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　　　よりよく見せる　　　ショウ

　一流ホテルで、誰かが傍若無人な振る舞いに及ぶと、ボーイがやってきて、「周囲のお客様が迷惑をいたしますから」とそれとなく注意するのを見かけるが、あれはそうすることによって「周囲の客」がああいうことをしてはいけないんだな、と学ぶことを期待しているのである。また、一流ホテルでは客がボーイに近づいて質問するのではなく、ボーイを呼んで質問する。それも学ばせるのだ。これが成功すると、ボーイに客の見本として雇われる。
　確かに、個性を出すことはとても大切なことだ。個性がなければ、何をするにも皆同じものになってしまう。僕が前にいた学校は、生徒数がとても少なかったため、発表の機会がとても多かった。中でも、プレゼンテーションを作って発表をすることがとても多かった。プレゼンテーションは、調べた情報を表示するだけでは同じような作品になってしまう。それをいかにわかりやすく、工夫して伝えるかが「個性」だ、と先生に言われた。時には派手にプレゼンテーションを作ることで、その発表は観客の印象に残るものになるだろう。ぼくは、最初のうちは何をしたらうまくいくのかわからなかったが、経験を重ねることで徐々に良いプレゼンテーションを作ることができるようになっていった。個性はとても大事なのだな、と感じた。
　しかし、その場に応じた振る舞いをすることも大切だ。昔話に「こぶとりじいさん」がある。あるところに、頬に大きなこぶのある二人のおじいさんがいた。二人とも大きなこぶには困っていたが、片方は無欲で、もう片方は欲張りであった。ある日の晩、無欲なおじいさんが鬼の宴会に出くわし、踊りを披露すると鬼は喜んで酒とご馳走をすすめた。鬼は翌晩も来て踊るように命じ、明日来れば返してやると翁の大きな瘤を「すぽん」と傷も残さず取ってしまった。それを聞いた欲張りなおじいさんが、それなら自分の瘤も取ってもらおうとその場所に出かけると、同じように鬼が宴会している。そのおじいさんも踊りを披露するが鬼が怖くて及び腰、どうにも鬼は気に入らない。とうとう鬼は怒って欲張りなおじいさんから取り上げた瘤を欲張りなおじいさんのあいた頬に押し付けくっつけると去ってしまった。それから無欲な翁は邪魔な瘤がなくなって清々したが、欲張りなおじいさんは重い瘤を二つもぶら下げてしまった、という話である。これは、無欲なおじいさんは、鬼の宴会に合った踊りや歌を披露し、よくばりなおじいさんはその場に合った踊りを披露できなかったためこのような結果になったのだと思う。
　確かに、個性も、その場に応じた振る舞いをすることもどちらも大切だ。しかし、それは自分がよりよく見えるように、という気持ちがあるからこそできるのだ。もっとも大事なことは「自分の心のうちに持っていないものは何一つ自分の財産ではない」という名言があるように、よりよく見せようと思う心だと思う。

　　　講評　　　kei

　「よりよく見せる」と思う心はどんな心でしょう。「よりよく見せる」ためにはどんなことを心がけたらうまくいくでしょう。
とても奥の深いテーマですね。「よりよく見せる」と思ったとき、そこに「自分だけがよければいい」とか「自分さえよければいい」という心だけだったら、本当によい結果につながりませんね。そこに「相手を想う」心があったら、本当の自分のよさを見せたり発揮することができますね。
　最初は上手くいっているか自信はなかったけれど、経験を積むにつれてうまくなっていったプレゼンテーションでは、聞いてくれているクラスメイトや先生の反応はどんなふうに変化していきましたか。そのあたりに視点を置くと、もっともっとショウ君の述べたいことが的確に伝えられるようになります。

●の項目をしっかりと意識して書けました。
●要約もわかりやすくまとめました。
●きっと構成図をしっかり書いているでしょう。