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　　　キス　　　のんちゃん

　　

　ヨーロッパで親しい友人の間でのご挨拶はキスが一般的です。でも、場所によってキスの回数が違うというのをご存知ですか？ロンドンでは頬に１回です。ドーバー海峡を渡ってパリでは両方の頬に１回ずつ、つまり２回です。スイスのジュネーブでは３回。チュッ　チュッ　チュッ。私は飽きずによくやるよなあと思います。いえいえ、ジュネーブに負けていられませんね。フランスのノルマンディー地方では４回です。チュッ　チュッ　チュッ　チュッ。レディーにキスは男の礼儀です。しかし、日本の男性は、このキスがなかなか出来ません。キスが出来てこそ、現地化できていると言えるのですが。友人のM君は、努力してこのキスが自然にできるようになりました。しかしある時、M君はノルマンディー地方のパーティーで、十数人の女性に囲まれて、キスを終えるのに４０分を費やしました。
「キスは嫌いじゃないけれど、疲れたよ。」
と、弱々しく溜息をつくM君。まるで青菜に塩のようなていたらくのM君です。
　ジュネーブで結婚した日本人のJは、友人達から祝福のキスの嵐。しかし、日本から駆けつけた両親のキスは、両者に戸惑いがあります。キスは日本の習慣ではありませんから。
「父にキスされるなんて、考えもしなかったわ。」
と嘆くJでした。
私は、ある時、ジュネーブの街角で年配の日本人の男性と出会い、深々とお辞儀をしました。それを見ていたスイス人の友人は、
「何で、日本人はおでことおでこをくっつけあうんだ。何かおでこに意味があるのか？それとも何かのおまじないか？」
と、目をくりくりさせて不思議そうに言います。
「郷に入りては郷に従え」という諺がありますね。でも、この諺をまもるのは、挨拶ひとつとっても、なかなかに難しいものですよ。日本人男性も、ヨーロッパに行ったら奥様に街角でも、自然にキスができるようになると洒落ていると思いますが、この意見には反発もありそうですね。きっと、世界各国には色々な挨拶の仕方があるのでしょうね。

　　　講評　　　tama