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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   最後の一万円★   キティ

最後の一万円★
 私は生まれ変わったらお金になりたいと思う。理由は簡単。お金になれば、どこにでもただで行けるからだ。自分がお金なのだから。それにお金は苦労もしなくていいし、死んだり病気になることもない。お金になれば大事にされるし、破れてもていねいにセロテープを貼ってくれるだろう。一万円札になりたい。貧乏で何日もお風呂に入っていない人たちに触られることもないからだ。
 今、私は東京三菱銀行東京タワー支店にいる。ある女の人が私を手に入れ、すぐに封筒に入れて、郵便局へ向かった。
 次の朝、だれかの家へ現金書留めるとして届いた。お昼になると、学校から帰ってきた女の子が私の入っていた封筒をマジマジと見つめた。封筒の上には、『お金持ちより。』と書いてあった。
 女の子はすみれちゃん。すみれちゃんには中学一年生の聡くんと小学二年生の弟の金太郎という兄弟がいる。すみれちゃんのお母さんは金太郎くんが生まれてすぐ死んでしまった。すみれちゃんはしっかりした子だ。彼女のお父さんは何年も失業中で昼間っからお酒を飲んでだらだらしている。すみれちゃんの家族はとても貧乏で、その日を生きていくのにも大変なようだった。食べ物もほとんどない。すみれちゃんが一万円札を見るのは生まれて初めてだった。すみれちゃんは私をしみじみと見つめた。
 次の日私は額縁の中に入っていた。毎朝起きてすぐ、家族は私を拝む。ある日すみれちゃんが学校から帰ってくると、私がいないことに気づいた。するとお父さんが一升瓶を抱えて寝ていた。
「お父さん?も・・も・もしかしてその一升瓶、額縁に飾ってた一万円札から買ったの?」
「ああ。そうだ。とってもおいしいぞ!近所の酒屋で買ってきた。」
 すみれちゃんはそれを聞くと、すぐ家を飛び出して近所の酒屋に行った。すると酒屋のおばちゃんが言った。
「ああ。すみれちゃんいいところに来てくれたね。さっきお父さんがお酒を買いに来たんだけど、お釣りを忘れて行ったよ。ほら持っておいき。」
 すみれちゃんは泣きながらおつりを手に持った。私は酒屋のレジからすみれちゃんを見つめていた。一万円のプライドがパッと消えた。そして心の中で叫んだ。
「すみれちゃん!私、もう一万円でいばるのはやめたわ!これからはすみれちゃんのその小銭になって生きる。さぁ、すみれちゃん。少ない小銭だけど私で好きな物を買って。」
 それがなぜだかすみれちゃんの心に伝わった。
 なんと。すみれちゃんは私でキティちゃんのレターセットを買ったのだ。えらいな。私だったらおかしを買ったりするのに。すみれちゃんは、その便箋で亡くなったお母さんに手紙を書いた。だが、どんなに高い切手を貼っても、すみれちゃんのお母さんには届かない。私はそれを見て、またとてもかわいそうに思った。今度はあの世行きの切手になることにした。私はポストへ行って、自分を切手と取り替えた。また心の中で、
「さぁ、すみれちゃん。今度は切手になったわ。私をその封筒に貼ってちょうだい。」
とすみれちゃんに言った。すみれちゃんはすぐ私を封筒に貼った。私はどんどん軽くなって、天国へ向かった。
「さようなら。すみれちゃん。また来るからね。」
 すみれちゃんは泣きながら、
「ありがとう!さようなら!ありがとう!」
と何度も言った。すみれちゃんの手紙を読んでお母さんは泣きながら喜んでいた。
 それからすみれちゃんは、見違えるように元気になった。お母さんに手紙を読んでもらえたという喜びからだ。飲んだくれのお父さんを責めることはなかった。大きくなって、すみれちゃんは初めてのお給料をもらった。だがあの『最後の一万円』を忘れることはなかった。
 私は一万円札の時、自分の幸せのことしか考えていなかった。すみれちゃんに会ってから、貧しい人にこそ強い心があるということが分かった。私は『天国行きの切手』になって死んでしまったが、すみれちゃんの本当の願いをかなえてあげることができたのだ。心が晴れた。今度は誰の役に立とうかな?

   講評   yuu

「心が晴れる」という経験はとても貴重ですね。マリアちゃんは心が晴れるような出来事と遭遇したことがありますか。すこし曇っていた自分の気持ちにさっと明るい陽射しが差し込むような経験です。マリアちゃんの作文には心を揺さぶるような大事な言葉たちがたくさん登場しますね。

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