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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   一番になったこと   えかれ

 僕の学校には週に一度、水泳の授業がある。3年生までは、まあまあ得意で好きな授業の一つだったけれども、胸の手術をしてから水泳が出来なくなってしまった。手術後、1年がたってお医者さんからようやく水泳が許可された。わくわくする気持ちを抑えてプールに入ったが、とてもショックを受けた。それは、楽しみにしていた授業なのに水の中では、まるで体に石が巻きつけられているように自分の思い通りに動かず、ちっとも前へ進まなくて、とても苦しかったからだ。心の中では「その内、慣れるだろう。」と思っていたけれども現実にはクラスの中で、水泳の苦手なグループに入れられ、そのときから水泳は僕の嫌いな授業へと変わってしまった。
 それでも僕なりに、水泳を頑張ったつもりだった。でも学年末の成績表では水泳の評価が前回の“2”から“4”まで落ちていた。両親は何も言わなかったけれども、僕自身はこんなに成績が悪いとは思ってもみなかった。きっと両親も、声が出ないほど、がっかりしたのだろう。次の日母は、弟の友人から紹介されたスイミングスクールにあまり気が進まない僕を無理やり入れた。
 スクールでの初めの一ヶ月は僕にとって、とてもハードだった。週に2回、休む暇なく1時間のスパルタ特訓だった。プールサイドに立っているコーチの顔が鬼のように見えた。でも一ヶ月が過ぎた頃、泳ぐのが少しずつ楽になってきて、スイミングスクールが待ち遠しくなってきた。
 いよいよ学校で、毎年行う水泳大会がやってきた。最初の目的は予選を通過することだった。順番を待っているときに去年の嫌な思い出が頭の中に浮かんできたけれども、スタート直前には何も考えずに先生の「ゴー」という合図だけを待っていた。先生の声が僕の耳にひびくと同時に、おもいっきり水の中に飛び込んだ。後は無我夢中で手足を動かし、息を吸うことさえ忘れて50メートルを泳いだ。気がつくと僕が一番でゴールをしていた。タイムもクラスではトップだった。僕も驚いたけれども、それを見ていたクラスメイトはもっと、びっくりしていたようだ。
 一番になるということは結果であり、僕はその努力をすることが大切だと思う。一番になるために、僕はスイミングスクールに通った分けではない。ただ以前のように楽しく水泳が出来たらと思っていた。その結果が一番という順位を与えてくれた。何も努力をしなくても一番になれる人はたくさんいるだろう。けれども一生懸命に努力をして得た一番は特別だ。僕はもちろん今もスイミングスクールに通っている。最近はコーチの顔も鬼には見えない。

   講評   nakahi

 励君、今回の進級テストは合格です。おめでとう。前回より大きく伸びた点は、表現方法です。譬(たと)え、そしてユーモアのある文章が書けるようになりました。
 細かいところから説明していこうね。まず第一段落は、状況の説明から始めていますね。励君のことをよく知らない読者にも理解できるイントロダクションです。ただ、説明だけでなく描写的に書くと、美しい文章になるので推敲(すいこう)する癖をつけていきましょうね。例えば、手術後1年が経過して、初めてプールに入った日のことを思い出してみましょう。久しぶりに入るプールの様子はどうだった?「水はきらきらしていた」といった文章を「わくわくする気持ちを抑えて…」の前に入れたらどうだろう?プールに入る前のわくわくする気持ちを助長(じょちょう)させているでしょう。そして、それがさらに「ショックを受けた」事実への落差を生みだすこともできるのです。文章も芸術品と同じです。色を添えて美しいものを作っていく楽しみを覚えていってくれたら先生はとても嬉しく思います。
 第二段落目の始まりがとても良いですよ。「それでも僕なりに、水泳を頑張ったつもりだった」の一文は、その学期中の励君の頑張りとは裏腹に結果が悪かったことを示唆しています。すごく上手な一文でユーモラスな表現です。まるで小説のチャプターの始まりのようです。細かいことですが(またもや!)、ご両親の「声がでないほど」を生かしたら面白いですよ。「きっと両親も、声がでないほどがっかりしたのだろう。次の日母は、有無(うむ)を言わせず、弟の友人から紹介されたスイミングスクールに、あまり気が進まない僕を無理やり入れた。」とかね!
 第三段落目の光る表現は何といっても「プールサイドに立っているコーチの顔」です。鬼のようだったコーチの顔、この表現は最終段落で再度述べることとなるキーワードですね。しかも、鬼から鬼でない顔という比喩表現だけで、コーチを通り越した水泳そのものに対する励君の印象が描かれているんですね。とても上手いですよ。
 第四段落目はクライマックスです。先生の頭の中には「炎のランナー」の挿入曲が流れていましたよ(笑)。え、知らない?お父さんに聞いてみてね。ともかく。「無我夢中で」「手足を動かし」「息を吸うことさえ忘れて」等々、スピード感があふれる内容でした。クライマックスらしい内容に仕上げています。クラスメートは何ていっていたのかな?ここで会話表現などを入れるとより描写的になったと思いますよ。
 第五段落目のまとめは、感動的な教訓ですね。励君はたいしたモラリストです。一文一文が頷(うな)ける教訓でした。「その結果が一番という順位を与えてくれた」という無生物主語を使った書き方も、励君の無欲を表しています。無欲とはいっても、やはり「一生懸命に努力をして得た一番は特別」だよね。ご両親もさぞ励君のことを誇りに思っていらっしゃることでしょう。「千里の道も一歩から」という成句などが入れられたらよかったですね。最終段落は先生がいつもいうように、主題の一般化をすることが大事だから、成句などをいれられるように努力してみましょう。
 全体的には第一段落から第四段落が時系列(じけいれつ)で書かれているのがわかりやすかったです。文章の書き方としては、わざと時間の経過の順番を混合させて書く方法があるのです(映画の「ゴッドファーザー2」みたいにね!)が、そういった高度な方法も少しずつ学んでいこうね。
 作文の上達が目に見えて判(わか)る文章でした。どうもありがとう!


<誤>
声が出ないほど、がっかり→声が出ないほどがっかり
分けではない→訳ではない

毎月の学年別「森リン大賞」作品集森リンの丘 
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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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