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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   最近、と言っても(感)   えにほ

 著者は日本文化の欧米文化の取り入れ方、つまり文化論を綴っている。まず、著者は日本語は明治維新以来,現在に於いても,言語学で指摘される言語干渉を多く受けている言葉である事を論じている。多くの外来語は,「英語を旗頭とするヨーロッパ諸言語に日本語が干渉されておこった言語干渉にほかならない。」 外来語の使用、また外来語への順応性は日本人、日本文化の「異文化に対する憧れや自己顕示慾、そしてその文化や言語への接近同化の願望」の表われであることも指摘する。そんな日本の近代化に於ける文化、社会的傾向が明治維新以来、日本の社会変動の大きな要因になっている。そのため、新時代における各界のリーダー達に課せられた課題は,欧米の荒波のように到来する異質の概念の多くをどのように日本語の中に取り入れていくかであった。著者によると,日本は多くの西洋文化を取り入れにもかかわらず、雑種文化になることなく、世界でも珍しい併在文化の国になっている。著者はその要因として、日本の内と外を区別する生活様式に着眼している。めまぐるしい文明変化の中で,一種の社会制度上の緩衝装置、社会的な知恵として機能したのだろう、と面白い観察をしている。さらに日本文化がそんな防備技を備える事ができたのも日本語の漢字使用にあると論じている。 しかし、グローバル化が進む中、日本だけでなくどの文化圏に住む人達も近代化で求めた欧米化からまた違った価値観を求め作り出そうとしているような気がする。そんな中,はたしてこの緩衝装置はうまく機能し続けるのか?文化論、日本人論は80年代、90年代と次から次へと本屋さんの棚を賑わしたものだ。今現在この類いの本はまだ執筆され売れているのか知らないが,文化論とか日本人論と格式張った物は段々姿を消したように思う。個人的には日本伝統文化追求の本とか村上春樹とか吉村ばなな等の海外の読者にも愛読されている小説の数々の中に現在の「日本」を確認する時がある。この2つの例がまた違った日本文化の展開の仕方を示唆しているように思う。

 日本伝統文化の追求だが、講談社が「和楽」という月刊誌を出版している。これは伝統建築、庭,きもの、食べるもの、伝統芸能、何から何まで「和風」の「ほんまもん」に徹していて、和風にこっている主婦対象のシャレた雑誌になっている。 伝統的な物は古いもの、と云うのが当たり前に思われていた時代に代わり、和風的なものの希少価値があがり、趣味的でシャレたものになっている例である。ほかに日本伝統文化の追求の例として私の目に留まったのが,古武術研究家の甲野善紀の活躍である。彼によると、西南の役で緊急に集められた近代的兵士達は日本で初めて,今現在普通になっている、左と右を交互に出す行進の仕方を習ったと云う。それまでは一般の日本人は「なんば歩き」という左右の手足を同時に出す歩き方が普通だったらしい。 こんな発見は日本人の西洋化が進んだと云う自覚と「日本伝統」の再確認と啓蒙への興味を促すように思う。

これに代わり,村上春樹、吉本ばななの小説は昔から「日本文学」と云う概念をうちやぶった。海外の読者が「日本」と云う事をあまり気にせず愛読しているからである。「日本文学」にこだわる先生方は特に村上春樹の文体は文学では無いと煙たがる節があるようだが、どの国の若者に愛読されていると報じられているから彼の小説の人気は確かな物である。アメリカのNew Yorkerと云う教養層の人たちの読む週刊紙に英訳の短編小説を載せたり,インタビューに応じるのも村上春樹である。アメリカ文学の翻訳にも活躍する村上だが、生きた日本語を使ってアメリカ文化をうまく現代的な表現に乗せると云う村上の特訓が彼の日本語で書いた小説の翻訳の人気に関係しているとも思う。村上の日本で育ちながら吸収したアメリカ文化と音楽,そしてアメリカ文学への興味が,彼を世界の多くの人に愛読される村上春樹にしてしまった。それでも彼の作品の細かいところには日本的なものが織り込まれ、村上春樹の世界の読者はそんな所に異質で魅惑的なものを感じると云うことらしい。そして村上現象は、日本語の柔軟性を教えてくれる。日本の若者への人気の理由にしても、今まで日本の小説に無かった新しい型の自我の展開を経験できるからなのだろうと思う。

 グローバル化が進むにつれて、日本文化はもっと柔軟で多種多様な対応の仕方が必要となってくる。何が内で何が外なのかうまく図式できず、近代化ではうまく機能した緩衝装置はもう適切でないかもしれない。新たな日本伝統の発見の試みにしろ、欧米文化をうまく咀嚼した日本語の小説しろ、これからも新しく日本文化の創造と継承が行われていくには違いない。

   講評   unagi

<第1段落>要約に続いて自分の意見を述べています。グローバル化した現代社会において、「はたしてこの緩衝装置はうまく機能し続けるのか?」という疑問を投げかけるのが主になっています。
<第2段落>複数の理由①「古いものがシャレている」と感じる現代日本人の感覚や古武術研究家の話を例に挙げ、日本人の伝統的なものに対する意識を論じています。見識が垣間見られます。
<第3段落>複数の理由②「欧米文化をうまく咀嚼した」村上春樹が現代の若者に支持される根拠を軸に、「新しい型の自我の展開」について語っています。ポイントは「柔軟性」ですね。かつての「緩衝装置」とは性質の異なるものが村上文学を生み出す一因になっているというところが、大変興味深いです。第2、第3段落で、現在の混沌とした「内と外」の意識を上手く描いていますね。
<第4段落>是非の主題:手際よくまとめています。この調子で取り組んで下さい。

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