創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   言葉と経験   ハーマイオニー

 私たちは、「手を上げよう」と思えば手が上げられる。まず、実際に手を上げた経験があって、それと「手を上げる」という言葉とが結びつき、「手を上げよう」と思うと、以前に手を上げたときの脳機能が無意識のうちに働いて、ひとりでに手が上がるのだ。 このように経験と言葉が結びついて行動が起こる。スポーツで「腰を入れる」などという言葉も、その経験がないと実行できない。逆に「失敗すると大変だ」という言葉を思い浮かべると、それが過去の失敗の経験と結びついて実現してしまうことがある。私たちは絶えず自己暗示によって行動していると言える。
 確かに、言葉が「成功」を後押ししてくれるような、そんな場面があると思う。
 この前、体育の授業で、バレーボールのサーブの実技テストがあり、また翌日には縄跳びの実技テストがあった。バレーボールはあまり得意ではない。体育の授業以外でやったことなどないのだ。サーブは、きれいに決まったりそうでなかったり、半々くらいだった。いざテストの順番が回ってきて、私は、5回全てのサーブを成功することができた。1回毎に気持が強くなっていったように思う。5回目は失敗する気がしなかった。
 縄跳びのテストでは、「先週は調子が良かったな」と、二重跳びが10回以上連続してできたことを思い出した。また、そう考えようと意識したわけではないが、昨日のこともあり「自分は本番に強い」という言葉が頭に浮かんだ。そして、やはり二重跳びのテストを1回で合格することができた。
 しかし逆に、言葉によってマイナスの方向へと意識が流され、本当に失敗してしまうこともある。
 昔話に『ふるやのもり』という話がある。老夫婦の住む家に、お互いに気付かないまま偶然同時に忍び込んだ狼と泥棒は、夫婦が「この世で一番恐ろしいものは、泥棒よりも狼よりも『ふるやのもり』だ」と話しているのを聞く。「ふるやのもり」とは実は古い家の雨漏りのことであるが、老夫婦の恐怖を聞き、泥棒と狼は恐ろしい怪物を思い描く。勘違いをしたままお互いに逃げ出すのであるが、これは、言葉によってミスリードされたとも言えるのではないか。未知の言葉について、それを説明する断片的な情報から自分の知っている恐ろしさの極地のようなイメージを作り出し、自己暗示をかけてしまったのだ。
 だが、良くも悪くも暗示だけでは、物事は動かない。私が、自分が本番に強いと考えたのは、過去の成功体験があるからだ。ピアノの発表会、バレエのオーディション……。不利と思える条件の中、自己ベストに近いパフォーマンスをしたことが一度ならずあった。経験と言葉が結び付いてこそ実際の行動が起こるのだ。
 ドラマ『ブザービート』の初回、気が弱いくせに夢ばかり大きい主人公の直輝は、スリーポイントシュートのとき、「俺は強い。俺は強い。」と頭の中で唱えてボールを放つが、見事に外れる。完全に言葉が空回りしているのが見え見えだ。つまり、自分は強いと思い込もうとしているが、強かった自分など全くイメージできていないのだ。自分の例を良い方にばかり使って恥ずかしいが(笑)、要するに言葉と経験が結び付くとは上述したようなことだと思う。
 確かに、言葉にはプラスにもマイナスにも働く大きな力がある。しかし、その力は、言葉そのものにあるのではなく、経験と結び付いた言葉にあるのである。だから成功の経験を蓄積することが必要だ。なぜなら成功体験を重ねれば、それだけ次の成功を呼ぶ力もまた蓄えることになるからだ。「行動するためには、多くのことに無知でなければならない」という名言は、おそらく、失敗した経験を想起してしまう危険を避けるための言葉ではないか。私たちは、実際に成功した体験と「成功する」という言葉とを結び付け、その力を生かしていくべきだろう。(総合化)

   講評   nara

 この作文を読んで、発表会の日に高熱を出してステージに上がったことを書いてくれたのを思い出したよ。あのときのことを、自分なりに言語化した(作文に書いた)ことが、数年経て今回の作文の題材になったわけだ。体験がしっかり熟成されているなぁ。
【構成・題材】第一意見:バレーのサーブは、今まで少なかった成功体験が本番で4回連続成功したことによって、経験と結びついたのだね。おそらく、意識の中では「できる」という言葉が認識されていたに違いない。その言葉が浮かんだときに、成功したときの体の動きが自然と反復されたのだろうな。縄跳びも同様。自転車に乗れないという言葉は、既に運転している人の意識には浮かばない。だから自転車に乗れるわけだ。「転びそう」と思った瞬間に転ぶのは、現象は反対でも意味は同じだね。
 第二意見:今回は昔話もぱっと思いついたのではないかな。落語にもこういう勘違いネタは結構ありそうだ。自己暗示と説明してあるけれど、良いことも悪いことも暗示という言葉によってもたらされるということだな。
【表現・主題】山Pね。番宣しか見ていなかったけれど(笑)。この題材を用いたことで、単に言葉だけの問題でなく、経験との結びつきが重要であるという主題がより明らかになった。確かに、山Pがシュートを決めてしまったら、人も空を飛べることになるものなぁ。今回名言の解釈がうまい。この説明によって、締めくくりも力のあるものになった。

★そういえば、この前出たハーフマラソン、「今日は調子悪い、体が重い。」と思った瞬間、足の運びが悪くなったよ。実際に練習不足だったのはあるけれど、それを言葉として想起したことで、体も反応したわけね。成功体験の蓄積はムズカシイ。

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