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　　　とりあえず痛い思いしなきゃいいんだって。　　　えせよ

　一流ホテルのロビーに、いかにもそれらしい一群がたむろしているのは、そこにふさわしい振る舞いをなれない客に見せて学習させるためである。それを何度か体験するうちになんとかそれらしい行動がとれるようになる。しかし一流の世界は奥が深く、客が自らボーイによっていくのではなくボーイの方が呼ばれてそこに行かなければならないのだ。だからといって仕出し屋がやっていたように実践していても気づいてもらえるはずがなく、いろいろな前フリをしてなおタイミングよく行わないと成功しない。だから、成功したときは奥儀を会得したのだと喜びもひとしおだ。そしてその後、ボーイに仕出し屋として働いてくれないか頼まれる…つまりそこにいる「どうしようもない田舎者」と「これこそが都会人」という人はどちらもホテルの仕込みなのだ。このように、人間はその場にあった行動をだまされながら学んでいく。
　その時と場合にあった行動をとることは大切だ。一般とあまりにも違う超越した自分だけの世界をもった方は、うまく社会生活をおくれない。私がピカピカ（なのか）の中学一年生のころ、同じ電車の乗客にちらちら見られている人がいた。くすくす笑いも混じっていたため、好奇心旺盛だった（や、今もだけど）わたしは期待しながら隙間からのぞいたのだ。が、次の瞬間私の目に飛び込んできたのは目にも鮮やかな黄色いカンバンならぬ黄色いハチマキwithわたしとおそろい★の制服だったのだ！電車の中で制服の上にレインコートを颯爽とはおり、凛々しくハチマキをしめたとなりのクラスの不思議なあの子…おなじ服をきていたらその新しい宗教のゆかいな仲間だと思われるだろう！？と思ったわたしは友達と一緒に勇気をふりしぼって「なんで地下鉄でハチマキしてるの？」とたずねたのだ！まじえらい！「もうこれではずすだろう、私たちの勝利だ！ははははは」と思ったのもつかの間…私たちの期待も知らずあっさりと「ハチマキが好きだから」と答えた君のせいで私たちの命がけのチャレンジがあっけなくくずれさったんだよ。つまり、TPOにあわせた行いをしてくださいということです。念のため君には言っておくけどトランクス一丁でパンツかぶったおじさんじゃないからね？
　しかし個性をもつことも大切だ。竹取物語でかぐや姫は「火鼠の皮衣」をとってこいと貴族の御曹司をパシった。しかし、そのときのネズミたちがみんなやる気のない醒めきったやつらで、みんな同一の遺伝子をもっていてしかもそのDNAが火鼠的なものだったらまぁ大変である。そのへんの汚らしいところで簡単にネズミをつかまえたおぼっちゃんは「ヒャハー☆かぐや姫ったらほかの奴等のは実在しないものを指定したくせにぼくちんのだけこんなちょろいのにするなんてやっぱり僕のこと好きなんじゃぁ〜ん☆★もぉ〜う、てれやさんなんだ★か★らぁぁ★★」などと首をしめたくなるようなうざったい勘違いをした挙句わけのわからないテンションに無理やりひっぱられて結婚させられただろう。その時代のネズミたちが個性を求めていて本当に良かった。しかしきっと未来のネズミたちはだんだんミッ●ーマウスに近づいていくに違いない。だってあれが一番楽だもん。
　個性をもつか持たないか、どっちもどっちな気がするが、それって幸せに生き抜くために本当に大切なことなのか。そんなことは人生の一部分にすぎないのに、この個性の問題は無限ループして限られた時間を果てしなく無駄にする危険性をはらんでいる。だからそれをかんがえる時間を自分にとっての幸せにむかうための努力にあてたり幸せって何だっけと細木●子といっしょに考えたりそして時に迷ったら自分を探そうと試みるたり…これらをおこなうために個性が必要になったときだけひっぱりだしてくればいいのだ。

　　　講評　　　miri