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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   衰弱したアイデンティティの   えにほ

今週の課題の文章はアイデンティティに関するものです。これは日本語で簡潔、かつ分かりやすく説明しにくい概念で、著者は個人のアイデンティティが確立されてない場合に陥る病理的な 「清潔願望」を例に上げ解説しています。たしか何十年も前に日本語の辞書で引いた事があり、 その時「自己同一性」と云う漢字を読んで、何とも答えになっていないと思った事を思い出します。今回、アイデンティティと云うカタカナを含んだ題名と面と向かい、改めて、この概念もかなり日常の日本語に侵入しているのではないかと推測しています。 Googleで検索してみると、「アイデンティティ」はアメリカの心理学者エリックソンが50年代後半から60年代に提唱した概念である事を確かめました。アメリカの近代化にそって発展した自己形成の概念と云う事だと云うことでしょう。 つまり、私達は社会から孤立して、自分と云う存在をゆるぎない物として確認することはできない。さらに、他者と関わり、自分以外の他人、社会の慣習に影響され、影響する事によって、自分と云う存在をかたどっていくと云う事だと著者は言っています。また、精神医学者ロナルド.D.レインの言葉を借りるならば、私たちは「他者に及ぼす『効果』によって、じぶんが何者たるかを教えられる」と言えるでしょう。 自分がどんな分野で活躍し、社会でどんな役目をするのかは、結局,個人の選択です。社会人としての「アイデンティティ」は自分が前向きに周りの環境に対応しながら作っていくものでしょう。つまり、「アイデンティティ」とは、多くの人が毎日職場、家庭、学校でいろいろ問題点や課題をみつけて挑戦している間に築かれている物です。

一つ目の例は、今現在私が職場て経験している事です。今,英語圏の大学でかなり熱心に展開されているのが、もっと学生の学習過程を先行しようと云う動きです。教える方の重要性でなく、学生は、はたして習うべき物を習っているのか?と問う事で始まります。一般に、大学の講義は講師や教授が一方的に話を展開し、学生は頑張ってノートを取るのが決まったパターンになっているのは洋の東西も同じです。そこで、多くの大学のキャンパスでは、幾つかの学生の学習過程を助ける教授法のワークショップが行われています。案の定、すでに自分の位置を確立された先生方にはあまり人気がないようです。期待できるのは、教え始めて10年以内のまだ聞く耳を持っている人達です。学生の学習重視と云う点では図書館の司書である私も、とても興味のある動向です。私も一方的な図書資料説明の講義の仕方をなるべくやめ,学生の学習していることに関連できるようにしたいと思っています。うまく関連させるには、図書館の講義をするタイミングも重要で、クラスを教えている講師や教授との打ち合わせがとても大切になってきます。講師や教授が学生の学習過程を巧くつくるための協同作業と云う認識があった時に,私の方の講義の準備も巧く行く様に思います。私の働く大学、図書館ではそんな協同作業のできる環境はまだまだ不十分。図書館の同僚、そして,講師や教授との 横の繋がりが必要になってきます。そんな環境づくりも私も進んで作っていこうと思っています。具体的な案を持って同僚また教授陣と協力し意見を交換しながらやれば,私の司書としての幅も大きくなるでしょう。

二つ目の例は、私の友達、トロント在住太鼓奏者、ギャリー永田氏の話です。
彼は日系三世で,彼の太鼓歴は12歳から始まりました。大学を卒業して,一年東京のある太鼓グループと練習した後,有名な鼓童で一年特訓生活を経験。レギュラーのメンバーとして受け入れられましたが、カナダに戻って活動する事を決心し,佐渡島を後にトロントに戻ってきました。それ以来,地道にソロの活動を行い、トロント大学付属の音大で和太鼓を教え、5年前にはグループ、Gary Nagata Ensembleを発起しました。この秋二枚目のCDを発行したところです。 日本から帰ってきたばかりの時は,鼓童で鍛えた技術と優れた音楽感覚を持って帰ってきました。しかし、はっきりした型で彼の音楽を表現するまで時間がかかったようです。それが、この10年で地道な努力と経験を重ねた結果、 彼と彼の太鼓グループは北米でかなり知られる存在になりました。 今年はイタリーの2度講演旅行も達成しています。彼が、自分達の音楽活動を経営し、音楽作り、新しいメンバ−の育成にも力を入れた結果です。素晴らしい公演活動の裏には,隠れた下仕事が有り,多くの場合彼がやってのけている事も付け加えます。例えば,数年前に仕事と練習と創造活動の拠点になるスタジオを引っ越しした時には、床はりからカーテン付けまで自分でやってのけ、とても器用です。 音大で太鼓を教えるにも,普通の楽器屋さんから調達するこどもできず、大学から費用を貰って、クラス用の太鼓は彼が大量に作った自家製です。 自分のプロ活動、練習用の太鼓に成ると,やはり、日本からスポンサーがあったり、自分で購入したりと、やはり,音にこだわりがあります。ギャリーは、この10年間で北米で存在感の有る「太鼓奏者」と云う「アイデンティティ」を作り上げていったと言えるでしょう。日本から帰ってきた当時の彼と比べるとそれは明らかです。帰国当時、ギャリーのリードでエスニックのジャズバンドをトロントで作りました。インドのタブラ、アフリカの太鼓、エレクトリックバイオリン、シンセサイザーのキーボード,そして和太鼓と、面白い組み合わせで、音楽もなかなかです。活動していた年には、地元の雑誌がトロントであった素晴らしいコンサートの5位の成果が出ています。残念な事に,太鼓の真っすぐで、いきのいい音がどうしても他の楽器の表現としっくりいかず、いかされず仕舞いだと感じでいました。 彼の音楽は北米の和太鼓グループにありがちなアクロバット的な「見かけ」に重きを置かず、あくまでも太鼓の音作りが基礎に成っているのが魅力だと思います。 この10年間、彼は地道に自分の音楽ができる環境を作りに一つ一つ築き上げていったと言えるでしょう。

確かに,いつもハッピーエンドが決まっている訳ではありません。「理想に到達するための手段はまだ、理想への到達を阻む障害である」と言う格言があるように、そんな障害がある時、次に何をやっていくかが大切な様な気がします。人生の障害に対してどのように次の案を作っていくかが肯定的な「アイデンティティ」を作っていく鍵だと思います。

   講評   unagi

 要約と同時に、「アイデンティティー」という言葉の説明、その言葉にまつわる体験談を紹介をしています。主題:「アイデンティティーは個々の環境下で挑戦しながら築かれる」
 理由①「協力体制で好結果」:職場での体験実例を挙げ、一方通行的なやり方を批判し、意見交換などの大切さを説いています。「教師:生徒」の関係のみならず、「司書:教師」という横のつながりまで言及していることで、奥行きのある意見となっています。
 理由②「成功は地道な努力と挑戦の末」:太鼓奏者であるご友人の例を挙げています。「自ら動く」情熱や努力の過程が詳細に、心を込めて語られており、情景が目に浮かぶようです。決して孤立するのではなく「新しいメンバ−の育成に力を入れる」という部分も重要な要素になっています。
 「確かに、いつもハッピーエンドが・・・。」反対意見への理解を示しています。名言と意見の絡みが素晴らしいと思います。この名言が、既製品ではなくまさに最後の1文の主張のために特別にあつらえたもの、といった印象を受けるほどです。
 

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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