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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   幸福論   惣流・アスカ・ラングレー

発達してきた根に、ある時点で、根の成長を妨害する条件が与えられなければならないのである。その妨害条件は、例えば季節の変化による温度の上昇あるいは下降といった外界の条件であったり、また、松やにとか、酸性の物質とかの物質的条件であったりするようだ。このような条件が与えられると、その妨害にもめげずに生きるために、根は胞子という形で種子をつくって発達を続けようとする。そうして、やがて松茸となるのである。私は時代の波に流されないように毎日強く生きていこうと思った。
 ではなぜ発達してきた根に妨害する条件を与えると松茸のような立派な植物と化すのだろうか?また同じように、逆境はなぜ人を成長させるのか?…これについては以前、井伏鱒二作「黒い雨」という文学作品の読書感想文を書いたときにも、似たようなことを話した。「黒い雨」という作品は原爆被爆者の主人公が原爆の恐ろしさを後世に伝えようと、公立学校の図書館に自らの「原爆日誌」を寄贈するため、当時の日記を清書する話だ。話の合間に挿入された「原爆日誌」本文が、昭和という困難な時代、そして広島で被爆した様々な人たちの物語を鮮明に描きつつ、「生きるとは何か?」「平和とは?幸せとは何か?」という事を絶えず現代に問い続けるという大きなテーマであった。私は、たぶん感想文の宿題を出した国語の先生は「戦争の恐ろしさと、私たちの目に見えぬ幸せさ、平和さを実感しました」などという模範文を期待しているのだろうなと思っていたが故に反抗心が働いて、「原爆」という主題からかけ離れた、人間を生物学的観点から感じとった感想を書いた。
 …まず、第一段落のみを「命の大切さ、人間の幸福論とは何か?」という、本文の内容に沿った始まりをした。そう、日本人は平安時代に律令制がはじまってから(少なくとも国民は)徴税、徴兵などによって束縛され、江戸時代には完全なる封建制度の確立によって更に人々の幸せは制限されていたのだ。しかし、それでも彼等は、そういった「時代の荒波」に適応しつつそれらを乗り越えていったではないか。
 それでは、そういった時代の波に適応しきれなかった人々とは一体何なのか?(…と徐々に脱線していく文章の仕組みにした)そんな疑問に対し私はこう結論した。彼等は間接的に、人類の子孫繁栄の枠外に出てしまった者達なのだ…。例えばゴキブリを例にすると、足が遅く、頭の悪いゴキブリが人間に殺されることによって、賢く逃げ足の速い者だけの遺伝子が残り、あのようなすばしっこい生き物となっている。…そして私はこの場合、ゴキブリにとっての「人間の殺虫」とは人間の「時代の波」と同じだという事に気付いた。つまり、死ぬことによって他者の子孫繁栄を促進し、それぞれの生命体の全体的なレヴェル向上のために犠牲となるという、死にゆく者の摂理の事を指す。
 また、そう考えると「黒い雨」の時代背景となった昭和初期という困難な時節柄も、それらの例外ではないのだ。例えば空襲で逃げ足の速い人、遅い人では運命がだいぶ違っただろう。足が遅く、逃げ遅れた人は、その時点で子孫を繁栄する可能性が完全に閉ざされてしまう。…このように「時代の波」というふるいにかけられ、不合格の者は死んでしまったり、社会不適応者になったりした者のことであるとわかる。(ただし、生き物は時間が経てば必ず死ぬので、死者全員が必ずしも時代の波に適応できなかった人間とは限らない。)
 これは人間だけでなく自然界にも共通する事実である。トラがウサギを狩ろうとし、ウサギが必死になって逃げているという光景をテレビで見たことがないだろうか?これはいわゆる、今まで私が言った事の縮図に加え、「弱肉強食」という自然界の厳しさを足したものだろう。トラにとって今日の食物を得なければ明日はない。一方ウサギにとって、トラに捕まったら殺されてしまう。ここでも「強者だけが明日を生きる」という仕組みはある。しかし、その例外となったのが「原爆」である。その「強者だけが生き残るシステム」を使用する最はトラとウサギのように一対一の対等な条件下で行われるものである。それなのに、一瞬にして無差別に人が殺され、非情すぎる…とここで「黒い雨」の感想文は終わりにしておく。
 このことから考えて、なぜ逆境が生物を成長させるのか、という問題の結論がでる。逆境に負けてしまった人は例外として、その問題を乗り越えた人は、ようするに時代の波に適応しきった人と=で結ばれる。ちなみに、人間には誰にでも子孫を繁栄させるという最終目的があるので、最終目的に辿り着くために、人間にはいかなる逆境にも打ち勝つ能力が備わってなければならない。ここからは私の推測に過ぎないがに人間が逆境の前に立ったときは、目標(子孫繁栄)という本能的な希望の意志の強さが発揮され、逆境を越えたときのその「達成感」「克服感」こそが人に自信を持たせ、成長するのだと思った。

   講評   miri

<第1段落>これは、7.2の長文の感想文として読ませていただきます。松茸の例に限らず、ある程度の抵抗(電気の抵抗のような)や、逆境と呼べる条件があるほうが、成長するという主題ですね。アスカさんにとっては、「時代の波」がそれにあたるのかな。
<第2段落>弱肉強食、食物連鎖、自然淘汰そういうイメージが浮かびました。それにしても、「黒い雨」で、そのような感想文がかけるとは、脱帽です。さらに、「ただし、生き物は時間が経てば必ず死ぬので、死者全員が必ずしも時代の波に適応できなかった人間とは限らない」と冷静に考えられるところもすごいです。ただ、「原爆は例外」としたところの論旨の展開が意味はわかるのですが、少し唐突にも思えます。強いものは逃げ延びたというところと合致しないからです。(例外といってしまうと)ですから、案1=運の強い弱いもその優劣が関係するとしてしまう。 案2=「強者だけが生き残るシステム」をも原爆は
破壊してしまったのだ  というようにすると文章全体がスムーズに流れます。もうひとつ、かんがえられるのはこの部分は実は非常に重要な「気づき」ですが、それまでの華麗な展開に比べ、比較的凡庸な「非常すぎる」で、尻切れとんぼ的に消え入ってしまっています。ここまで、「おもしろい考えだなあ」と感激して読んできたものには物足りなさがどうしても残ってしまいます。このように、力尽きる前に、「良い考え」「よいアイディア」はそれを中心に書くような文章の仕組みにするとよいですね。(書いていくうちにだんだん思いついていくので難しいと思いますが。そのためにはやはり多少の推敲が必要ですね)
<まとめの段落>じょうずに主題をまとめ、力強い結論になりました。
蛇足ですが、目標=子孫繁栄、はほんとうにそれ、のみでしょうか?また、それでひとつかけそうですね!
                            

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