国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   人と世間   ニンジンスキー

 欧米人は日本人を権威主義的だとみることが多いが、それは日本人が常に世間の目を気にしながら生きており、彼らからみると個性的ではないようにみえるためである。日本人はできるだけ目立たないように生きることが大切であると考え、自分の能力も必要以上に示さないようにする。日本人が何よりも怖いと思っているのは「世間」から爪弾きされることだからである。その怖いと思っている態度が欧米人には理解しかねるのだ。私は世間にとらわれないほうが良いと思う。
 その理由は第一に、本当の自分としての価値が見出せないと思うからだ。私はよく、国語の授業の時に、ふがいない気持ちになることがある。なぜなら、意見を言いたいときに、なんだか挙手しづらい雰囲気で、言えないからだ。別に「自己主張しているような気がする」などと深く考えているわけではない。みんなが顔をきょろきょろさせて、色々な人と目を合わせ、やっと手を上げるのだ。しかし先生はたいていせっかちで、目を合わせる間に中断させてしまう。結局自分の出した答えは正しいのか、違うのかよく分からない。それで仕舞いには先生が私と同じ答えを出すのだ。また、目を合わせている間に、冒険家が手を挙げることがある。それも結局、自分と同じ答えだったりして、今までの沈黙と、目での会話はなんだったのだろうかとがっかりしたりする。やはり一番いやな結末は、正しいのかどうか分からずに終わってしまうことである。自分の価値がうまくアウトプットできない。もやもやした気持ちがずっと続く。これこそ最大の苦しみであり、一種拷問のようでもある。
 その理由は第二に、自分自身のことすら分からなくなるからだ。私は心の奥底に、「みんなをリードしていきたい!」という願望がある。しかし、それをうまく出せず、結局みんなについていく側になっている。やる気は十分にあるのに、上手く出しきれない自分がいて、結局アウトプットできないまま終了、という形になっている。なぜそうなのだろうか。私が思うに「世間」を考えに考え、考えすぎてアウトプットする機会がなくなっているのだと思う。「失敗したらどうしよう」「上手くいかなかったらどうしよう」という心配が駆け巡る。しかも心配しているのはその先、「世間にどのような眼で見られるのだろう」ということなのである。私は思わず「私も!」と言い出したくなる会話を小耳に挟んだことがある。それは部活のときであった。高2の先輩2人が話をしていた。M先輩の隣の席の先輩が授業中うるさいらしく、H先輩が「注意したらいいじゃん」と言ったところ、M先輩が
「それが、私のキャラに合わないんだよね…」
との一言。確かにM先輩はクールなイメージが強い。先輩も世間を気にしているのか…、と思うと、私は少しだけほっとした(笑)。(いくらほっとしたといっても、本当の自分を出すという必要性があるのは先輩も私も同じなのだが。)パイロットの年賀状調査にこんな結果がある。「もらってうれしい年賀状」の1位は「オリジナルデザイン」なのに、「自分が出す年賀状」の1位は「パソコン利用」なのである。パソコンはある程度オリジナルデザインとなるが、根底は変わらない。実は自分が一番ほしいと思っているものを自分で相手に贈っていないのである。これはうまくアウトプットできない意思と同類のような気がする。
 確かに世間を気にするのも大切である。政治家は何でもかんでもマニュフェストに従い、臨機応変さや世間の求めていることを後回しにしてはいけない。しかし、「脱皮できない蛇は滅びる」という名言のように、世間ばかり気にして脱皮もできないのならば元も子もない。私たちは脱皮こそしないが、心は蛇などのように脱皮が大切なのである。

   講評   hira

 世間が気になる、人にどう見られているか気になる、これはある意味健全な姿だと思います。そこをくぐり抜けて、世間にとらわれない自分を作っていくことが大切なのでしょうね。自分のもどかしい状況がユーモアを交えながら丁寧に書き込まれている。
■第一段落 ● 是非の主題
 ポイントを押さえた要約にすっきりと主題が収まっている。
■第二段落 ● 複数の理由 ◎ 体験実例
 自分の価値が見いだせないもどかしさが、具体例で説明できた。私もそうだけれど、ついつい中学の頃の「目配せ」感を忘れてしまうのだよなあ。特に一斉授業だとそうなのだろうね。「自分の価値がうまくアウトプットできない。もやもやした気持ちがずっと続く。これこそ最大の苦しみであり、一種拷問のようでもある」書き出しの理由と呼応して、重く意味を感じさせる一文でまとめられた。
■第三段落 ● 複数の理由二 ● データ実例・長文実例 ◎ ユーモア表現
 そうか、高校の先輩もいるのだね。言葉の森の高2の先輩もよく後輩に似たような相談を受けると話してくれました。「大変なのは中2まで、でもどう転んでも何かは言われるのなら自分らしく過ごしていれば、いずれそういう仲間と出会える」とアドバイスするそうです。ちなみに彼女も生徒会などでよりよい学校生活をみんなが送れるよう校則を変える音頭をとったり「リード」する人です。偶然にもぴったりの話だったので本人の了解を得てここに記しました。
 データ実例は、よく自分の言いたいことに引き込んで使いこなせているね。
■第四段落 ● 反対意見への理解 ● 名言の引用 ● 是非の主題
 言葉巧みに言いたいことが表せた。途中がとても詳細に書けているので、清書にするならば、ここに厚みを持たせるといい。

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