対話と個別指導のあるオンライン少人数クラスの作文教室
小1から作文力を上達させれば、これからの入試は有利になる。
志望校別の対応ができる受験作文。作文の専科教育で40年の実績。

昨日2356 今日790 合計10144
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

小学1・2年生   小学3・4年生   小学5・6年生   中学1・2・3年生   高校1・2・3年生

   全員一致制は果たしてよいのか悪いのか?   ひろりん

 イスラエルでは、全員一致の採決は採用しない。それは、みんなで一致できるような案件はいちいち採決にかけないということもあるし、みんなが熟慮せずいい加減に答えているケースがあるからだ。一人か二人ぐらいは反対がいてもいいはずなのに全員一致は不自然である。イエスとノーの差ははっきりしているわけではなく、いくつかの割合で分かれているのだ。イスラエルの全員一致の採決は採用しない、というのは一見理にかなっていないようだが、じつはよく考えると理にかなっているのである。こういうことをパラドックスという。
 確かに、全員一致制だとそれぞれが場の雰囲気にあわせて形だけ一致させているのか、それともちがうのか、わからないことがある。私は小学校でよくそういうことがあった。例えば、転校する子のお別れ会などで歌を歌ったり出し物をやったりしたのだが、そういうときに「歌を歌うか」や「出し物をするか」ということは、多数決できめるのである。選択肢は「する」「しない」のどちらかだ。すると、最初の結果は「する」約20人、「しない」約10人だったのに、数人があげていないという理由でもう一回やってみると、ほとんどが「する」のほうにあげているのである。これは、最初「しない」の方にあげていた人が、ほとんど「する」に変えたということだ。なぜそうしたのかと思うが、それはおそらく「話し合いが長引いたらめんどくさいからこっちでいいや」と「する」に適当に変えたからだと思う。全員一致制も同じように、最初「NO」と言っていた人が、「長引いたらめんどくさい」などの理由で「YES」に変えるかもしれないのだ。全員が「YES」にした採決はそれこそ全員が「長引いたらめんどくさい」と思ってさっさと決まりそうな方をわざと選んでいるのかもしれない。そういう意味では、「YES」か「NO」かを本当に熟慮したのかわからないのが全員一致制の悪いところである。
 しかし、「めんどくさいから」と思って挙げた「YES」でも、それは「YES」なのだ。その挙げた人がその議題に反対でないことを意味している。本当に反対なのなら、長引いてでも反対するはずだ。それで反対しないのは、「めんどくさい」と言う理由もあるかもしれないが、「絶対反対だ!」と言うほど反対でなかったからだと思う。つまり、自分の心の中で、YESの割合が75%、NOの割合が25%ぐらいで、NOと言えばNOなのだがどっちかというとYES、ということだ。それは立派なYESだし、そうじゃないひとも「別にNOと言い張るほどのことでもない」=「YES」ということなのだろう。全員一致制は「YES」になるまで採決は続くから、そういう意味では全員が納得いくまで続けることになる。納得した上で、というのは全員一致制の良いところだ。
 さて、ここで「全員一致は良いのか悪いのか」ということになるが、私はべつにどちらでもないと思う。全員一致制には良いところもあるし、悪いところもある。イスラエルでは全員一致制は採用しないらしいが、そのパラドックスもよくよく考えてみれば新たな視点で否定できる。大切なのは真剣な姿勢で採決に取り組むことなのだが、全員が全員真剣に取り組めるとも限らない。だから、私は全員一致制が良いとも悪いとも思わない。「ここまで長々と語っておいてなんだ」と思うかもしれないが、私は本当にそう思う。

   講評   yuka

今回のテーマは、とても身近に考えられる内容でした。
普段灰色にしている部分を「ちゃんと考えてみようよ」と言われているよう(笑)。

まず、要約部分。ポイントをしっかり読み取って無駄なくまとめられているね。
・イスラエルでは、全員一致の採決は採用しない(具体例をあげながらの問題提起)
・みんなが一致できるような案件は、答えが初めからわかっていることだから、わざわざ問いただすことにあまり意味がない(理由1)
・みんなが熟慮せず、いい加減に答えているケースなどもある(理由2)
・この世にある、すべての困難な決断は、僅少の差異を、わずかな迷いをどう考えるかである(結論)

といった流れ。よく読みとっているね。

第2・第3段落での2つの側面からの考察も、具体例をあげながら論じられていて◎。
第4段落の結論部は、答えのないものに答えるようなものだから(笑)まとめにくかったと思います。
ただ、少し漠然すぎる印象が残ってしまうのが残念。例えば
「大勢の意見を、2択で結論付けること自体に無理がある。大きな『是非』を決めるにいたる、細かな話し合いや心のやりとりという経緯こそが、全員一致の価値を決めるのではないだろうか」
といったように、もう少し踏み込んで結論付けると、もっと説得力が出てくるね。


毎月の学年別「森リン大賞」作品集森リンの丘 
 自動採点ソフト「森リン」で上位になった作文を掲載しています。
 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

作文教室受講案内   無料体験学習   作文講師資格 
Online作文教室 言葉の森  「特定商取引に関する法律」に基づく表示」  「プライバシーポリシー」 
お電話によるお問合せは、0120-22-3987(平日9:00-19:30)