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自然読解力  2010年2月4日  No.763
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 人間には、自然治癒力というものがあります。仕組みは……自然に治るということです。(説明になっとらん)

 例えば、風邪を引きます。熱が出て、咳が出て、頭痛がして、体がだるくなり、仕方ないので安静にしていると、だんだん治ってきます。ここで無理に症状を抑えると、かえって長引く場合もあります。つまり、風邪の症状をしみじみと味わっている間に、体の中に自動修復機能が働いて治ってくるということです。これまで何回もあった氷河時代を乗り越えて何十万年も生きてきた人類には、それだけの自動調整機能が備わっているのです。


 同じことは、社会にもあてはまります。それが民主主義です。

 みんなが自由に意見を言い合えば、脱線する人も、足を引っ張る人も出てきます。しかし、いい意見だけにしぼって悪い意見を排除すると、かえって自動修復機能が働きません。変な意見が出るからこそ、自然にいい意見にまとまってくるのです。


 比嘉照夫さんの開発したEM(有用微生物群)の理論も似ています。いい微生物だけ集めるのではなく、悪い微生物も、よくも悪くもない微生物も一緒にまとめることで、より大きな効果を発揮するという仕組みです。


 話が脱線しましたが。

 さて、勉強も似ています。「読書百遍意自ずから通ず」という言葉があります。繰り返し読んでいると自ずからわかってくるというのです。

 これは、読書の方法論がなかった時代の読書法なのでしょうか。確かに現代は、付箋読書、傍線読書、速読、速聴、アニマシオンなどいろいろな方法論があり、それぞれ効果があります。しかし、その根底にあるのは、「読書百遍意自ずから通ず」の読書法なのです。


 繰り返し読んでいると自ずからわかるというのは、人間には自然読解力があるからです。

 その仕組みは、ここでまた、……自然にわかるということです、と書いてしまうと芸がないので、もう少し深く考えてみると、次のような流れがあるからだと思います。


 まず、読書で「わかる」「わからない」というとき、そのわかり方は相対的なものです。「わかる」80%で「わからない」20%ぐらいの本は、読んでいておもしろい本でしょう。「わかる」99%で「わからない」1%の本は、わかりすぎておもしろくない本です。

 例えば、おじいちゃんに何度も聞かされる同じような自慢話を考えてみるとわかります。細部まですっかりわかった話を聞かされると、一応話は聞いていてもおもしろくも何ともありません。

 しかし、ここに、笑いや映像が入ると、そのつど面白く聞くことができます。落語の世界もそうです。更に、お笑い番組、テレビ、ゲーム、漫画の世界も、このわかってはいても何度も繰り返し聞いたり見たりできます。漫画をいくら読んでも読解力はつかないというのは、それが多くの場合、見た目の変化はあっても本質的には同じわかった世界に属しているからです。


 問題は、「わかる」50%「わからない」50%ぐらいの本です。こういう本は、難しい本、わかりにくい本という意味でつまらない本と呼ばれます。しかし、こういう本を何とか1回読み終えると、わかる度合いが少しずつ広がっていきます。

 感覚的に言うと、1回目には「わかる」50%「わからない」50%だった本が、2回目に読むときには、「わかる」51%「わからない」49%ぐらいになり、3回目に読むときには、「わかる」55%「わからない」45%ぐらいになり、4回目に読むときには、「わかる」70%「わからない」30ぐらいと次第にわかり方の度合いを高めていきます。S字曲線のようにわかっていくと言ってもいいと思います。わかるとわからないの中間にあるグレーゾーンがわずかずつ明るい方向にシフトしていくのです。


 なぜこうういうことが起こるかというと、ある本を読んで新たにわかったことが1%増えたことによって、その本の理解度が増すだけでなく、その子がそれまでに読んだすべての本の理解度がその1%分上昇するからです。

 私自身の経験で言うと、小さいころ初めてひらがなが読めるようになったころのことだと思いますが、漫画を読んでいて、次のような場面に出合いました。主人公の少年が、オットセイか何かに「海の中にある○○をさがしてきてくれないか」と頼むのです。すると、オットセイは二つ返事で「あさめしまえだ」と言って海の中に飛び込みます。私はこれを読んだときに、なぜここに「あさめしまえ」が出てくるのかわかりませんでした。「朝飯前=簡単」という意味の言葉を知らなかったです。それは、ずっと私の中に疑問として残りました。

 そして、そのあと何日後か何年後かはわかりませんが、朝飯前の意味を理解する日があったのだと思います。すると、小さいころに読んだその漫画の情景の意味があらためてわかり直す形で理解できたのです。


 一つのことがわかると、それに関連した別のことがわかり、その別のことがわかると、更にそれに関連した別のことがわかり、その別のことがわかると、更にほかの別のことがわかる、というように、わかり方には、経済学の乗数効果に似た作用があります。


 読書力をつけるには、まず本を読むこと、読解力をつけるには、まず難しい文章を読むこと、というのは、このような背景があるからです。自然読解力は、読解の方法がなかった時代の未開の読解法ではありません。あらゆる読解技術の根本にある読解の方法なのです。

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