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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   科学技術に立ち向かえ!!!   ノンキィ

 現代の日常生活は、科学文明を過信するあまり、科学に対する基本的な姿勢を忘れ去ってしまっている。便利という言葉に浮かされて、出来合いの科学を大量に買い込んで、これでもかと言う失敗を繰り返しても、実に平気なのである。それはまるで、「ドラえもん」に登場する「のび太」そっくりだ。漫画「ドラえもん」の真の面白さは、決して笑ってはすまされない現代の深刻な問題への警鐘なのである。
 わたしは、この現代の世の中に、人間が抱える問題は、とても深刻であると思う。この問題とは、私たち自身が、急速に進歩し続ける現代科学と、どう向き合っていくかということである。そう考える理由は、二つある。
 第一にこの、日々めざましい成果をあげる科学技術に私たちが過信するあまり、過去からの思考、つまり、昔から人類が積み上げてきた考え方が、軽んじられてしまう危険性があるからだ。例えば、今世界が注目している、遺伝子の研究を見てみよう。確かに、生命の神秘をここまで追求し、解明した人々は、偉大であると思う。また、恐ろしい病気に対応するのにも、生物の遺伝子を研究することは大切であると思う。だが、ここで考えてみて欲しいのだ。この研究で得たものは、本当に全て必要であっただろうか。わたしはこの間テレビで、近い将来、生まれてくる赤ちゃんの遺伝子を操作して、親の思うような子どもを作ることの出来るようになるということを知った。この技術を素晴らしいと思う人は多いだろう。しかし、わたしは賛成しかねる。なぜなら、そこで産まれてくる子どもは、親の理想によって自分の容姿や性格を決められるのである。また、それを決めた親も、その子を本当に自分の子として受け入れることが出来るだろうか。心のどこかで、言葉は悪いかもしれないが、「人工物」だとは思ってしまわないだろうか。このように、次々と新しい技術に流されずに、ときどき立ち止まり、もう一度、これまでに考えられた人間の知識や思想を振り返ってみることも大切だと思う。
 第二に、過去を振り返ると共に、未来を見つめることも大切だからだ。今、便利だともてはやされて、世界を飛び回る科学技術の数々は、本当に未来の人々のためになるのであろうか。現在人間は、様々に開発されてきた便利な機械類に頼り過ぎて、何億年もかけて作り上げられてきた地球環境を破壊している。今、世界でもっとも二酸化炭素排出量が多いのはアメリカで、22.4%だというデータがある。続いて2位に中国、3位にロシアがランクインしている。この3ヶ国は、いずれも科学文明の進んだ、いわゆる「先進国」である。(環境庁1994年より)また、これらの国々に限らず、世界各国では、あまりにも進んだ科学技術という盾のもとに、人間が自然界に介入し、これもまた、何千、何万という年月を経て進化してきた動物達を、次々に絶滅へと追い込んでいる。つまり人間は、自分達が快適に過ごす環境を求めているうちに、何の関係もない生物の命を奪い、さらにはその自分をも、苦しい環境に追いやってしまっているのだ。このような結果をもたらすだけの技術は、本当に必要なのだろうか。
 もちろん、人間がより良い環境を求め続けた結果として生み出された文化は、素晴らしいものだ。また、真に人間の役に立ち、皆を幸福にしてきた技術や思想はあるだろう。それら全てを否定するわけではない。むしろ、そのような技術は、これからも次々に生み出されていくことを期待している。だが、そのような技術の陰には、一時の便利さを私たちに与えただけのもの、さらに、人間の子孫やその他の様々な生物の生きる地球に、危害を及ぼすようなものも決して少なくないのである。
 「カメラマンは、レンズのほこりを払う前に目のほこりを払わねばならない」という名言がある。私たちは、機械を磨き、それを使う前に、自分自身の目を磨き、過去に耳を傾け、未来の自分を見つめなければならない。ただ「便利」という言葉だけに浮かされ、それに流されてばかりいれば、自分達はおろか、地球の未来も危うくなってしまう。そうなってはじめて気がついたのでは遅いのだ。人間は生物の長い進化の過程で唯一、考え、それを文化として残すことの出来る動物である。しかし現在は、その高い能力がかえって自分達を傷つけようとしているのだ。科学技術が発展するのは、とても良いことである。しかし、その技術が同時に、自分達を傷つけていることも、決して忘れてはいけない事実なのである。

   講評   nara

 先端技術という呼び方に示されるように、科学技術は細分化し専門化して、それぞれがマイクロチップのような、細かな、しかし大量の情報を持つものになってきているのだろうね。これらを個々のパーツととらえると、不具合のあるパーツは交換し、それぞれのパーツの性能を上げれば、全体としてよりよいものになるのだろうか? 確かに、人間も他の生き物も多くのパーツから成り立っているけれど、それはマシーンのパーツとは異なるものだ。なぜならば生命体だから。例に挙げた遺伝子組み換えによって「作られた」赤ちゃんは、もしも親の意向に沿わない面が表出したら、そこを取り換えるのだろうか。それとも、赤ちゃんそのものをリセットして、新たに意向により合致する赤ちゃんを作り出すのか? 生命を大局的に統合的に見る目が近代・現代科学には欠けているのかもしれないね。第1理由で挙げた具体例は、まだ私たちに示されていないだけで、技術的には十分実用化のレベルに達していると言われている。この技術を行使するか否かの判断は、人間が人間をどうとらえるかにかかっているね。
 第2理由もよくまとめられた。データの入れ方はこれでいい。できれば、ごく最近のデータも見つけられるとよかったね。引用したのが10年前のものだけれど、ここ10年でどう変化したのかも論じられると、論のおもしろさも増してくるだろう。
 私たちは、「便利・快適」という欲が満たされたとき、そのことに対しては一種の思考停止状態に陥ってしまうのかもね。一度便利なもの快適なものを手にしてしまうと、それがない状態を考えられない。その思考は「より便利に快適に」ということにしか向かなくなる。それらが持つ負の部分には考えが及ばなくなる危険性があるのだね。
 まとめもいいなぁ。名言をアレンジし、「私たちは機械を磨き……」と自らの言葉で主張したところに説得力があるよ。また、「進化の過程を唯一文化として残せる」というところもいいね。この力をいかに駆使していくか。ただ無邪気に前へ前へ、先へ先へと進んでいけた時代は、もう終わったと言うことなのかもね。電話での確認はちょっぴり時間がかかったけれど、よくまとめられた。重みのあるいい文章だ。

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