創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   人と言葉   ニンジンスキー

 ことばには二つの使いかたがある。経験が先行してそれをことばで表すことと、ことばが新しい経験を生み出すことだ。これは「伝達」と「創造」ということでとらえることもできるし、あるいはことばの「実用的」な働きと、ことばの「美的」な働きといわれることもある。私たちのことばについての認識はふつうその実用的な働きのほうに大変かたよっていて、もうひとつの美的な働きのほうは忘れられがちだ。私は、ことばの意味だけではなく、音や雰囲気にも注意を向けたほうが良いと思う。
 その理由は第一に、より印象付けられるからだ。私の学校の中学一年生、つまり今の私たちは、一人につき一回、鎌倉の「七里ガ浜」というところにある老人ホームへの訪問が総合学習となっている。わざわざ「七里ガ浜の老人ホーム」と呼ぶのが面倒臭くなってしまって、「老人ホーム」と呼びだしたが、またこれもしっくり来ないと言う理由で、「七里ガ浜」に落ち着いている。みんなが「七里ガ浜」と呼ぶので「言葉いたずら」というマイ
ブームを応用してある友人に
「しちりがまは、しちりがまは」
と吹き込んでみた。すると友人はまんまとわなにはまり、まるで何か呪文をかけられたかのように
「しちり・・・」
のところでつっかえるようになった。けれど逆にそれによって印象付けられ、今では施設の概要より何より、「しちりがまは」を覚えている。また、国語の授業の読解では、井上靖の「しろばんば」を読んでいるが、
「ばんばしろ、ばんばしろ」
と吹き込んだら、今では逆に私がはまり、
「ばんば」
と略して呼ぶようになっている。

 その理由は第二に、その人から出てくる「ことば」のニュアンスや音で、その人の性格を推測できるからだ。下校時に大雨が降っている時、穏やかな性格の人だったら、
「雨がたくさん降っているね」
というし、もし天然だったら
「あめがざあざあふってるね」
リーダー格の人だったら
「雨ひどいね。バスが止まるんじゃないの?」
知的な博士タイプだったら
「まるでバケツをひっくり返したような雨だ」
勝気な人だったら
「なんでこんな時に雨が降るの!!」
といった具合だ。今は文章上なのでニュアンスは伝えられないが、想像できるだろうか。「〜だったら」の部分を抜かしても「〜」のところは埋まるのではないだろうか。こういうふうにして、言葉にしてはじめてその人の「真」の部分が現れてくるのではないだろうか。特に「勝気な人」の所では気迫が伝わってくる(笑)。データに「人間関係における意識調査(読売新聞 2004年)」というものがあり、それによれば「電子メール、携帯メールのほうが気もちを伝えやすいか」という質問の回答に「はい」と答えた人は28パーセントで「いいえ」と答えた人は64パーセントだった。やはり、「言葉」にしたほうがよいのだ。
 確かに日常的な言葉の使い方も必要である。もともと言葉はそのためにあるし、おそらく私たちが言葉の美しさに気付いたのは言葉がひととおりできてからだったろう。しかし「トランプが生きているのは、それが実際のプレーに使われているときである」という名言のように、言葉も、言葉が生きているのは、言葉が実際にしゃべられている時なのである。生きているからこそ、私たちに感動を与えてくれるのではないだろうか。だから私は意味だけでなく音や雰囲気にも注意を向けたほうが良いと思う。

   講評   hira

 「ニンジンスキー流、言葉の楽しみ方」と副題をつけたいような内容でした。自分の言葉に対する感覚を段落に沿って、構成することで、新たな言葉に対する枠組みを手に入れたのではないかな。
■第一段落 ● 是非の主題
 「私は、ことばの意味だけではなく、音や雰囲気にも注意を向けたほうが良いと思う。」自分の気持ちに添った言葉でまとめられたね。
■第二段落 ● 複数の理由 ◎ 体験実例
 長文の詩の言葉をニンジンスキーさんの身近な実例で置き換えるとこうなるのだね。言葉を楽しむところが「らしさ」だなあと感じましたよ。段落の最後にもまとめになる文章を入れておくといい。
■第三段落 ● 複数の理由二 ● データ実例・長文実例 ◎ ユーモア表現
 国語のテキストにしたいような段落でした(笑)。やはり小説を書く側の視点は違うね。こういう一歩つっこんだ楽しみが分かると国語が好きになるのだろうなあ。データ実例もよく引用できています。
■第四段落 ● 反対意見への理解 ● 名言の引用 ● 是非の主題
 言葉の生きた感じに注意を向けてみようという、段落の流れを汲んだ納得感のある提案が書けました。

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