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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   私   ノンキィ

 不思議な、あるひそかな不安を感じながら、私は少年時代に喜びを味わった、なじみの場所を見回した。トカゲを捕まえて少年のころの狩りの楽しみを味わったが、それを持っていてももう幸福感はなかった。私ははっきりと、ここではもう私の本当の喜びが花咲くことはないと感じた。
 私は小学校に入学する前、保育園に通っていた。保育園の園庭には当時の私にとっての宝物がたくさんあった。友達と一緒に一年中青い実をつけたみかんの木で遊んだことも、花壇の端を掘り起こしてミミズを探したこともあった。けれどもこのあいだ同窓会という形でもう一度その庭で遊んだとき、すべてが小さく、どうしようもないもののように思えた。小さい頃の楽しいきらきらした思い出と、現在の私。これから大人になる上で私は、果たしてどちらを大切にしなければならないのだろう。 
 幼い頃の思い出は、その人の人生の土になると思う。就学前にどれだけ自然と触れ合い、一体化して遊ぶか。その経験の量で、土の肥え方は全く異なってくる。それに、幼いときの経験やそのときに経験し見つけたり分かったりしたことが、将来の自分にとって何らかの影響を及ぼすことだって珍しくない。実際にファーブルやナイチンゲール、シュヴァイツァーなど、伝記となって世界中の子供たちに知られている数多くの偉人たちの功績は、幼い頃の体験がもとになったものが多い。だから私は、大人になるからといってそれらの思い出たちとはっきり決別する必要はないと思う。むしろ、きちんと整理をした上で、心の中の宝箱にきちんとしまっておくべきである。次に自分があけたとき、それらのすべてが輝きを放ってはいないだろう。光っていないただの石や、安っぽい光を出しているものの方が多いかもしれない。しかし、その中にひとつでも真の輝きを放っているものを見つけられたら、それが自分の人生にどれだけ強い影響力を及ぼすかはわからない。幼い頃のことが、案外今の自分の人格の形成に携わっていることもありえるのではないか。
 けれど次期に、それらの楽しい思い出に別れを告げなくてはならない時期もやってくる。なぜなら人間は、本人の意思とは関係なく毎年決まったサイクルでひとつずつ年を取って大人になるのだから。いつまでも土ばかり固めているのではいけない。やがて花開く自分のために、種を植えて芽を出させなくてはならない。結局小さいときあれだけ無邪気に遊んでいられたのも、たくさんの大人に囲まれて安全だったからだ。大きくなって、そんな人がいなくなったら、責任は全部自分にある。だからやはり幼少時代のきらきらとはある程度のところで区切りをつけなくてはならないのだと思う。竹から出てきたかぐや姫も、いつまでもおじいさんとおばあさんの保護下でぬくぬく暮らしているわけにはいかない。大きくなって、自立できる年齢になれば月からの使者が迎えに来て月に帰ってしまう。月からの使者が姫を迎えに来たのが、姫の小さい頃でなく求婚の申し込みがくるようになる年であったのはやはり、いつまでも子供のままではいけないという表れだとも取れる。
 つまり、将来自分だけの花をきれいに大きく咲かせようと思うならば、自分自身の幼少時代の思い出をしっかり自覚した上で、それらを取り出そうと思えば取り出せるような、でも容易に手が届かないところに保管しなければならないということだ。「人間は、求めている限り迷うものだ」という名言がある。すべての安全が保障されていた子供時代から抜け出して大人になろうというとき、人は必ず悩み立ち止まるのではないか。いつまでも子供のままでいたいという欲求と、同時に一刻も早く大人になりたいという希望。この二つが心の中で葛藤し、それが反抗期という形で現れるのだと思う。未来に対する期待と不安、でも早く認められたいと思う気持ちは、誰にだってあるだろう。そうして迷って迷って、過去の自分もこれからの自分もどちらも大切に出来るくらい心に余裕が出来たとき始めて、人は年齢や体だけではない本当の意味での大人への一歩を踏み出せるのだと思った。

   講評   nara


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