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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   謎の深海魚   えせち

 深海に棲む生きたチョウチンアンコウが偶然に発見され水族館で8日間生きた。おかげで発光するメカニズムを観察することが出来た。日本近海は知られていない謎の生物がたくさんいる宝庫であり、研究者は発光魚を含む深海魚を水族館で見られるように挑戦してきたがまだ前途遼遠である。これだけ科学が進歩していながらうまく飼育できないというのは不思議な気がするが、やはり人工的な環境よりも本来棲息する場所で自然に過ごすことがいちばんいいのだろう。
 ぼくの住んでいる近所に水族館がある。人工的でありながらなるべく自然に近い環境を作ってもらい生き物は生活している。その魚たちがしあわせであるかは測り知れないが少なくとも動物園にいるライオンや象よりましであろう。人間に庇護され生きてきた動物を今アフリカの大地に返そうと試みたところでそれこそ酷な話である。しかし訓練次第では本能を呼び覚まし、うまく適応していくことも可能なのかもしれない。だがそこには厳しい弱肉強食の世界がまっている。そんな中で不運にも短い一生を送ることと安全な場所で無刺激に一生を送り続けることはどちらが幸福とよべるのであろうか。ぼくは前者の方がしあわせなのだと信じている。また人間よりはるかに劣る能力ながら一生懸命に適応し生きていこうとする姿にエールを送りたいと思う。
 その水族館の一角に深海といわれるなかでも水深が浅めに生息する生き物のコーナーがある。水槽の中は真っ黒く光も差し込まない空間でそこにはゆっくりとまるで浮遊しているかのように深海魚が泳いでいる。そのユニークかつグロテスクな形態はお菓子や飲料水のおまけについてくるフィギュアのモデルになれそうだ。人間が決して立ち入ることができない奥深い海底8000mまでも生き物は生息するらしい。その暗黒・高圧・低温・広大かつ過酷な世界にも懸命に生き繁栄している生物がいると思うとそれだけで息苦しいが興味深々である。図鑑でみるそれらの中には真っ暗闇の深海でつねに上を向いて暮らすもの・双眼鏡のような眼を持つもの・眼がなくなったかわりに光を感じる器官が頭の上に発達したものもいる。またチョウチンアンコウのように光を発するものは結婚相手を見つけるためや餌を誘い寄せるために発光器を光らせる。餌の少ない深海では長く鋭い歯が口に並び捕らえた餌が逃げられないような仕組みになっている。このようにそれぞれのエリア内で環境に適した形態を保持していく為にさまざまな工夫がなされている。
 人間は水圧の関係でとうてい潜ることの出来ない世界。そんな光が届かない世界で生活している深海魚にはまだまだ解明されていない種類もいることだろう。それゆえ宇宙のように神秘的なものさえ感じることができ空想の世界が広がっていく。どんなに図鑑で眺めていても百聞は一見にしかずというように未知の世界をこの目でじかに確かめてみたい。反面、見てはいけないひっそりとした領域として永遠に静かに見守ることも必要なのかもしれない。

   講評   hamura


 動物をアフリカに返す試み、ということを、聞いた話や調べた話として引用した書き方(・・という話を聞いたことがある。等)とすれば「題材」のマークが入ります。又こういう書き方の方が、読んでのみこみやすいです。ただ、この動物の話は大変面白く意見文としてしっかりしていますが、今回の作文ではない方が、水族館の話だけでまとまっていいでしょう。といっても、とてもすばらしい文章なので、ぜひ、別の機会に論じてほしいと思います(割愛!)。「ぼくの住んでいる近所に・・」から水族館の段落に飛びます。ここからの描写力が見事です。「深海・真っ黒・ゆっくり・浮遊・ユニーク・グロテスク・暗黒・過酷・・・」すべての言葉がひとつの雰囲気の中に収まって、この場面に効果的な空気を作っています。次々とこれらの言葉が出てきたのは立派です。読みながら私も薄明かりの水族館を歩いているような気分になります。次の段落でこの感覚を「神秘的・ひっそりとした領域」という、ぴったりの言葉でまとめられているので、読者は迷うことなく航之介君の提示した主題に導かれます。よくできました。


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