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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   あそびの大切さ   えほる

一.子供は、あそびを通じて倫理の基本的訓練をする。想像性が創造的活動につながっていく。この空想の世界は、審美的感情の発達と密接に結びつき、新しい精神の世界を生み出す基礎能力となる。大人はなるべくこの芽を摘んでしまわないように、むしろ子供から学ぶようにすべきである。学校の国語教育や作文の授業はきわめて大役な役割を持っている。私は、あそびがいかに子供にとって大切かを考えてみたい。
二.あそびは原始的だから必要でないという人がいる。ままごとや折り紙、かくれんぼ、その他の玩具は、大人の目から見ると、これといった目的が不明で、何か意味があるのかというわけだ。それに、たいてい玩具は、すぐ飽きて不要品になるので、コストも高い。折り紙を折ったり、玩具で遊んだりするよりも、パソコンを習わせた方が役に立つように思う。しかも子供用のパソコンでなく、大人用のパソコンを与えた方が、ずっと使えて結局割安になる。また、子供は記憶力が良いので、遊びよりも先に、社会に出て役立つようなことを覚えさせた方が効率的であるという意見である。私がまだ幼い頃、ピンク色のおもちゃのエレクトーンが欲しいと親に言ったことがある。次の日部屋には、大人が使う大きなピアノが置いてあった。自分の小さな小指が鍵盤のソの音にとどかず、小指を寝かせて音をつなぐように弾いていた。が、ピアノの先生から、小指を立てるようにと何度も言われた。幼心に指が届かない自分を責めるようになったのは言うまでもない。のちに、ピアノのふたを開けることもなくなった。(体験実例)
三.あそびは大切である。前述の意見は結果主義の考えが基礎になっている。子供には大人になるまでの過程が大切であるので、結果や成果を第一に考えるのは、教育上好ましくない。ひとつひとつの経過があってこそ、結果が出るのである。結果だけを求めるのは、それは宝くじを買うのと同じである。子供の教育とそれを同じにするのは筋違いと言うべきである。昔話「こぶとりじいさん」では、ほおにこぶのあるおじいさんが道に迷い、鬼の宴会に出くわす。とても楽しく鬼たちが踊っているので、ついおじいさんも踊り出す。おじいさんの踊りが気に入った鬼たちは、後日会う約束の代わりに、こぶを持って帰る。この話の中で、おじいさんが鬼に気に入られるほど上手に踊れるのは、幼い頃からその楽しさを知り、老年になるまでずっと踊りの練習をし続けていたからであろう。踊ることは、今のおもちゃの替わりであったのだろう。踊りというあそびが功を奏して、おじいさんにとって不快なこぶをとってもらうことになったのである。このようにあそびが人生の中で大きく役に立つことはよくあることだ。
四.確かにあそびには、社会に出てから求められるような効率性や成果主義はない。それに、子供の記憶力はよいので、大人になってから学習するよりも、子供のうちからやらせた方が成果は出るだろう。しかし、人間は記憶力だけで生きてゆくわけではないし、効率性を求めるのなら、人間でなく機械に任せた方が良いだろう。あそびから生まれる楽しさは、無垢な子供の心に想像力や社会性、感受性などをはぐくむ。これらの能力は、偏見を持たない子供の頃でしか発達しないのである。「新しき物は概念より生まれず、心より生まれるものこそ永遠なり」は岸田劉生の名言である。既成概念から生み出されるものは一時的なはやりに過ぎない。岸田劉生のいう「心」とは、想像力や社会性、感受性などを指すのであろう。さあ、今子供たちの心を育て、先の世代に残すことのできうる永遠のものを生み出していこうではないか。それが、今生きる大人たちの使命であろう。

   講評   baba

 書けそうで書けないテーマは難しいですね。けれども、課題文の核となる問題意識を正確に把握し、自分の意見を論述している点がおみごと!
<第一段落>
 内容を的確にまとめてあります。長くもなく短くもなく、ちょうどいい分量です。要約につなげて、あそびの重要性についての検証という問題提起をしている流れもいいですね。
<第二段落>
 意見のその一、「あそびは原始的だから必要でない」という意見が体験談をそえて提示されています。現代日本社会の基準「合理性、生産性、効率性」を問題の根底において論を展開していますね。鋭い問題意識です。体験実例も効果的に使えています。
<第三段落>
 意見のその二はその一に対するもの「あそびは大切」という意見を提示しました。ここでもまた現代日本社会の特徴「結果主義」を背景にして論述している点がすばらしいです。どんなテーマも、現状とつきあわせて考え論じることが大切です。それがしっかりできていますね。昔話もうまく使えています。(ただし、おじいさんが子どものころから踊りを練習し続けてきたかは不明 ^^)
 でも、子どものころに夢中になったあそびは、けっこう意外なところで役立ちますね。勉強したもののほうが役立たないかもしれません。反対に英語や数学など使わなければ忘れてしまう—無理に勉強したものってすぐ忘れちゃうんですよね。
<第四段落>
 総合化の主題、と言いたいところですが、反対意見への理解になってしまいました。総合化の主題は、意見Aと意見Bをまとめることです。似ているようで微妙に異なるのです。あそびにはメリット、デメリット(役立たないこともあるし、役立つときもある)があるというようにするとよかったでしょう。
 名言は論の流れにそってうまく使えています。結びの文もいいですね。

☆<意見A〜意見B〜意見C>が論理的にすこしずれています。「遊びは不要」という意見に対するのは「遊びは必要」、そして最後に「やっぱり遊びは重要」と、一見「ふむふむ」となるのですが、よく考えてみると「遊びが大事」という意見に説得力をもたせるためには、「感受性や想像力がなぜいいのか?」という問題に答えないといけません。ここまでつきつめるのは確かに難しいことですが、読み手を納得させるだけの根拠を提示していくことは重要ですので、ちょっと気をつけてみてください。それができると文句なしの論展開になります。でも、今回の作文は十分に完成度が高いです。さすがですね!

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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