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　　　ＰＨＯ　　　いすも

「今日はフォー食べに行く日でしょ？　早く行こうよ！」
私は今、「フォー」にはまっている。毎月一回は家族全員で食べに行く料理であり、私なんか日本食よりも美味しく感じるほどだ。
こちら、カナダのバンクーバーは、マルチカルチャーな国なので、世界中の食べ物がたくさんあり、日本食、中華料理、インド料理、ベトナム料理など、たくさんの料理を楽しむことができるのだ。さて、このフォーという料理はベトナム料理の一つで、牛のだしのスープの中にライスヌードル、しゃぶしゃぶのような生焼け牛が乗っていて、もやし、スパイス、ライムを混ぜ合わせて食べるものである。日本のラーメンに見た目はちょっと似ているが全然違う。そして本当に美味しい。生焼け牛をスープの下へ押し込みながら、こんがり茶色になるのを待ちながら食べるライスヌードル。口に入れると、だしとスパイスが絶妙に合っていて、まるで天国である。その上にライムやスパイスの臭いがプーンとするのだ。最高。こんな美味しい食べものは世界中どこ探してもないだろう。フォーは私が一番好きな料理である。
　さて、今はこんな大好きなフォーも、実は、初めて食べたときは大嫌いであった。
はじめてフォーを知り、食べた時はカナダに来て間もなく経った時。私達家族は毎日日本食を食べていたのでたまには新しい食べ物に挑戦することにした。ベトナム料理なんか食べたことも、頼んだこともなかった私。当然食べ方も、頼み方も知る訳が無かった。母が、ベトナムはフォーという料理で有名なんだよ、と言ったので一応フォーという料理を頼んでみることにしたが、不安で仕方が無かった。どんな料理が出てくるのだろう、本当に美味しいのだろうか、日本のラーメンみたいだったら良いけどな、などと色々考えていた私。しばらく経って、ついにフォーが出てきた。想像していた料理とは全然違った。肉は半分生で、もやしやライムまで入っているではないか。しかも、なんか変な見たこともないような物がたくさん浮いているではないか！本当にこんなもの食べれるだろうか、と思って食べたところ、私は一口食べた瞬間気持ち悪くなってしまった。まずかった。肉も生だし、ライムが酸っぱくて、全然スープのだしに合わない。全然食べれなく、申し訳なかったが、次の日は腹痛のため、学校に行けなくなってしまった。あのフォーのせいだ、せっかく学校にも慣れてきて楽しくなってきたのにフォーのせいで学校行けないなんて、などその日はフォーを恨むしかなかった。
さて数日後、またもや母が変なことを言い出した。
「あいちゃん、ともちゃん、辛いものは好きでしょ？あのね、フォーに辛いフォーがあるんだって。食べてみようよ！」
フォーと聞いただけで、気持ち悪くなった。もうフォーはこりごりだって、母にも言ったはずなのに。絶対嫌だった。だからといって、私の母も父も行く気満々である。嫌だ嫌だと抵抗しながらも、私は車に詰め込まれた。違うベトナム料理屋へ入った。不安ながらも早速母が言う「辛いフォー」を頼んでみることにして、身震いしながら、料理が来るのを待った。運ばれてきた時、最初食べたフォーよりも見た目がずっとましであった。もやしもライムも入ってなく、別皿に出てきた。フォーの中は刻まれた赤唐辛子と生肉、スープとヌードルが入っているだけだ。問題は味である。こわごわとひと口スープを飲んでみた。あれ？辛いけど美味しいではないか。フォーってこんなに美味しい料理ではないはずだ。ぱぁっと気分が楽になった。肉も固まってから食べたら本当にだしが効き、美味しかった。母の言う通りであった。フォーは食べ方が分かればそんなにまずい食べ物ではなかった。
私が無言でもくもくと食べ続けているのを見て、母親が得意げに「ね、美味しいでしょ？」と満足げに言った。辛くってひいひい言いながらも美味しくって、全部食べてしまった。それから私達家族はその辛いフォーにはまってしまい、現在に至るのである。
　さて、これは聞いた話ではあるが、私の祖母は料理が得意だ。特に彼女の作るおにぎりは美味しい。死んだ祖父は料理に関しては口うるさい人で、決まった料理しか食べなかった人であったが、私の祖母が作るおにぎりは美味しい、美味しい、と言って食べたそうだ。私も本当に美味しいと思う。ギュ、ギュ、と一粒一粒押しつぶされた温かいお米の中にかつおぶし、梅干、醤油を混ぜ合わせた具が入っているおにぎりは世界一美味しいのだ。私の母も私の祖母が作るおにぎりを作ってみたかったそうだ。それで、早速私の母は祖母から作り方を教わったものの、出来たおにぎりの味は違ったらしい。私の母は、おにぎりぐらい簡単に出来るよ、などと言っていたのにも関らずあの「おばあちゃんのおにぎり」の味が出ないのである。おにぎりは単純なのだが、握り方、塩加減、そんなことでも味は変る。それだけに奥が深いのだろうか。日本全国各家庭でそれぞれおにぎりの味は違い、その家族はその家のおにぎりの味を一番好むのだと思う。
　話はフォーに戻るが、フォーもベトナム料理の中では最もポピュラーなものだという。日本のおにぎりのように、フォーも各家庭や地方で味付けや具も違うのだと思う。バンクーバーには数え切れないほどのベトナム料理店があり、これからも色々な味のフォーを試して食べ歩いて行きたい。
「今日のフォーはチリスパイスをどれぐらい入れようかなあ…」

　　　講評　　　hutu


進級テスト合格おめでとう。字数もばっちり。項目表にも注意して良い作文をしっかり書くことができました。
＜書き出しの結び＞　書き出しに工夫した表現を結びにも活かすことができています。
＜前の話聞いた話＞　フォーとの出合いについてくわしく書くことができました。愛咲さんにとってはかなり印象深い出会いになってしまったようですね。ベトナム料理を食べたことのない先生にとってはスパイスとライムの組み合わせが全く想像できません（笑）。

　おばあさんのおいしいおにぎりの話。なぜおばあちゃんのおにぎりは同じお米を握っているのにおいしいのでしょう？　永遠の謎だと思いませんか？　先生の祖母もとてもおいしいおにぎりを作ってくれました。自分がおばあちゃんになったときにあんなにおいしいおにぎりを作れるのか！？　先生には自信がありません。愛咲さんもちょっと練習してみてくださいね。
★　「カナダに来て間もなく経った時」→　「カナダに来てまもなく」、「カナダに来て少し経った頃」とするほうが自然な表現です。
＜一般化の主題＞　大きくとらえてまとめることはできています。「人にとって」「一般的に」など項目表にあるキーワードを入れるように心がけてください。
★　（書き出しの結び）　（一般化の主題）　など、項目表のキーワードを文章中に入れることが難しい場合は、該当部分に注意書きのように書いておいてくださいね。