国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく
国語読解力は、あらゆる学力の基礎。問題集読書の復読と、読解検定の自主解説で確実に力がつく。

昨日877 今日927 合計12678
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

小学1・2年生   小学3・4年生   小学5・6年生   中学1・2・3年生   高校1・2・3年生

   人とモノの感覚   紫式部

 近年の子供たちは、さまざまなことへの関心や執着心が薄れている。そのことにより授業の不成立や陰湿ないじめ、気配りの無さなどが子供たちの中で頻発している。他者への無関心から生まれた大人全般への不信感情は、人とのかかわり方、つまり他人との「出会い」や「対話」というものから子供たちを急速に遠ざけている。また人との関わりだけでなく「金槌や鋸などの道具」や「道具としての活字」ともかかわりが薄くなっている。その結果、一人称の語りが消失している世界を私たちは生きている。私たちは「商品としてのもの」ではなく、「生きる実感とつながるものモノ」と関わりあいをもつべきだ。
そのためにはどうすべきか。まず、自然と繋がる「モノ」との出会いのルーツを古代に遡ってみる。 かつて人は石や木、土などの自然の中の身近な材料を巧みに工夫して包丁、土器、鍬や弓矢などの道具をつくり、道具の優れた使い手となった。それが自然と人とを結ぶ必須の架け橋のようなものだったから、「モノ」と人との距離はとても近かっただろう。しかし周りを見てほしい。今、仕組みを分かって使っている道具が果たしてどれくらいあるのだろうか。無くては困る携帯の仕組みなど私にわかるはずもなく、もし壊れてしまったら即ただの固形物になる。古代に習えではないが、私たちがもっと手作りという感覚を大切にしていくことだ。中学生まではお昼ご飯は給食で給食のおばさんがせっせこ作るが、高校になると各家庭の親にバトンが渡される。学校で友達と集まって食べるとそれぞれの中身が十人十色だと気がつく。ある人は冷凍食品オンリー、ある人は野菜ばかりとか、ふりかけか梅かの違いなど本当にいろいろだ。私のお弁当はというと、父が弓矢で仕留めた鹿肉のソテーに、家の前の畑で取れた無農薬野菜のテンプラ、デザートには秋に山で採った山ぶどうをふんだんに使ったパイ。完璧な手作り。なんてことは、ない、ない。実際は母が作るフツーのお弁当だ。冷凍食品もたまには入るがいろんな食材を工夫した手作り弁当だ。美味しかった日は母との会話も弾む。手作りのあたたかい気持ちは人との距離も近くなる。
一方もうひとつの方法は学校教育で道具とかかわる機会を設けることだ。私の通っていた保育園や小学校は積極的に道具を私たちに使わせた。たとえばそのおかげで学校に道具を使えない子供はいなかった。世界的に有名な映像クリエーター岩井俊雄は幼いころ母親に「今日からおもちゃは買いません」と言われ、その代わりに工作道具を手渡された。以来、自分の遊ぶおもちゃは自分の手で作った。その経験が今の彼の原点となっているそうだ。やはり小さいころから道具に触れさせることは大切だ。
 確かに便利さを追求した商品としての「もの」は情報化の時代には欠かせない便利なものかもしれない。もちはもちやばかりにものづくりを任せてはおけない。自分でこねて、丸めて、だんごにして、そしてみんなと食べれば自分もみんなもたのしいはず。わたしは「モノ」と実感を持って関わっていくために、
自分でお菓子を作ったり、誕生日のカードを手作りするなど、小さなことからでも手作りを始めてみたい。

   講評   kira

 紫式部さん、こんにちは。物と人との乖離は、科学技術の進歩とともにやってきました。道具は本来、人間らしさを保証するものでした。二足歩行し考える力を持つようになった人間の象徴として道具はあったのです。ところが、その便利さだけが進化するとそれらの物はかえって人間としての力を喪失させるものになってきたのは皮肉なことですね。
 ものと人のルーツをたどって「自然と人とを結ぶ必須の架け橋のようなもの」を考えていった展開は、さすがです。読み取りが深いですね。しかもそれをお弁当という「食」に持っていったのも鋭い。人間関係の希薄化は食の問題とも深く関わっているようです。何を毎日食べるのか。どのようにして口に入るものなのか。
 そして、教育現場でも、ものとの関わりを取りもどす体験型の授業を増やすべきでしょう。道具が使えない子供たちは、道具に使われる世代になってしまった危険性がありますね。マニュアルは理解できても、新しい発想はできない。
 時代はますます情報化を加速させ、何もしなければ人はいっそう孤立していくでしょう。紫式部さんの指摘するように、モノを架け橋として取り戻す様な試みが必要ですね。

  

毎月の学年別「森リン大賞」作品集森リンの丘 
 自動採点ソフト「森リン」で上位になった作文を掲載しています。
 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

作文教室受講案内   無料体験学習   作文講師資格 
Online作文教室 言葉の森  「特定商取引に関する法律」に基づく表示」  「プライバシーポリシー」 
お電話によるお問合せは、0120-22-3987(平日9:00-19:30)