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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   外からのルール、内からのルール   みんあ

 自らの外側から来る行動への制限を、徐々に自らの内側の行動への規範へと変えていくのが、しつけのあるべき姿である。しかし現代の日本では、外側からの制限への信頼の欠如ゆえに、それが内側の規範へと変化していきにくい。結果、外側からの制限がなければ、社会的な規範に反した行動でもしてしまう人が生まれている。現代の世界は、戦争へ向けて動き出しており、また、軍需産業を持つ国家が経済的に低迷する可能性がある以上、未来においても、戦争へ向けて動くことがありうるだろう。その時に、大国の顔色を見て態度を決め、自らの内に従うべき規範をもたなかったならば、日本は世界情勢の悪化の片棒をかついでしまうことにもなりかねない。
 そうならないために、多くの人に自ら従うべき規範を内在化する必要がある。具体的にはどうすればいいか。第一に、子供のころから倫理的な書物を読むことが挙げられる。必ずしも宗教的な書物でなくてもよい。たとえば物語や、あるいは偉人の逸話や伝記などである。読書によって、心の中に倫理的な理想像と、それへの憧れをつくる。憧れは強力で健全な原動力である。残念なことに、身の回りの大人すべてが倫理的な人間で、行為の手本にできるわけではない。多くの大人は、ルールを破ってもいい雰囲気の中では、ルールを破っている。子供はそんな大人を見て育つ。結果、内面的な規範を持たない人間が増える。現実の人が手本にできないのならば、過去の人を手本にするしかない。私は小さいころ「八郎」という絵本を読んだ。村の外れ者だった八郎という大男が、村を津波が襲ったときに、津波を押し返しながら海の底へ沈んでいく、という筋である。数ある類話のうちの一つで原形とは離れたものであるようだが、この話を読んだときに私は自己犠牲の美徳、献身の姿を強く心に焼きつけた。あらゆる社会的なルールは、言ってみれば、他人のために自分が我慢をすることである。私は自分が倫理的な人間だ、などと言えるほど自信があるわけではないが、倫理的なことを正しく望ましいことだと感じられる人間であることには、この幼少期の体験が由来していると思われる。
 もう一つの対策としては、一見では変な話だが、労働時間の短縮、あるいは自宅勤務制の充実がある。つまり、親と子が一緒にいる時間をできるだけ長く延ばすのである。現代は大多数の人が働く時代である。女性の職場進出ということが叫ばれるようになって久しく、残業の修羅場もまだまだあちこちの会社で見られる。しかし、親が働いている時間、子供たちはどうしているのか。子供をしつけられるのはその親だけである。親と子の接触が少なくなっていけば、それに比例して子の親への信頼は少なくなる。親も子を信頼できなくなる。我が子にどれくらいまでお説教をしてもいいものか、わからなくなる。人の子を見ているような気になる。結果、内面に規範ができるほどの深い接触を交わすこともなく、「怖いおじさんがいるから、静かにしようね」といった外的規範しかよるものがなくなるのである。親の収入は家計を支えるが、互いの信頼のために必要なのは、もっとわかりやすい触れ合いという支えである。太宰治が「もの思う葦」の中で言っている。「子供から冷い母だと言われているその母を見ると、たいていそれはいいお母さんだ。子供の頃に苦労して、それがその人のために悪い結果になったという例は聞かない」。こんな関係を築ければ良い。良いのだが、今はこれがなかなか難しい。
 確かに、外側に合わせるというのは長らく日本の平和を支えてきた。冊封や開国や、鹿鳴館でのダンスに民主主義の導入、これらのうち何かが欠ければ、日本は列国占領下の植民地になっていた可能性は決して低くない。しかしこれらの背景には常に「それをした方が日本はよくなるだろう」という判断があった。足利義満は貿易の利益のために明へ服属し、井上馨は不平等条約を改正するために慣れないダンスを踊った。外的な規範へ従うことは、多く内的な規範に発するものであった。しかるに今日、日本は軍事的には弱小国家であるが、経済的にも国際的にも、充分に大国である。いつまでも服属者のつもりで辺りの顔色を覗うばかりでは、いけない。ルールを守るのは、ルールの正しさへの盲信のためでなく、ルールを正しいと信ずる、自らのルールのためである。外側に従う時に自らの内にあった道徳を、忘れてはいけないのである。

   講評   nane

 久々の作文。肩が凝らなかった?(笑)
 「八郎」の話はいい実例。この話を自己犠牲の美徳という点から実例として生かしたというところはさすが。子供のときには、こういう言語化ができないから逆に、より深く印象に残るのだろうね。幼児期の読書というのは、意外と大きな影響を持つね。
 第二の対策の家族の関わりも現代的な話。今日の日本の社会の問題の多くは、家庭の問題に起因している。この対策は、ほかのテーマでも応用できると思うよ。うるさい両親というのは、やはり必要なんだろうね。(苦笑)
 鹿鳴館の例は、日本史の学習の名残か。日本史は、細かい知識の勉強が多かったと思うけど、この知識をベースに古典を読むと、これから活用できる材料になると思うよ。
 「ルールを守るのは……信ずる、自らのルールのためである」は複雑だが、いい名言。
 進級試験合格、おめでとう!!

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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