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　　　窮屈さと自由　　　くるりんぱ

（要約）固有名詞は、言葉が社会的なものであることを示している。すなわち、固有名詞は子どもを社会化するための基本的な道具であると同時に、死ぬまで固有名詞の支配下に置かれる。さらに、固有名詞は名前とアイデンティティの二つの面がある。その意味で固有名詞は政治的である。（社会問題の主題）にもかかわらず、現代は固有名詞をもたないようにする若者が増えてきたことは問題である。
　（複数の原因一）その原因は第一に、集団の中にいることを好まない若者が増えてきたことが挙げられる。（体験実例）私は高校で教鞭をとっているが、十年前に比べると保健室の利用者が急増した感がある。一頃前までは少々具合が悪くても、授業にはでないといけないという考え方が当たり前であった。しかし、いまの子供達の中ではそのような考え方は薄れている。彼らは決して体の具合が悪いわけではない。教室の中でみんなといっしょに受けなければいけない授業の空気が耐えられないというのである。５０分間自由を奪われてしまうことが苦痛だというのである。そのため、昨日は授業に出たから今日は保健室で休むということを繰り返していくのである。そんな生徒たちのなかでも単位を取るために必要な最低出席日数を数えながら授業に出る生徒はまだいいほうである。なかにはそれすらせず、ただ漫然と授業を休んでしまい、その結果留年、退学となってしまう者も少なくない。卒業だけはしたい、という気持ちすらもないのである。このように、学校に属することに固執しない者が多くなってきた。
　（複数の原因二）また、もう一つの原因は社会自体が固有名詞をもたないことに対して寛容になったことにある。（社会実例）昔は学校を卒業すると、どこかの会社に籍を置いて働くことが普通であった。しかし、最近ではどこの集団にも所属せずに、好きな時にだけ自分の都合で働くフリーターが多くなってきた。社会もそれに呼応するかのように、フリーターの存在を容認するようになってきた。すなわち、集団に属さない生き方が広く認められるようになってきたのである。
　（反対意見への理解）確かに、固有名詞を持たずに生きることは、他人に縛られず、自由を満喫できるのかもしれない。しかし、あまりに長すぎる休息は、かえって苦痛であるように、（自作名言）過ぎた自由は苦痛を伴ってくる。私たちは社会の一員であり、他人とかかわり合いながら生きていくしかない。つまり私たちにとって、集団に属して固有名詞をもつことは不可欠である。息苦しくなることも多いと思うが、普段窮屈さを感じているからこそ、たまに味わう自由がすばらしいものに思えるのでないだろうか。（社会問題の主題）だから現代のように、固有名詞をもたないようにする若者が増えてきたことは大きな問題である。

　　　講評　　　hota

　連休はいかがお過ごしでしたか。少しは骨休めになりましたでしょうか。休み宿題の作文も、お忙しい中、休まず送ってくださいましたね。本当に頭が下がります。森リンの点数も、８７点という高得点でした。

　全体にいい構成になっていますし、特に結びの段落は良かったと思います。１つだけ、細かいことを言えば、原因の１が、やや原因というよりは結果に近いものになっている気がします。これはかなり微妙なところなので、そう断定することもできないのですが、より原因らしきものとするならば、「若者たちが日々の生活に、あまりにも無気力になっていること」「世の中の決まり事に適応できなくなっていること」「現実の生活に、挑戦する前にすでに疲れていること」などとしてみてはどうでしょうか。あるいはさらにその原因をたどるならば、「競争の果てにある格差社会に、何の希望も持てなくなっていること」あたりに行き着くのかもしれません。いずれにせよ、これが次の世代を担う若者たちかと思うと、寂しいことですね。