対話と個別指導のあるオンライン少人数クラスの作文教室
小1から作文力を上達させれば、これからの入試は有利になる。
志望校別の対応ができる受験作文。作文の専科教育で40年の実績。

昨日2426 今日550 合計52886
作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

小学1・2年生   小学3・4年生   小学5・6年生   中学1・2・3年生   高校1・2・3年生

   清書 (9月)   えにほ

  今回、アイデンティティと云うカタカナを含んだ題名と面と向かい、改めて、この概念もかなり日常の日本語に侵入しているなと推測している。とは言え、「アイデンンティティ」と云う概念は日本語では簡潔、かつ分かりやすく説明しにくい。今週の文章の著者は、個人のアイデンティティが確立されてない場合に陥る病理的な「清潔願望」を例に上げ説明している。たしか何十年も前に日本語の辞書で引いた事があり、その時「自己同一性」と云う漢字を読んで、何とも答えになっていないと思った事を思い出す。早速、Googleで検索し、「アイデンティティ」はアメリカの心理学者エリックソンが50年代後半から60年代に提唱した概念である事を確かめた。つまり、「アイデンティティ」とは、アメリカの近代化にそって発展した自己形成の概念と言えよう。 私達は社会から孤立して、自分と云う存在をゆるぎない物として確認することはできない。さらに、他者と関わり、自分以外の他人、社会の慣習に影響され、影響する事によって、自分と云う存在をかたどっていくと云う事である。また、精神医学者ロナルド.D.レインの言葉を借りるならば、私達は「他者に及ぼす『効果』によって、じぶんが何者たるかを教えられる」と言えるであろう。自分がどんな分野で活躍し、社会でどんな役目をするのかは、結局、個人の選択である。その上、社会人としての「アイデンティティ」は自分が前向きに周りの環境に対応しながら作っていくものでもある。簡単に説明しにくい概念であるが、「アイデンティティ」とは、多くの人が、毎日職場、家庭、学校でいろいろ問題点や課題をみつけて挑戦している間に築かれている物と言えるだろう。

私が今現在職場て経験している事を第一の例に挙げてみよう。今,英語圏の大学でかなり熱心に展開されているのが、もっと学生の学習過程を先行しようと云う動きである。21世紀に入り,やっと教える方の重要性でなく、学生の学習過程重視を追求する傾向が出て来たと言えるだろう。一般に、大学の講義は講師や教授が一方的に話を展開し、学生は頑張ってノートを取るのが決まったパターンになっているのは洋の東西同じである。そこで、多くの大学のキャンパスでは、幾つかの学生の学習過程を助ける教授法のワークショップが行われたりしている。案の定、すでに自分の位置を確立された先生方にはあまり人気がない。期待できるのは、教え始めて10年以内のまだ聞く耳を持っている人達である。学生の学習重視と云う点では図書館の司書である私もとても興味のある動向である。私も一方的な図書資料説明の講義の仕方をなるべくやめ,学生の学習していることに関連できるようにしたいと思っている。うまく関連させるには、図書館の講義をするタイミングも重要で、クラスを教えている講師や教授との打ち合わせがとても大切になってくる。私の勤める大学、図書館ではそんな協同作業のできる環境はまだまだ不十分。大きく改善する余地がある。図書館の同僚、そして,講師や教授との横の繋がりが学習過程重視の授業を多く作っていくのに必要である。そんな環境づくりも私から進んで作っていこうと考えている。具体的な案を持って同僚また、教授陣と協力し意見を交換しながらやれば,私の司書としての幅も大きくなるだろう。

第二の例は私の友達、トロント在住太鼓奏者、ギャリー永田氏である。彼は日系三世で,彼の太鼓歴は12歳から始まった。大学を卒業し,一年、東京のある太鼓グループと練習した後,有名な鼓童で一年特訓生活を経験している。レギュラーのメンバーとして受け入れたが、カナダに戻って活動する事を決心し,佐渡島を後にトロントに戻って来た。それ以来,地道にソロ活動を行い、トロント大学付属の音大で和太鼓を教え、5年前にはグループ、Gary Nagata Ensembleを発起した。この秋二枚目のCDを発行したところである。より一層,自分のグループの成長、未来性を喜んでいる本人である。 日本から帰ってきたばかりの時から,鼓童で鍛えた技術と優れた音楽感覚を持ってるとは言え、はっきりした型で彼の音楽を表現するまで時間がかかったようである。それが、この10年で地道な努力と経験を重ねた結果、 彼と彼の太鼓グループは、北米でかなり知られる存在になっている。 今年はイタリアにも2度講演旅行を達成している。彼が、自分達の音楽活動を経営し、音楽作り、新しいメンバ−の育成にも力を入れた結果である。コンサート後の達成感、聴衆からの拍手喝采、又それ以前の練習、創作活動をするためには、幾つもの下仕事が積み重なっているのを私は知っている。音大で教えるのに、大学から経費を貰い,大量に自家製の太鼓を作ったり,グループの練習、スタジオ環境作りの下仕事なども、ギャリーが殆ど一人でやってのけている。 自分のプロ活動、練習用の太鼓に成ると,やはり、日本からのスポンサーがあったり、自分で購入したりと、音にこだわりがあり、他の北米の太鼓奏者や太鼓のグループとは格段の差をつけている。ギャリーは、この10年間で北米で存在感の有る「太鼓奏者」と云う「アイデンティティ」を作り上げていったと言えるであろう。日本から帰ってきた当時の彼と比べるとそれは明らかである。帰国当時、ギャリーのリードでエスニックのジャズバンドをトロントで作っていた。インドのタブラ、アフリカの太鼓、エレクトリックバイオリン、シンセサイザーのキーボード,そして和太鼓と、面白い組み合わせで、音楽もなかなかのものである。活動していた年には、地元の雑誌がトロントであった素晴らしいコンサートの5位に上げると云う成果であった。しかし、太鼓の真っすぐで、いきのいい音がどうしても他の楽器の表現としっくりいかず、いかされず仕舞いだと感じ、大変残念であった。 彼の音楽は北米の和太鼓グループにありがちなアクロバット的な「見かけ」に重きを置かず、あくまでも太鼓の音作りが基礎に成っているのが魅力である。 この10年間、彼は地道に自分の音楽ができる環境作りに一つ一つ築き上げていったと言える。

確かに,いつもハッピーエンドが決まっている訳ではない。「理想に到達するための手段はまだ、理想への到達を阻む障害である」と言う格言があるように、そんな障害がある時、次に何をやっていくかが大切である。人生の障害に対し、どのように次の案を作っていくかが肯定的な「アイデンティティ」を作っていく鍵である。

   講評   unagi


毎月の学年別「森リン大賞」作品集森リンの丘 
 自動採点ソフト「森リン」で上位になった作文を掲載しています。
 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

作文教室受講案内   無料体験学習   作文講師資格 
Online作文教室 言葉の森  「特定商取引に関する法律」に基づく表示」  「プライバシーポリシー」 
お電話によるお問合せは、0120-22-3987(平日9:00-19:30)