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入試問題の作文を、枠組みから考えるから方法――都立桜修館中の課題を例に  2016年9月17日  No.2675
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 この図(やじろべえの図)は、最近の都立桜修館中の入試問題です。
 こういう作文課題は、書き方の方向が決められていないので、書きやすいとも書きにくいとも言えます。誰でも、何とか書こうと思えば書けるが、誰もがどう書いていいかわからないまま書き出すという課題なのです。


 図ではなく文章で書かれた課題も、多くは書く方向性を決めにくい多様な考え方のできるものです。
 作文の課題が、その他の知識的な課題に比べるとどれぐらい得点できるか予測できないのは、こういう捉えにくさがあるからです。

 ところが、言葉の森の作文指導は、こういう課題に対しても、そのほかの文章の課題に対しても、同じように対策を立てられます。その方法が言葉の森独自の構成作文という書き方です。
 与えられたテーマについて、それをどういう方向で書くかということについて、構成、題材、表現、主題を先に考え、それから書き出すようにするのです。

 この図の場合は、ヤジロベエですから、ヤジロベエが表している抽象的な主題をまず考えます。
 与えられた課題に、あらかじめはっきりした意見が求められている場合は、その意見が主題になります。しかし、与えられた課題が象徴的なものである場合、意見はどのようにも考えられます。そこで、その象徴的なテーマを人間の生き方や社会のあり方に結びつけてみるのです。
 場合によっては、範囲をもっと狭めて、文章の書き方や、勉強の仕方などに結びつけることもできます。つまり、方向性のわからない課題を、自分なりの方向性を持った主題に転換していくというのが最初の作業になります。
 このヤジロベエの場合は、バランスという抽象的なテーマが考えられますから、主題を「バランスのとれた生き方」などと考えてもいいでしょう。

 主題が決まったら、次は構成を考えます。
 言葉の森の作文構成法にはいくつかの種類があります。どの構成が正解かということはありませんから、書きやすい構成で書けばいいのですが、大事なことはまず全体の構成を考えるということです。
 構成は、自分の実力に応じて書きやすいものを選びます。この場合は、例えば、複数の意見+総合化というかたちで考えてみます。
 第一の段落は、この図が表していることを自分なりにどうとらえたか説明し自分なりの意見を書きます。
 第二の段落は、バランスのとれた生き方のよい面を考えるとします。
 第三の段落は、バランスのとれた生き方の今度はマイナス面を考えてみます。
 第四の段落は、二つの意見を総合化して、折衷案にはならない形でより高い次元でまとめるようにします。この場合だったら、大事なことは、バランスがとれているかどうかという外見的なことではなく、何を目標としているかということで、その目標との関連でバランスが大事なこともバランスを崩すことが大事なこともあるというような考え方です。
 例えば、バランスとは一般によいものと考えられていますが、走り出すときはバランスを崩さなければなりません。バランスを崩すことは行動力があるということにもつながるのです。

 主題と構成の枠組みが決まれば、次は、その中に盛り込む題材を考えます。題材とは、作文の中身を作る材料です。
 材料には、鮮度のよいものが必要です。鮮度とは、個性、挑戦、共感、感動などのある体験談です。
 鮮度の悪い材料とは、ただ人から聞いただけの話、自分が積極的に行動しているわけではない話、誰でもよくある平凡な話、後ろむきの話などです。
 後ろ向きの話とは、例えば、読書がテーマになっている課題なのに、体験談として自分があまり本を読んでいないのでよく母に本を読めと言われるなどという体験を書くことです。
 もちろん材料にはウソを書いていいのではありません。それは作文の練習というよりも人間として当然のことだからです。

 この材料集めは、その場ですぐに思いつくことはなかなかできません。そこで普段からの練習が必要になります。
 作文の練習をするときに、事前に親子で対話をするのが役立つのはそのためです。人生経験の長い親の話を聞くことによって、子供は自分の中にも似た経験を見つけ出しやすくなるのです。

 材料の中には、体験実例以外に社会実例もあります。社会実例は、データの裏付けがあればかなり強力な材料になります。しかし、小学生ではそこまでの材料を求めることは無理があるので、体験実例がしっかり書ければそれで十分です。

 主題も、構成も、題材も決まれば、次は表現です。
 小学校低中学年のうちの生活作文では、表現の要は「たとえ」です。的確な比喩があると、その作文は光ります。しかし、高学年以上の意見文や説明文では、たとえよりも、主題に関連した光る表現が必要になります。
 この光る表現も、その場で考えつくことはなかなかできません。普段の練習の中で、いろいろなテーマについて、自分が思いついた光る表現をためておくのです。
 入試の本番では、自分のそのストックの中から使えそうな表現をあてはめてくるようにします。光る表現がひとつでも入れば十分です。二つ以上入ればほぼ完全に合格です。

 以上の主題、構成、題材、表現を、作文課題が出された最初の5分から10分で考えて、作文用紙の余白にメモし、そのメモをもとに一気に書き上げます。
 最初に全体像を考えているので、途中でどう書くか迷うようなことはありません。また、途中で消しゴムを使って書き直すようなこともありません。消しゴムはもし使うとしても、うっかり書き間違えた文字を消すだけです。

 時間配分は、全体の時間の半分ぐらいで作文の4分の3ぐらいまで書き進め、最後の4分の1はある程度じっくり考えて書きます。
 何をじっくり考えるかというと、書き出しと結びの対応を考えるのです。作文の中身が個性的に広がっているのを、書き出しと結びの対応でひとつの輪のようにまとめていきます。

 こういう工程が身につけば、作文試験という予測のつかないものでも、自分の実力を常に一定の力で出すことができるようになるのです。


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 コメント欄

森川林 20160917 1 
 作文を感覚的に教えられると、褒められても注意されても、子供は何をどうしたらいいか理解できずに途方に暮れます。
 理詰めに教えることで、子供たちは安心して書く練習ができるのです。
(「受験作文小論文の岸」というFacebookグループを公開しています。)


nane 20160917 1 
 通常の作文指導は、内容的なことから教えはじめると思います。すると、それは教える側の主観になるので、同じように考えられる子と、同じようには考えられない子が出てきます。
 言葉の森の作文指導は、構成的なことを説明するので、中身は子供たちが自由に考えることができます。
 そして、枠組みがあるから、かえって自由に考えやすくなるのです。
 ちょうど、五七五という枠組みがあるから俳句の中身を考えやすくなるようなものだと思います。


森川林 20160917 1 
 図解説明で書くと、


namura 20160919 10 
やみくもに書き出してしまうと、最後字数が足りなかったり、書き直したくなったり大変です。やはり最初にしっかり考えてから一気に書き出すのがいいですね。

よう 20161108 9 
初めに構成を考えて書くことの大切さ。受験コースの子たちにもしっかり伝えていかなければ。

sizuku 20161115 51 
桜修館の問題はとらえどころのないテーマが多いですね。
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