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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   人を動かす力を持つ言葉   高原 八千穂

 言葉を学ぶことは、その土地の文化を体験し、学ぶことだということを、アメリカでの生活の経験から実感した。文化に根付いた言葉は、その字面だけ追っていても、その意味や、真意は理解できない。その言葉がどんな時、どういう状況で使うものなのかを理解しなければ、その言葉を学習したことにはならない。私はアメリカで米英語のクラスで、言葉を通して、アメリカの文化や慣習を学んだ。逆に言えば、言葉によって、我々の文化は創り出されるものであるともいえる。今日、文化を築くような強い意志を持った言葉を我々は耳にするだろうか、使っているだろうか。耳に心地よいけれども、何も与えず我々の頭をすりぬけていく軽々しい言葉が、テレビや、ラジオや会話から聞こえては消えていく。現在の言葉の在り方を問い、その原因を探り、どのように、言葉に力を持たせることができるかについて考察を述べる。
 第一に、Aの資料は、国によって、同じものを示す時に違う表現を使うことから、我々がその土地で使われる言葉によって、ものの見方を無意識のうちに規定されていることを述べている。私が大好きなサウンドオブミュージックに出てくる「ドレミの歌」の英語の歌詞では、レ(ray)は、金色に光り輝く太陽の光。とある。一方、日本では、童謡にも見られるように、太陽は真っ赤であると、我々は小さいころから、教え込まれているように思う。何もいとわず、当然のように、太陽をクレヨンの赤でぬっていた。
現在では、本来の髪の色でないカラーリングした茶色や、金色がかった髪の日本人は珍しくないが、当時、私は、日本人の髪と眼の色は「黒」と表現することを、信じて疑わなかった。アメリカに滞在中、私の眼や髪の色は、「茶色」と表現されていた。確かに良く見て見ると、濃い茶ではあるが、小さい頃から、私は人物の絵を描く時、髪の毛には、黒いクレヨンを使ってきたため、「茶色」という認識はなかった。もともと言葉は、表現するものごとに枠組みを与え、捉えやすくするため、人々の中に既成概念を与える力を持っている。このことが、言葉が形骸化する傾向の原因と考えられるのではないだろうか。
 第二に、Bの資料では、人は言葉によって、既存の世界の枠組みの中で、慣習を身に付けるが、人間は長い間完全に秩序で統一された世界にとどまることができないので、秩序を組み替え、新しい価値の世界を開くであろうと述べている。このように、将来に向けて、新しい言葉を創造し、新しい現実を築くことが、我々がとるべき対策なのではないだろうか。昨今の選挙の公約で、耳に残っているのは、「マニュフェスト」という言葉だけで、その中身については、あまり記憶に残っていない。故田中角栄の主張および著書名である「日本列島改造論」は、当時子供であった私の記憶にもしっかり残っているほど、確かにインパクトのある言葉であった。この日本列島改造論で、日本物流インフラが高度に整備されたことは事実である。情報通信技術がめざましく発達した今日、言葉を含めた情報の伝達は、距離と時間の壁を取り払った。伝達手段の基盤は充分整っていると考えられる。今、人の思想に影響を与えるような、中身のある「言葉」が待たれているのだ。
 言葉と文化を切り離して考えることはできない。人の心に響く言葉を待ち望む今日、それは、我々の現実の社会が、人の心を動かすもの、情熱熱を感じられるもの、世の中の方向をよりよく変えるための方向を明確に示すものを欠いていると言えるであろう。言葉を越え、言葉の創造する力を使って、新たな信念を人々の中に根づかせ、世の中を変えることこそが、我々が試みるべきことなのではないだろうか。言葉は人の口から滑り出して、単に意志伝達を行うための手段ではなく、「言霊」という字が表すとおり、信念、願い、意志を示す我々の魂そのものなのだ。魂が宿る言葉は人を動かす力を備えているのだ。

   講評   nane

 これも微妙なテーマで書きにくかったでしょう。「文化を築くような強い意志を持った言葉」というのは、簡潔で明確な問題提起になっています。文化の表層を流れるような言葉が身の回りには多いですからね。
 アメリカの異文化体験は、個性的な実例になっています。確かに、日本に住んでいるだけだと、髪や眼の色は黒と信じて疑わないでしょう。私もそう思っていました。
 身近な体験実例のあとの一般化した意見が、いい押さえになっています。柔らかい話のあとに「枠組みが形骸化の原因」と続けると、難しい意見もすんなり頭に入ります。
 第三段落の時代を切り開く言葉の例も具体的。あまり悪口を言ってはいけないけど(笑)、マニフェストなどは単なる流行語で終わりそうな気がします。
 第四段落は、ちょっと分かりにくかったか。書いてある内容は的確です。言葉の問題は、結局社会の問題ですから、言葉が空虚になっているとき、社会もまた明確な目標を欠いていると言えるのかもしれません。
 今回も力作。
 試験が迫ってきたら、手書きで書く練習をしますね。

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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