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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   「旅」の意味   はる

 「春立てる霞の空に、白川の関こえんと、そぞろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神のまねきにあひて取るもの手につかず、云々」
松尾芭蕉『おくのほそ道』に出てくるあまりにも有名なこの文章は、旅が日常性を越えた異次元への飛翔ともいうべき側面をもっていることがよく示されている。日常の惰性的な生活の中で閉ざされた私たちの心を、旅は開かれた、予感に満ちたものにする。しかしそれは、旅に出かけるとき、旅立ちに際してだけのことではなく、旅をしている限りいつでもいえることである。旅先で見たものや聞いたものは、しばしば私たちに新鮮な驚きを与え、旅先で出会った出来事はしばしば私たちに強い感動を与える。旅に出ると人は誰でも「芸術家」になり「詩人」になるといわれるのも、そのことを指している。よく「自分探しの旅」や「旅で素の自分に戻す」などといった言葉をよく耳にする。旅によって得られるものは計りしれないのだ。私たちは、もっと旅をすべきである。(第一段落 要約・意見)
 まず、何にでも新鮮な好奇心を持つことだ。「好奇心」と聞くと、根掘り葉掘り穿鑿する精神だとか、余計なことまで首を突っ込むだとか、マイナスのイメージが強い。しかし、好奇心を持つことによって、人は知識を増やし、また、生きる力へと繋がることもある。私は、母方の実家へ帰省した際には、必ずその待ちを探検する。探検といっても、自転車で祖父母の家を中心に色々な角へ入っていくだけで、行動パターンはだいたい決まっていた。しかし、一度、奥へ奥へと進み過ぎ、本格的な迷子になってしまったことがある。ある角へと入っていくと、誰も住んでいないような屋敷があった。ペンキは剥げきってしまい、屋敷の作りも何だか変わっていた。いつもなら気味が悪くなって引き返し、また違う角へと入ってみるのだが、その時は何を血迷ったのか、“もう少し先まで進んでみよう”と思い、自転車のペダルをこいだ。すると、一軒家ばかりが軒を連ねる、細い住宅地へと繋がった。ある家では、庭で焚き火をしており、これはいい目印だと思い、更に進んでいった。次に子供たちが野球をして楽しんでいる情景が目に入った。小さなグランドだった。目立つ目印が沢山あったので迷わず帰れると思い込み、私はぐんぐん進んでいった。そろそろ帰ろうか、と引き返し始、グランドを通り過ぎ、住宅地に入った。しかし、どうも来た道と雰囲気が違う。第一、焚き火をしている家がない。同じ場所を何度もグルグルしながら、自分の勘を頼りにペダルをこいぐこと約20分、やっと焚き火をしている家を発見できた。探検に限らず、私は今までも自分自身の勘のみでピンチを切り抜けてきたことが多々ある。でも、時には勘だけを頼りに外を歩く—旅をしてみることはいいかもしれない。予定通りに進めていくツアーでは体験することができない、素の自分のようなものを発見できるからだ。(第二段落 方法1・体験実例)
 また、若者が旅に出やすい環境を作ることである。江戸時代、日本はかたくなに鎖国を続けてきた。それによる利点もあるのだが、やはり世界から見ると日本は米粒より小さい。大きさで見て、日本が米粒以下なら、思考力、想像力、また、創造力など、なにからなにまで米粒以下なのである。明治時代になり、そんな米粒から抜け出す若い知識人は沢山いた。文学部門では、夏目漱石や森鴎外、そして音楽部門では滝廉太郎などが代表的人物である。彼らは、米粒・日本では得られない、または想像もつかない多くのことを吸収してきた。そして、その実績ともいえる偉大な作品を数多く残しており、現代でも大切にされている。彼らは「留学」したのであるが、これは同様に「旅」をしてきたともいえる。(第三段落 方法2・歴史実例)
 確かに、日常生活を大事にするという考えもわかる。しかし、人間は環境の変化によって精神も活性化する、といわれている。旅をするということは、楽しんだり、癒されたりするだけではなく、自分自身を見つめ直し、また、新たな自分や素の自分を発見できるものである。「思い立ったが吉日」—今からでもちょこっと足をのばしてみてはどうだろうか。(第四段落 反対理解・自作名言)

   講評   tama

 旅をすることで新たな自分を発見できたり、また忘れかけていた大切なことを思い出すこともあります。自分自身の原点に戻ること、知識だけでなく五感をすべて働かせ、人間としての本来の姿を取り戻すことができるなど、「旅」によって得られるものは大きいのだという実感を込めて書くことができました。

【複数の方法・実例】 好奇心を持つこと、旅に出やすい環境を作ること、という方法を考えることができました。時間にすると短いかもしれませんが、知らない土地で迷子になるという体験は、はるさん自身にとっては大事件だったことでしょう。しかしそのピンチを一人で切り抜けたことが大きな自信につながり、新しい自分の発見につながったのではないでしょうか。
 明治の偉大な芸術家たちの実例も、文章にうまく溶け込んでいます。

【反対意見への理解・自作名言】 たしかに日常生活をおろそかにしたり、旅を単なる現実逃避にしてしまうことは、かえってマイナスになります。自作名言できちんと意見をまとめたところはさすがです。結びの文が「粋」ですね。


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