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　　　狂気　　　かせり

　私は「エジソンの母」という番組を毎週見ている。主人公の男の子は世間ではただの「バカ」にしか見えないが、実はエジソンのような天才である。彼は毎日いろいろな実験をし、まわりの大人たちをひやひやさせている。休み時間に「人間も空を飛べるかもしれない！」と言い出し教室の窓から飛び降りたり、「地球が滅びてしまう！」といいどうやったら地球を救えるか考えていたため宿題をやってこなかったり、というように。彼にはきっと「狂気」があると思う。そして、一見普通にみえる私達にも「狂気」はあるのだ。しかし、ただ一つ違う点は彼はいつも「狂気」が持続しているということだ。私は狂気は必要だと思う。
　第一の理由に、狂気という集中力がなければなにかを成し遂げることができないからだ。私のクラスには少し変わった男の子がいる。彼はべつになんの病気もないし、普通に皆と一緒に勉強できる。しかし、運動は全くといっていいほどできないのに、作文や読む力は私達より倍ぐらい高い。先日、放課後図書室に本を返却しにいくと、そのこがイスに座り本を読んでいた。私は、彼のまえを通り過ぎるときに、「何の本を読んでいるの？」と聞いた。すると、彼は返事をせず、本からも目を離さなかった。そのときの彼の集中力は例えようのないものだった。まばたきもせずにパラパラとページをめくり、息もしていないかと思うほどだった。このようなことを「本の世界に引き込まれる」というのか、と私は納得してそのまま図書室を出て行った。彼はきっとこのような「狂気」があるから大人のような文章が書けるようになったのだと思う。
　第二の理由に、平凡な毎日ではつまらないからだ、ということがあげられる。毎日、朝起きて学校や会社にいき、帰宅し寝る、という暮らしでは誰でも飽きるだろう。たまには昼ぐらいに起きて買い物に行き、パーティーにいったりもしたいと思う。現在のデータによると４０代男性のストレス解消法の一位はお酒だったという。人はお酒に酔うと「狂気」が現れてくる。そのことが分かっているのにお酒を求めてしまうのは平凡な毎日にちょっとした刺激が欲しいからではないだろうか。大人たちが飲み会をするのは普段は真面目でなにもプライベートの話をしない人をお酒で「狂気」を出させ、楽しくするからだ、という文章を新聞で読んだことがある。お酒で酔ったりするのは良くない、と言う人もこのような「狂気」を求めているのかもしれない。
　確かに、冷静な判断も必要だ。しかし、「行動するためには、多くのことに無知でなければならない」という名言のように何かを成し遂げるには「狂気」が必要だと思う。今まで偉大な発見をした科学者達のほとんどはこの「狂気」があったのではないか。エジソンやアインシュタインは小学生のころに授業についていけない、といわれ学校を辞めさせられた。夏目漱石は「うつ病」だったともいわれている。このように、立派な発明をするときにも「狂気」は使われているのである。

　　　講評　　　tama

　私たちは、日々の生活に安全、安心を求めるのと同時に、変化を好みます。毎日が平穏に過ぎていると、だんだん退屈になってくるので、常に夢中になれる「何か」を探しているのですね。
　同じクラスの男の子の、集中力に関する実例は、とてもおもしろいです。かせりさんの言うとおり、夢中になれるものを持っているからこそ、その分野に秀でているのでしょう。こういう人を、変わり者だと言いながらも、実は少しうらやましく思ったりすることもありますよね（笑）。
　ストレス解消法のデータも、上手に使えています。的確な意見と、鋭い考察力で、主題と結びつけることができました。（同じストレス解消法でも、年齢や性別によって全く違うことも興味深いと思います。）エジソンやアインシュタイン、夏目漱石などについての例も取り入れ、きれいにまとめることができました。