対話と個別指導のあるオンライン少人数クラスの作文教室
小1から作文力を上達させれば、これからの入試は有利になる。
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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   一番になったこと   えかる

「ドキッ、ドキッ、ドキッ。」ぼくの心臓は、大きく叫んでいる。頭の中では次はぼくだ。次はぼくだ。」という声が、何度も聞こえてくる。やっと前の子の演奏が終わり、ぼくの名前が呼ばれた。「脩、リーディングのコンチェルト・Bマイナー。」ぼくはいすから立ち上がり、大きく深呼吸をした。
 先生が、バイオリンのチューニングをしてくれた。ピアノの楽譜を先生に渡し、ステージの中央へ行った。ぼくの心臓は、まるで力いっぱいドラムをたたいているかのように、大きくそして速く鳴っていた。今にも爆発しそうな勢いだ。もう一度深呼吸をして、バイオリンを構えた。ピアノの前奏が始まった。最初を間違えなければ、最後まで上手に弾く自信はあった。「よし、うまく出来たぞ。」演奏の始まりは完ぺきだった。ぼくは、どんどん乗ってきて、体が曲に合わせて自然に動いていく。「ビブラートも調子がいいぞ。」いつの間にか心臓のドキドキは感じなくなって、楽しいバイオリンを弾いていた。ぼくは、バイオリンソロで、何度もコンサートに出ていたが、その日のコンサートは、ぼくにとっては特別な日だった。それは先生から暗譜をするように言われていたからだ。ぼくは、毎日くり返し練習をした。そのために、いつもの練習時間よりも長くかかってしまい、七才だったぼくにはハードな毎日だった。ところが練習の成果が出て、気がつくと指が勝手に動き、暗譜が出来ていた。いよいよこの曲のクライマックスに入った。フォルテシモになり、ぼくは力強く弾いた。「最後のBフラット、ビブラートでフィニッシュ。」心の中で叫んだ。
「ブラボ−!」と言う声と、大きな拍手が聞こえた。ぼくも「やったぁ。」と思い、笑いがこぼれていた。満足感でいっぱいだった。コンサート終了後、たくさんの人たちから「ウェルダン、脩。」と言われてとてもうれしかった。
 ぼくは友だちの誰よりも、バイオリンの練習が多いと思っている。その結果、同学年でバイオリンを習っている友だちの中では一番にグレードが進んでいるし、オーケストラの中でも同学年のリーダーをやっている。出来ればこのまま一番でいたいが、一番にこだわってバイオリンをやっているわけではない。だんだん難しくなってきたので、練習したくない日や、もうバイオリンをやめてしまいたいと思う日もある。そんなとき父は、「音楽は音を楽しむって書くんだよ。」と励ましてくれる。バイオリンを弾いて楽しくなかったらやっても意味がないと思う。出来なかったことが出来るようになったときの充実感を知っているからこそ頑張れると思う。努力をしないで一番はありえないと思う。だからぼくは今日も練習をする。

   講評   nakahi

 自信あふれる作文に仕上がりましたね。自信が溢れていて読者に元気を与えることができる作文を書いてくれました。
 第一段落目の書き出しでは、心臓音の重さがわかるようでした。「ドキドキドキ」だと単に速く打っている心臓音だけれども、「ドキッ、ドキッ、ドキッ」だと緊張感が極度まで達していた様子がわかります。また、心臓音だけでなく、コンサート前の緊張感の描写が上手にできています。「ぼくはいすから立ち上がり、大きく深呼吸した」という文章はとても上手に緊張感をほのめかしています。
 第二段落目もキーポイントが明記されていて、音楽を知らない読者にも手にとるように何が大事かがわかる内容です。「最初を間違えなければ」良い演奏になるということを説明したからこそ、「演奏の始まり」が「完璧だった」という個所の大事さが読者に伝えることができたのですよ。脩君は、作文を書く上での話法を見事に身につけていますね。そして、音楽の流れに沿ってリラックスしたり、音楽と共に演奏者自身がクライマックスに達していく様子が、身体の動きを描写することで表現できています。技術だけではなく、暗譜という難儀を乗り越えたことも自信に繋がったのですね。心の中で思ったことの多用も、まるで音楽を読者に聞かせているかのような効果があります。フィニッシュを「心の中で叫んだ」という書き方で終わらせる方法はとても格好よかったですよ。
 最終段落では、そのコンサートでの脩君の出来栄えが努力の賜物であったことを自信をこめて書いてくれました。努力は本当に大切だね。同時に、音楽の本質も述べてくれました。努力⇒一番という構図は簡単に論じられる内容だけれど、努力を払うべき対象の本質を理解することの大切さまで述べられているので先生は本当に感動しました。また、できなかったことができるという充実感は努力そのものの本質だね。人間が、あるものに対して向かっているときにはさまざまなファクターが絡(から)み合っているのですね。脩君の作文を読みながら、哲学的なことを深く考えさせられました。見事な作文を書いてくれてありがとう。
 もちろん進級テストは合格です。森リンも高得点でしたね。おめでとう。
 

毎月の学年別「森リン大賞」作品集森リンの丘 
 自動採点ソフト「森リン」で上位になった作文を掲載しています。
 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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