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　　　甘えっこと大人　　　しっぽ

　ヘルマン・ヘッセのように、子どものころに楽しかったことを、大人になってもう一度同じように体験しようと試みて、だめだったということはよくある。人は時間が経てば変わるものだ。いつまでも楽しいものが楽しいとは限らないし、苦しいことがいつまでも苦しいとは限らない。
　子どものころに親にかわいがられ、たくさん遊ぶことはよいことだ。小さいころは、両親からの愛情が重要である。私は末っ子なので、昔は、母を一人占めしないと気がすまなかった。母が兄のほうばかり気にかけているとすぐ怒ったし、母が知らない間に外出してるとすごく寂しがった。愛されていると実感しないと、子どもは自分の存在を疑問に思い、ひねくれた子どもになってしまう。また、たくさん遊ぶと、友達を気遣ったり、いろいろなことを知ることができる。私は社宅にすんでいたので、同じくらいの歳の子たちとよく遊んだ。家の中で人形遊びをしたり、外で鬼ごっこをしたり、ままごとをしたり……。たくさん遊ぶと、感性が豊かになると思う。
　ところが、いつまでも甘えっ子ではない。そのうち、自分のことは自分でやりたいという時期が来る。私も今そうなりつつある。時々、母が正しいことを言っていても、ついつい反抗したくなる。だれかの言いなりになりたくないと思うし、一人で何でもやってやりたいと思う。これは自立したいと思うからだろう。昔話の桃太郎も、いつまでもおじいさんとおばあさんの世話になっていたわけではなかった。そのうち、家を出て行き、鬼を退治しに行くのである。これは、私たちの自立と同じようなものだと思う。自分の家族を大切だと思うし、けれど、しっかりしと自分一人で生きていきたいと思う気持ちは、誰にでもあるのだろう。私のように反抗ばかりすることは決して自立とは言わないが（笑）、自立することもまた、人間にとっては大事なことだと思う。
　確かに、甘えることも、自立することもどちらも大切なことだが、それよりも大切なことは、それぞれの二つの時期をしっかり送ることである。甘えることが中途半端では、おかしな勘違いを起こしたり、自立したいという気持ちが起こらなかったりする。また、自立をしようと考えている時期は、自分の新たな旅立ちの時期なので、そのころに起きた出来事などを覚えておくと、それから
また新しい事を始めようとした時や、日常生活のなかでも参考になると思う。とにかく、この二つの時期を大切に送ることが、その人の人生を楽しくするための秘訣だと思う。

　　　講評　　　jun

　これはすばらしいの一言。◎がそろって字数をクリアーしたからということではなく、内容的にとてもいいものが書けています。たぶん、今、まさに自立をしつつある志帆ちゃんだからこそこれだけの文章が書けたのだと思います。
　「いつまでも楽しいものが楽しいとは限らないし、苦しいことがいつまでも苦しいとは限らない。」とはあたりまえのことを言っていながら、読む人をなるほどと思わせます。この導入部に続く複数の意見もそれぞれ体験実例や昔話の実例を交えて説得力のある意見となっていますよ。
　子供時代は、家族の愛情に守られ、自然と触れ合い、多くの友達と無邪気に遊ぶ幸せな時代。実は知らず知らずのうちにこの時代に学んでいることは多く、その人の生き方の基本になると言っても過言ではないかもしれません。また、桃太郎がいつまでも自立をせずにおじいさんとおばあさんのもとにいたのでは昔話になどならないように（笑）、人間には必ず自立のときが来ます。人間にとって無邪気な子供時代も自立のときもどちらもなくてはならないもの。どちらの時代にもうまく適応し、自分を成長させていくことが大切ですね。旅立ちの時期のことを覚えておくとその後の人生の参考になるとは志帆ちゃんらしい意見。志帆ちゃんも、今の時期を大切に過ごしてね。