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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   会話をすることは必要か?   しっぽ

 一瞬、話しかけられているのかと思った。「ふざけんなよ!!人が黙ってりゃあいい気になりやがって…!」私の後ろに立っているおじさんの声は、走る電車の音よりも大きかった。びっくりして思わず振り返ると、おじさんはつり革をねじりながら相変わらずぶつぶつと文句を言っている。宙を泳ぐその目には、私など見えていない。昔のことを思い出して一人で怒っているらしかった。一見うるさくて迷惑だが、今の時代にはこういう風に頭の中で会話することさえも必要なのだ。現代、会話をするという行為が大変少なくなっており、またそれに伴った人間関係の希薄さも問題になっている。
 こうなってしまった第一の原因として、家族の在り方が昔とは大きく変化した、というところにある。昔は、サザエさんの家族のように大家族が主流だった。しかし、現在では核家族化が進み、家族内では自分の父母、あるいは兄弟としか話す機会が無くなっている。私の家では、盆休みになると広島へ帰省するのが習慣となっている。広島には祖母と祖父がいて、会う度に色々な話を聞かせてくれる。その時に、いつも世代の差を感じる。もちろん父母と話していてもそれを感じることはあるが、毎日話していれば、考え方の違いへの違和感は薄れていくものだ。しかし、祖父母と話している時に感じる大きな違いから、私はいつも多くのことを学ぶことができる。普通、自分と異質な人間と進んでコミュニケーションをとろうとする人はあまりいない。普段とは違う考えに疲れてしまうからだ。慣れ親しんだ人と当たり障りのない会話をして満足するよりも、多くの人と様々な話題で会話をし、視野を広げていく方が会話をすることの意義が十分に発揮されるかもしれない。
 また第ニの原因として、メディアや経済面において、社会が豊かになりすぎたことがある。現在の世の中は、一昔前では考えられないほどの進歩を遂げている。一人でいることが暇になったら、様々な方法で時間を潰すことができる。テレビをつければそこで騒いでいる人たちを見て、自分も楽しい気分になってくる。パソコンを開けば、わざわざ外に出なくても多くの情報を正確に知ることができる。このように便利な時代は、人々を無口にしてしまった。普段生活していく中で、特別他人と対話しなければならない状況が無くなってしまったのだ。もし人と対話することなく一生過ごすとしたら、その人の考え方は画一化し、偏ってしまう。批判し合い、わかち合うことで、思考は充実し、魅力的な人間になることができるだろう。
 確かに、相手の思想に感化されやすく、会話をしている内に自分を見失ってしまうようでは困る。私たちが今持っている思想は、それぞれが今まで生きてきたなかで培ってきたもので、自身の財産である。それは留まることを知らず、出会ったものを吸収して日々成長していく。他人と対話していて一番怖いのは、相手が持っている思想に比べて自分の思想が陳腐なものだと実感する時である。自分が今まで信じてきたもの、更には生きてきたことさえもが劣っているように感じてしまうからだ。だから、いつかそれに気付いてしまう前に、一般的な考えを自分のものように語ったり、優れた考えに身を委ねることでで自分の考えを捨てたりしてしまうのだ。しかし、自分の持っている思想は、決して他人のものと優劣をつけられるようなものではない。それはその人の人生そのもので、全ての人に同等の価値があるからだ。だから、他人との会話は、自分の思想を他人のものと比べて優劣をつけるためにするのではなく、他人との差を認識した上で、自分の思想のありのままを再確認するためにあるのだ。会話なんて他人に気を使うし面倒だし、第一しなくても生きていける。しかし、自分の生きてきた証である思考を表現できる対話をすることで、より人間らしく生きていけるのではないだろうか。

   講評   nane

 書き出しが面白い。いる、いる、そういうおじさん。(笑)この間は、そういうおばさんがいた。^^;電車の中で、「ったく、冗談じゃないわよ」なんて大声で言っていた。みんな、大変だなあ。
 書き出しは、しかし、できれば美しく。(笑)例えば、高校生の女の子たちが小鳥のように精一杯にさえずっている。(変か(笑))
 大家族の例でサザエさんを出したのはいいセンス。こういう具体例は印象を具体的にする。
 祖父母との話というのは、異質な世界に触れる機会になるね。日露戦争の話などを聞くと、時代を実感するでしょう。
 結びの意見の部分の語彙は、さすがに高校生。確かに、他人と話をすると、自分の考えの一面性がわかることがある。だから、人と話をすると、問題意識が強くなる。と同時に、読書で自分の考えを深めていくことも大事。勉強が忙しいと思うけど、いい本を読んでいってね。

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