創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   「誰が見たんだ?」   ayou

 日本史の授業。先生の説明では、聖徳太子は厩で誕生したという。「誰が見たんだ?」と思う。そんなことをいえば元も子もないが、疑問に思わざるを得ない。しかしそんなことを聞いても授業を停滞させるだけだ。もやもやしたまま、「聖徳太子」という四字熟語(?)を頭に詰め込む。疑問は解決しない。 解決しない疑問を、上のようにもやもやしたままうやむやにしてしまう。こうして、段々と疑問を持てなくなることが問題だと思う。
 その原因としては、疑問を解決することに要する時間を無駄だと捉える考えが背景にあることだ。
 最近は特に効率を重視するようになってきているから、時間の掛かることはしたくないのである。もし「おかしいな」と思うことがあっても、それを深く考えるよりも、今自分の出来ることをたくさんした方がよいということだろう。
 自分も体験したが、学習塾の講義で、公式を丸覚えさせる所がある。これも、入試に受かるために、説明よりも公式を使える容ようになることが優先されている。
 つまり、疑問を持って解決にあたろうとするのは、『早く、たくさん、同じ物』を求める効率化の社会に逆行している。だから皆、疑問を持つのも、人に聞くのも億劫になっているのだ。
 人に聞くのが億劫な社会は、人に聞かずともすぐに知識が手にはいる。これは、疑問を持たなくなる一種の原因だと思う。
 すぐに知識が手にはいるなら、すぐに疑問が解決して、効率がよいのではないかと思うが、実はそうではない。人間は、便利な物であればあるほど、それに頼り切ってしまう。疑問を持っても、便利な機能のために疑問が解決したと思いこんでしまうのだ。
 具体的にいえば、前述の聖徳太子の件でも、ネットで調べれば、どうして厩で生まれたかなどはすぐに分かってしまう。例えば『日本書紀』に書かれていたとかだ。(デタラメです・・・)これで果たして疑問は解決したと言えるだろうか。直接はそういえるかもしれないが、新たな疑問が残る。「それが真実だという証拠はあるのか」。今も昔もお役所の得意な資料改ざんが行われているかもしれない(苦笑)。ところが、便利な物に頼ったせいで、この新たな疑問を無視しているように思う。鵜呑みにしてしまっているのである。鵜呑みにするから新たな疑問は湧かない。そして疑問を持たなくなってしまうのである。 確かに、情報を知識として蓄えることも必要だ。いちいち疑っていれば、いつまで経っても自分の頭はいっぱいにならない。知識のない、薄っぺらい人間になってしまう。
 しかし、知識とは、自分が手に入れた情報ではなく、疑問を解決することで導き出した自分なりの答えである。          大切なのは、「自分なり」の答えという部分である。『同じ物』を求められる社会では、「自分なり」は見つけにくくなっている。
 そこで、「自分なり」を発見するために必要なのが自分個人の疑問であり、それを解決したときの自分個人の答えなのである。

   講評   nara

 あよう君にしては短めの作文だけれども、中身は充実しているね。現代社会がさまざまな場面で効率化を第一としてきたことは、半世紀を経て人としての在り方にも影響を与えたということが、今回の作文からよくわかる。行き過ぎた効率化は危うさもある。そういえば「急がば回れ」ということわざを使った長文が小4の課題にある。回ることをばかにしていた私たちは、最短距離を行こうとして途中船が転覆しても泳げずにいるようなものかもしれないね。
 すぐに疑問が解決できる手段や技術を手にしたことが、疑問を持たなくなった原因だというのは、一見矛盾しているようで、実は深い考察になっている。疑問というものは批判精神と結びついているけれど、即答されたものを即受け容れてしまう状態では、批判精神も働かないものね。
 いつもながら自作名言は秀逸。「自分なり」というキメの言葉が浮かんだことで、「しかし、知識とは……」がびしっと決まった。「誰が見たんだ?」時代はさかのぼれないし、現地にひとっとびというわけにはいかない。だけれども、「確かに自分が見た(イコール、そう判断した)」と言えることが大切なのだね。

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