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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   コトバの曖昧さ   うさぴょん

 コトバの共通理解について、深く考えたのは、スイスの言語学者のソシュールである。ソシュールはまず、コトバの表記はいい加減であると言う。多くの人は、世界にあらかじめ何らかの実体があって、それに名前をつけていると思っているが、ソシュールは次のような主張をしたのだ。たとえば、イヌとかネコとかの実体が、あらかじめ世界にあって、それに対してイヌとかネコとかの名前をつけているのではなく、イヌとかネコとかの名前がつけられて、初めて、イヌとかネコとかの実体があるかのように見えるのだ。
 スイスはジュネーブに生まれた言語学者のソシュールは「近代言語学の祖」と呼ばれ、言語の起源や歴史が言葉を成り立たせているのではないという考えを持っていた。池田清彦氏の文にもイヌやネコを使って載せられているが、言葉には先に名前があって、後から実体が追いつくのだという。同じく池田氏の例を参考にしてみれば、虹の例があげられる。<長文実例>一般的に私たちは虹の色を7色だと言うが、他の国では2色だと考えるのだ。どちらが正しいという真実は見つかっていない。だから指し示す言葉が多ければ7色になるし、2個しかなければ2色になるわけである。同じようにチョウという言葉もそうなのだと聞いた。
「チョウと蛾のどっちが好き?」
なんて質問をすることがあるかもしれない。日本人は「チョウ」と「蛾」を分けて考えるからこのような質問がでてくる。けれども、外国では分けないところある。ともすれば、この問いは相手にとって意味をなさぬものとなる。つまり共通の語がないために通じないのだ。
「チョウも蛾も一緒じゃん! 」
しかし、同じ言葉でなくとも分かるときもある。その良い例が「あれ」とか「それ」などという言葉である。私はよく
「あれとって!!」
「それどうするー?」
などと喋ったり話しかけたりするが、相手には9割方(笑)通じる。これは相手も同じことを考えている、あるいは同じ意味を持つ言葉になっているのだ。今「あれ」というのは「醤油」で、「それ」というのは「社会のグループ課題」だが、次の瞬間になればまた一変する。「あれ」は「体操着袋」、「それ」は「部活の実験」。こんな風に時と場合、ケースバイケースでうつっていく。けれどもこれだと何か通じないこともあるし、勘違いしたまま物事が進行してしまうことがある。だから私は言葉の意味をちゃんとすべきだと考える。<是非の主題>そう考える一つの理由が今あげた、「あれ」「それ」が指す意味の転変である。<複数の理由一>
 第二に話が曖昧になるからだ。日本語は話の焦点をぼやかすのがとても得意で、お茶を濁すことも簡単だ。とても身近なことで例えてみる。
「宿題やったの!? 」
と、のんきにだらだらとテレビを見ている娘を睨みながら
「う〜ん・・・。」
やってないのだかやっているのだか、多分前者なのだろうが逃げようとしている姿勢は見え見えだ。他人事のようなフリをしているが実は自分だったりする(笑)<複数の理由二>
 だがしかし、日本語の整理をすることに悪い点も多いような気がしてならない。普段話している言葉をみな数式や元素記号のように型にはまったものにしていたら面白みが無くなる。また、メールやおしゃべりをしていても話せなくなる。分かりやすい会話を目指していたというのに、コミュニケーションがとれなくなってしまうのではないだろうか。だからやはり、日本語の持っている柔らかさや曖昧さも欠かせないのだろう。<反対意見>
 だから、意味を正しく理解し、用法用途をしっかり守って、日本語特有の柔らかさを生かして話していく、あるいは書いていくことが必要だ。また、誤解されるところを逆手にとって、冗談を言ってみたり言葉遊びをしてみたりすることもいいだろう。言語の欠点をも逆転の発想に使いながら、うまくしゃべりこなすことが大切だ。

   講評   nara

 難しい長文だったね。「犬と名づけたから、犬として認知された」ということが延々と述べられている。犬・ネコだと一般的すぎるかな。例えば、日本人が雨をとても細かく分けているけれど、雨の降らない地域では、分けようにも無理がある。どれだけ細かく分類しているか、差異をどれだけ見出しているか、ということなのだね。世界(対象物)を大きな目の網でふるうか、小さな網目でふるうかということかな。
 複数理由は、具体例もわかりやすいし、「意味の転換」「意味の曖昧化」という端的な表現も見つかったことで、説得力が高まったね。ハイ、だらけた娘を睨んでいる母のシーンは、うまくアクセントになっている。笑っている場合か!?(笑)
 この作文のよさは、反対意見の部分にある。複数の理由とのバランスがいいね。複数の理由を示して主張した「言葉の厳密性を重視する」という意見と同じくらい説得力のある意見だ。つまり、相対する2つの意見は、択一されるべきものではなく、総合化されるものである、ということね。これは中2レベルの【主題】の課題になっていることだよ。
 テーマが「言葉」だったから、表現のキーワードが入っているように見えるけれど、名言の引用はなかったね。珍しくチェックミスをしてしまったようだ。 

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