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　　　値段をつけられないもの　　　ショウ

　村長が、大きく育ったヒノキを一番高く売る方法はないか、と聞いてきた。玄関の表札にして売るのが一番高く売れると教えたら、村長は不愉快そうな顔をした。村長は樹齢二百年を超えた大木が、柱になった後も堂々と建物を支え続ける姿を思い描いていたのだ。木が本来持っている価値を生かすことと、商品として木を高く売ることは、必ずしも一致しない。木目の一定な輸入木材に比べると、国産材の工場はいまも職人の世界である。木の文化を守り、山の木を単なる商品にしてしまわないためには、職人的な腕が生きていなければならない。僕は物の価値をお金に換算しないで考えるほうが良いと思う。
　その理由として第一にお金に換算して物事を考えると、その物の本当の価値がわからなくなるからである。例として世界遺産をあげてみる。世界遺産の中には、原爆ドームのようにお金に換算すると大して貴重ではないものがたくさんある。僕は最初に原爆ドームの写真を見たとき、建設途中の建物かな？と思った。（笑）しかし、原爆ドームは世界で唯一原子爆弾が落とされた場所で、核兵器の放棄を訴える貴重な遺産だ。イースター島も何も知らない人から見れば単なる石でできた人形で、お金に換算するのは難しい。しかし、大昔に作られたモアイはなぞに包まれている。だからこそ、多くの人を魅了しているのだと思う。
　第二の理由として、お金に換算せずに物事を考えると、その物の本当のよさが見つかるからである。夕焼けはきれいだな、と思うだけで、生活の中では何の役にも立たない。しかし、夕焼けを見ると、いやなことやつらいことが忘れられる。実際に、学校で話し合いがうまく進まなくて悩んでいたときに夕焼けを見て、そのことを忘れることができた。僕は、夕焼けが一番いやなことを忘れることができるものだと思う。夕焼けを見るたびに「この夕焼けは何円だ」などと考える人は少ないであろう。
　確かにお金に換算して物事を考えると考えやすく、わかりやすい。しかし、「自分の心のうちに持っていないものは何一つ自分の財産ではない」という名言があるように、お金に換算できない物の価値も大事にするべきだ。
　

　　　講評　　　hamati

●要約はよく要点を捉えて書くことができています。樹齢二百年を超える大木を売ろうとした村長さんの話は、具体例なので、なくてもよいですよ。
●「物の価値をお金に換算しないで考えるほうが良いと思う」と、自分の考えを意見として書くことができていますね。お金に換算できない物の例として、原爆ドームとイースター島をあげているところに、ショウくんの個性が光っていますね。世界遺産に普段から興味があるからこそ、書ける文章ですね。
●第二の例として、夕焼けをあげているのも、すばらしいです。夕焼けを見て嫌なことを忘れることができた、という自分のことをくわしく書いているのも、とてもよいです。そうですね。考えてみれば、夕焼けに値段をつける人なんて、いないですね！　ショウくんの作文を読んで、なるほど、と思いましたよ。
●反対意見への見解と、名言の引用も入っていて、とても素敵な作文になりました。いつの時代でも、お金で買えない物って、数限りなくあるものですね。この作文に書いた気持ち、ずっと忘れないで持っていてくださいね。