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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   人間にとっての「物」   かおや

 バイオリンとは弾けば弾くほど、音が良くなるものである。長く弾けば弾くほど、自分の弾き方や力の入れ方に馴染んできて、購入した時よりもはるかに良い音が出るになる。こうなると、自分のバイオリンに愛着が湧いてきて、他のバイオリンではいまいちしっくりこないと感じるようになる。私にとって、バイオリンとは、単なるモノではなく、相棒のようなものである。現代の社会では、物とはただ役割を果たすだけのモノであって、物の価値は金銭的価値によってのみ測られる。金銭的な価値観に縛られている、現代においては、値段のつかない物は不必要な物としてすぐに処分の対象とされ、必然的に物を大切にしようという心は失われがちになる。現代では、このことにより、人々の心が貧しくなっているところに問題がある。
 この問題の第一の原因は、現代の社会が大量消費型の社会に移行したことにある。産業革命以前の世界は慢性的に物不足状態にあった。その時代に生きる人々にとっては、物は生きるために必要不可欠であって、一つ一つがとても大切にされていた。しかし、大量生産ラインが確保された現代においては、あらゆるものは欲しい時にいつでも手に入るようになり、人々の物に対する意識は、生きる上で、必要不可欠な物から、ただ消費されるだけ、というものに変わっていた。こうして物を大切にする等という考えは前時代的な、古いものとみなされ、人々はものを大切にするという心を失ってしまった。
 第二の原因は、世界に西洋的な価値感が広がったことだ。西洋的価値感の中核をなすものはキリスト教であり、キリスト教において、自然は制服されるべきものとして考えられている。このような西洋的価値感のもとでは、物は人間に使われるだけのものであって、ただ人間に与えられた役割を果たしていれば良いと考えられている。これに対し日本には、八百万の神信仰というものがあり、世界のありとあらゆる場所、物に神は宿っていると考えられていた。この信仰のもとでは、物には神が宿っているのだから、決して物を粗末にしてはならない、と教えられた。しかし、明治維新後の西洋文化の流入によって、日本の八百万の神信仰は次第に廃れていき、現代の日本における物に対する考え方は、西洋的価値感のそれと、ほぼ同じものになってしまった。
 確かに、現代において、物神崇拝は古い考え方なのかもしれない。しかし、物で溢れかえっている大量消費社会においても、物は私たちの生活に必要不可欠なものにであり、一つ一つが大切な意味を持ったものである。私たちの思い出は、いつまでも心に留まっていてくれる訳ではない。人間は忘れてしまう生物であり、忘れることで、前に進んでいるとも言える。だから、私たちの心の中では、いずれ消えてしまうあやふやなものでしかない思い出を、物に託すのである。それは、写真や日記など、分かりやすい形をしているかもしれないし、アクセサリーや小物など、持ち主本人にしかわからない物かもしれない。私たちにとって物とは、ただそこにあるだけのモノではなく、私たちが取りこぼしてしまった思い出を保管しておいてくれる箱である。物そのものではなく、物に保管されている思い出を大切にするのだ、と考えて物に接すれば、物を大切にしようという考えが自然と湧いてくるのではないだろうか。思い出が、私たちの心を豊かにしてくれるものであるように、物も私たちの心を豊かにしてくれるものである。

   講評   nane

 バイオリンからの書き出しがやわらかくていいね。
△「果たすだけのモノであって、物の価値は金銭的価値によってのみ」は、表現をもう一工夫。
 大量消費社会と西洋の価値観はわかりやすい。
▲価値観。
 最後の段落の感想はよく考えた。微妙な話だから長く書くのは大変だったでしょう。
 物を大切にしない文化の価値も、一度よく考えておくといいよ。例えば、使い捨て○○という商品。大量消費の原理に基づいてはいるけど、やはりそこには便利さがある。
 道徳的なところで論じると小論文からはずれる可能性もあるので、経済的な役割というあたりからも考えてみよう。
 今日は、構成図をもとによく書いたね。

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