因としては、物事を見る際の視野の狭さが挙げられる。私は、学校の授業で世界史を勉強することで、日本という国の異質性や現代社会を形成している根本的概念を学んでいる気がする。強い宗教意識を持たない日本人には理解し難いが、世界には非常に強い宗教色をもつ国家が多く存在する。宗教を信仰する人々の礼拝や祈りの様子を見ると、彼らにとっての信仰が生きる道しるべのようなものなのだな、と感じる。そんな彼らから見たら、実質的には無宗教の日本人というのは、やはり異質にみえるのかもしれない。表面的には自分の価値観から離れていることでも、根本を探ることで、そのものの存在の大きさを知ることができる。(複数の原因Ⅱ)
 確かに文化は、化学や数学などと違って、人間の技術へ恩恵をもたらすことはできない。しかし、果たして人は、水と食べ物など必要最低限なモノさえあれば生き続けることができるだろうか。人が、衣食住が揃うことで生きられるのは、その衣食住が文化を生み出すからである。文化とは、人生を楽しむためのエッセンスではなく、人生の根本に根付いている原理である。だからこそ、日本人の文化に対する意識の弱さは、日本という国のアイデンティティーの喪失、迷いを意味するから問題なのだと思う。やはり、南アルプスという名前が似合うのは、スイス以外考えられない。(反対意見)(名言)(社会問題)
                

   講評   nane

 書き出しの第一段落がいいね。内容もよく把握しているし、密度も濃い。問題意識の焦点も絞られている。
 ボランティアでおじいちゃんを呼ぶときの体験もいい話。人間は、何歳になってもやはり、自分をかけがえのない個人として認められたいと思う。自分のことはよくわかるのに、他人に対しては忘れがちだからね。
 人間も民族も、それぞれの歴史を背負っている。お互いに共通する面は、これからだんだん増えてくるけど、共通しない面があることをむしろ前提にしていくことが、豊かな社会を作る条件になる。
 反対理解は、文化の役割でもいいけど、普通名詞の普遍性のようなところか。
 「やはり、南アルプスという名前が似合うのは、スイス以外考えられない」は、面白すぎ(笑)。


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