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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   科学をどう利用するか   かおや

 科学、特に医療技術の進歩は、今までは難病と呼ばれていた病気が治療可能になるなど、私たちに大きな恩恵をもたらしてきた。しかし、医療の過度な進歩は、生と死の境界線を曖昧なものにしてしまった。その典型例が、植物状態や脳死状態である。何らかの理由により、脳に大きなダメージを受けたことにより、意識が戻ることは無く、心肺機能も停止してしまったため、機械の人工心肺によってかろうじて命を取り留めている状態である。機械により心肺機能は維持されているため、生物学的には生きているが、完全に意識が無いため人間としては死んでしまっている。このような状態の患者の生死を決めるのは、多くの場合は、残された家族である。しかし、突然「あなたの家族を生かしますか?殺しますか?」と決断を迫られても、医者は専門的なことを話すだけだし、当惑するばかりである。こんなときには、最先端の難解な科学と、私たち一般人の橋渡しをしてくれるインタープリターが必要となってくる。日本では、このインタープリターが不足していることが問題である。
 この問題を生んだ第一の原因は、学問の細分化、専門化が進んでしまったことである。理系の人は、ひたすら研究に没頭しているため、文章力に乏しく、文系の人は早々に科学の勉強を放棄してしまったためにまったく科学が理解できない。このような状態では、インタープリターはなかなか生まれない。日本の学問が細分化されてしまったのは、日本の現在の学問の多くが、明治時代に海外から輸入されたものだからである。明治時代の人々は、外国語で綴られた難解な学問を解読するために、一つの学問に専念せざるを得なかったのだろう。
 第二の原因は、日本において理科離れが進んでしまったことである。本来理科とは、実験の繰り返しの上に成り立っているものである。しかし、日本の学校の理科の授業は、原理の説明と計算問題ばかりで実験が行われることは滅多に無い。これでは、理科離れが進んでしまうのは当然である。私が通っていたインターナショナルスクールの理科の授業と言えば毎回実験で、おとなしく先生の話を聞いているだけの授業はあまり無かった。日本に帰ってきて理科の実験の少なさには少し驚いてしまった。日本では、理科は専門分野に進む人以外にとっては、ただの受験の道具でしか無い。だから自然と学校で扱われるのは、受験で問われる計算問題や知識問題に絞られるのだ。
 確かに、専門に没頭するのも良いことである。しかし、ひたすら専門に没頭して研究を進めるだけでは、どんなに素晴らしい研究成果を出したとしても、それはただの自己満足である。科学は研究することに意味があるのではなく、成果を生かすことに意味があるのだ。手段と目的を取り違えてはならない。アメリカでは、とある女性が最先端のクローン技術を用いて、亡くなった愛犬を蘇らせたらしい。対して日本では、クローン技術なんてものは遠い未来のものと思われており、自分が利用できるなどとは思いつきもしないはずだ。日本では、科学者と利用者の相互理解が圧倒的に遅れているのである。日本でインタープリターが普及すれば、私たちの生活はより豊かになるはずである。

   講評   nane

 書き出しの脳死の話は、じっくり書いたね。
 医療技術などは、特に専門家とアマチュアのギャップが大きそう。こういうところを橋渡しする人は、両方の知識と感覚を知っている必要がある。
 日本では、こういうインタープリター的な役割は、あまり高く評価されていないところがあるけど、実はこういう両方できる人というのは、社会では貴重な存在。今は、文系の人は理科がわからないし、理系の人はよくわけのわからない文章を書くし、両方できる人が少ないようだからね。
 結びの意見のあとに、アメリカの女性のクローン犬の例を入れたのはいい書き方。日本では、ちょっと考えられないことだね。
 安定した構成の作文。

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