低学年から学力の基礎を作る
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)
小学1・2年生
小学3・4年生
小学5・6年生
中学1・2・3年生
高校1・2・3年生
「個人」の捕らえ方 いちごみるく
「坊っちゃん」はイギリスでヨーロッパにおける個人の位置を見てしまった漱石が、わが国における個人の問題を学校という世間の中で描き出そうとした作品である。 明治以降社会という言葉が通用するようになってから、私達は本来欧米でつくられたこの言葉を使ってわが国の現象を説明するようになり、そのためにその概念が本来もっていた意味とわが国の実状との間の乖離が無視される傾向が出てきたのである。欧米の意味での個人が生まれていないのに社会という言葉が通用するようになってから、少なくとも文章のうえではあたかも欧米流の社会があるかのような幻想が生まれたのである。わが国には人権という言葉はあるが、その実は言葉だけであって、個々人の真の意味の人権が守られているとは到底いえない状況である。こうした状況も世間という枠の中で許容されてきたのである。日本人に個人主義が欠けており、世間に流されやすい面があるところに問題がある。
第一に、日本の農耕民族の歴史が、日本人の国民性を作ったということが考えられる。私のクラスでも、みんなが望むペースで皆の先頭に立ったり、行動する人は人気があり、友達も多い。一方、一人だけ自分のペースでやろうとする人は嫌がられる傾向がある。私の学年にもそんな子がいる。木と一人で会話していたり、定期考査のときも先生から時計を各自持ってくるように言われたときも「懐中時計でも大丈夫ですか?」なんて質問してしまう。要するに感性が独特なんだと思うが、日本ではこんなタイプの子は敬遠される。しかし、海外では「植物ドクター」なるものがあり、平気で話しかけて弱っている木を元気にしたりする。そして周囲もその人を受け入れている。こんなところにも日本の国民性が見てとれる。
第二の原因としては、日本の社会が島国であるために、異質の文化を持った人との接触が少ないということが考えられる。自分の意見はみんなの常識。みんなも同じように考え、感じるのが当たり前だと考える。自分と違った意見は許せないし、不安になる。だから取り除こうとするのではないか。ダーウィンが進化論の着想を得たガラパゴス諸島は、小さな島々が急な潮の流れにより他の島々から隔離された状態であったために、島ごとに特殊な進化を遂げた生物が生息していた。これも、外敵からおそわれる心配がなかったから遂げた進化だ。日本の同じように異文化の中にさらされることがなかったために、特殊な考え方をする進化を遂げたのではないだろうか。
確かに、日本人の世間志向が安定した社会を築いてきた面はある。個人という意識が薄いために生じる地域みんなが家族、お互いにお互いの家族のことを詳しく知っていることは、犯罪が少なくなった原因でもあり、世界一安全な国といわれた由来でもある。しかし、これからの国際化社会では、日本人も自分の意見をしっかり持った個人主義的な発想をしていく必要がある。個人の意見を主張することは、社会に背をそむけることではなく、社会的に生きる方法なのである。
講評 hira
グローバル化についての意見を各国で調査したところ、 アメリカ、イギリス、フランスの欧米諸国が「より世の中が良くなるチャンス」との意見が多い中、日本は「治安が悪くなる」などのネガティブな意見が主流だったそうです。広く世の中を見渡し世界で生きる社会性を身につけるためにも個人主義の問題は避けて通れませんね。
■第一段落 ● 社会問題の主題
「日本人に個人主義が欠けており、世間に流されやすい面があるところに問題がある。」と主題が述べられた。
■第二段落 ● 複数の原因一 ◎ 体験実例
「懐中時計」「木と話す」など、確かに一風変わっていると敬遠されがちかも知れません。身近な実例で分かりやすく説明できている。ある帰国子女ばかりの学校ではほとんどいじめらしいことがないのだと聞きました。一つの理由として、皆海外を体験し、人と自分は違って当たり前という感覚があるからとのこと。もっと相互理解の発想が日本人には必要なのでしょう。
■第三段落 ● 複数の原因二 ● 自然科学実例・長文実例 ◎ ユーモア表現 ● ことわざの加工
自然科学実例に合わせて日本の特殊性を説明したのは上手い。
■第四段落 ● 反対意見への理解 ● 自作名言 ● 社会問題の主題 ● 書き出しの結び
自作名言を効果的に使いながら、個人主義の必要性について述べることが出来た。
毎月の学年別「森リン大賞」作品集森リンの丘
自動採点ソフト「森リン」で上位になった作文を掲載しています。
しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。
|
お電話によるお問合せは、0120-22-3987(平日9:00-19:30)
| |