創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   夢のはなし   紫式部

 太古の昔から人々は神話を通して人間の内的世界と関わってきた。しかし、現代のテクノロジーの発展が示すように、近代人は自然科学によって世界を見る傾向が強くなり、神話から遠ざかった。しかしここで、神話との関わりを放棄することは世界と自分とが上手く関われないことを意味する。神話を通した内的世界。それは大人になるにつれて薄れていく気がする。子供は自分の知らないことに対し興味を示し、自分の中で勝手に結果を導き出して変に納得していたりする節がある。大人になるということはそのような間違いを訂正する旅でもある。後から「あちゃー」と恥ずかしくなるような間違いもあれば。しめしめ、と新たな発見にひとり心躍らせることもある。現代は科学的説明が幅を利かせて、物語的な考えは幼稚な考えだとみなされている。しかし、科学的思考だけでは考えが味気なく、自分と世界の関わりも実感できない。私たちは物語的思考も¥尊重していくべきだ。
 そのための第一の方法として、子供時代の感性を失わないことだ。我が家にはビデオカメラが無いので小さいころの姿が映像として残されていない。その代わり、数本のカセットテープがある。正月、家族の誕生日、学校、保育園の行事、クリスマス、何かの節目節目のときを必ず録音していたのだ。特にお気に入りは父の誕生日での会話。その日は父の帰りが遅く誕生日ケーキはまだお預けという状況。まだまだ雪の残る3月の夜。母は私にケーキを外に出してきてと言った。私の家では冬ならケーキは冷蔵庫ではなくベランダに出して冷やすというのが決まりである。「どうしてー?」「どうしてそとにだすのー?」「美味しくなるからだよ」「どうしておいしくなるの?」「冷えるからだよ。」「冷えるとなんで美味しいの〜?」「どうしてだろうね?」「あっそっかぁ〜冷たいほうがおいしぃ〜かぁ〜♪」私は何が分かったのだろうか? 『冷やすと美味しくなる魔法』がかかるとでも思ったのだろうか。ひとりで納得してふんふんと鼻歌を歌っている3歳の私。子供のころの感性とは大人になるにつれていつしか消えていく。しかし、その感覚を忘れないように心がけることは出来る。その感覚の何が大事なのか? 簡単だ。人生が楽しくなる。
 また第二の方法として、子供のころから科学的思考を子供に押し付けないことだ。とは言っても子供に難しい説明を聞かせても理解する事は少ないとは思うが。しかし例えば、サンタさんはクリスマスの夜にトナカイの引くそりに乗ってプレゼントを届けに来るかといえば、実際は来ない。しかし、それを心待ちにして待つ子供の心はどんなにかわくわくしているだろう。私もその記憶がある。それが嘘だと知ったときの落胆は大きかった。「プレゼントを置いてるのはお父さんよぉ。第一が空を飛んでそりを引いてるなんて物理的にありえないじゃないのー。」なんて、言おうもんなら。子供は泣き出してしまうだろう。アインシュタインは天才である。それは誰もが認める事実だ。しかし、子供のころの彼を理解する人はほとんどいなかった。なぜなら彼の妄想や異様な発言は周囲を逸脱していたからだ。そんな中、母は彼の味方となり、彼の言う言葉を受け止め、彼を応援したのだ。やはり、このような親の姿勢が彼を後の天才と知らしめたのだろう。真実は徐々に大人になるに連れて自分で知るようになる。早くから大人が子供に物事の真理を伝えすぎて子供の夢を壊してはいけない。
 確かに、科学的な根拠は大事である。しかし、それだけでは自分の心に広がりが生まれない。非現実的な物語、それは子供だけではなく、そして大人でも保有できる夢物語、それらが人生を楽しくしてくれる大事な要素だ。「何事も過ぎたるは及ばざるが如し」ということわざがあるが、親が説明しすぎて子供の感覚を奪ってしまってはいけない。やはり、物語的説明の良さを見直し、世界と自分との豊かな繋がりの回路を見つけていくべきである。

   講評   kira

 紫式部さん、こんにちは。物語的な思考、神話のような世界観を持ち続けることも大切だというテーマでした。私たち人間は、ずいぶん長い間、自分の命やさまざまな生命、自然について、宗教をつかった解釈をしてきました。自然科学が登場し、曖昧なもの矛盾するものに明解な答えを出すようになってからは、ほとんど盲目的にその説明にのっかっていきました。しかし、人間はどうしたって白黒二色で表現できるものではないし、数字で説明のつく存在ではないようです。
 子どものころの感性を持ち続けることは大切ですね。いわゆる、やわらかい頭ですよね。ケーキは冷えるとおいしいということを、科学で説明してもかえって困難な気がします。
 サンタクロースについても、ぜひ物語としてとっておきたいものですね。人の心は、心臓にあるのか脳にあるのか、これも科学で考えたくないものだと思うのですが、いかがでしょう。
 科学は正確で普遍的ですが、何もかも切り捨てて行く考え方でもあります。生きていくうえで、ひとりではない自分を意識する時、求められるのは科学を超える物語の存在ではないかと思われますね。


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