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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   血の通う人間関係を   ノンキィ

 近年の子どもたちは他者に無関心である。これは大人に対しては根底的な不信の感情として現れる。また、自然に連なるものの世界がますます子どもの世界から消滅しつつあり、彼らは言葉という道具によって自己や世界を構成する作業が出来なくなっている。
 昨日、夕食後に母がテレビをつけた。日本の未来について専門家から教師、主婦まで実に幅広い分野の代表者らと子どもたちが共に討論してゆくという番組で、なかなか興味深かった。その中でも特に私の心をひいたのが今日の子どもたちの携帯電話使用についてのVTRだった。中学生のある女の子の日常をまとめたものだったが、なんとその子は一日のメール送着信数が260余件、しかもそれが‘普通’なのだそうだ。耳を疑ったが、考えてみれば私の周囲にもにわかに信じがたい携帯料金の子が大勢いる。かくいう私も携帯電話で友だちとメール交換をするのは好きだけれど、せいぜい一日平均五件ほど。相当なカルチャーショックだった。現代の日本では、人間関係の希薄化が度々論議に上がる。もちろんその原因は多岐にわたるだろうけれど私はその一端をここに見出した。つまり、最近の子どもたちが好む、小さな画面にほんの数行あるだけの無機質な言葉のやり取りには思考が伴わない。コミュニケーションをボタン操作で行う彼らが直接面と向き合っての関係を苦手とするのはもっともであろう。日本の未来を案じるならば未来を担う子どもたちが思考の伴った対人関係を身につけられるようすべきである。(当為の主題)
 まずは社会的環境の面から考えてみよう。我が家は女ばかりの三人姉妹、皆同じ地元の市立小学校出身である。末の妹が今年小学校を卒業、実に13年にわたる小学校との付き合いが幕を閉じる。そんな話の中で、姉がおもしろいことを言った。自分と妹とで最も異なる小学校生活が、図工の授業らしいのだ。姉の頃は—そして私が低学年の頃は—おおよそのイメージが示され、各々家にある材料を持ち寄っては交換したりして作品を作ったが、妹にとっての図工はほとんど皆同じキットを組み立てる時間だそうだ。全て部品の揃ったキットを渡され、それを説明書に従って組み立てるだけの作業は子どもから自ら道具の使い方を習得したり完成図を思い描きながら作ったり、とにかく自ら考える行為を奪ってしまう。効率化を求めて科学技術が発展したのは大いに価値あることだが、子どもから思索を奪いその結果対人関係を営むのが苦手だといっては対策を講じようとするなど、本当に非効率極まりない。自分の頭で考え、道具を使用して形あるものを創作するという一連の流れは子どもらがより抽象的で不可視なものを創造してゆくための踏み台であると思う。その助走板をいかに強固なものにするかは子ども自身でなく、大人たちにかかっている。(方法1)
 子どもらにも改善すべき点はある。携帯電話でのやり取りというのは相手の顔が見えない分自分が打ったことを後悔することも多い。特に返事が遅ければ、必要以上に不安にかられる。考えてみればばかげた話である。たかが数十文字に心が一喜一憂するなど。私は同じ現代の子どもとして是非主張したいことがある。もっと友だちと話してほしい。言葉を直接交わしてほしい。対話を通して互いに気持ちを分かち合ったり時には探ったり、そんな過程の中で私たちは知らぬ間に思考を重ねる。江戸城の無血開城を勝海舟と西郷隆盛がもしメールで談判していたら、おそらく成功は望めなかった。面と向かって五感全てで相手の表情や心情を読み取ったからこそ正反対の立場の二人が手を結ぶことも出来たのだと思う。友人や家族と対話をする機会を増やせば、おのずから携帯電話でのメールの空虚さにも気付くはずである (方法2)(歴史)
 確かに人間は道具を発明し科学技術を磨くことによって高度な文明を築き上げてきた。西洋近代思想によると人間は自然すらも支配できる存在であり、当然人々の間の関係も言葉や文字を駆使した精密なものである。だが、現代の私たちは道具を使いこなすどころか道具に振り回されているのではなかろうか。効率性と間違った解釈をされた平等性とが科学技術の生産物の暴走を助長し、子どもたちから思索を剥奪し彼らの未来を危うくしている。人間を他の動物と分かつのはその科学技術という結果ではなく、それを磨き上げた思考そのものである。あの番組で真剣に日本の未来を憂えて議論していた大人たちはそれを認識していたのだろうか。子どもたちの将来に少なからず影響を与えるならば必ず認識すべきである。子どもたちの未来は経済発展でなく対話の中に芽生える思索の程度に大きく左右されうるということを。(主題)(反対意見)(名言)

   講評   nara

 携帯メールが日に260件。受信送信に1分かかるとしても単純計算で4時間以上になるね。そう考えると、まさにまとめにある「思索」とは対極にあるとしか思えない。言わば、脊髄反射のように、受信したものに反応して、すぐに返事を出しているのだろうな。第2方法にはこの解決案が提示されている。携帯電話から離れるということは、切り捨てることではなく、客観視するということだ。ノンキィさんの提案を受け「話す」ことを増やす中で、携帯電話のよさやそれだからこそできることも見えてくるかもしれない。一方的に「やめろ」で終われない・終わらない問題なのだろうね。
 図工の話はおもしろいなぁ。私のきょうだいも皆が同じ小学校に通ったけれど、その間に引用されたような大きな変化はなかったように思う。長子入学から末子卒業まで12年ほどだけれどね。となると、ここ10年くらいに何か大きな意識の変化が生まれたということにならないだろうか。原因の一つは他ならぬ携帯電話・パソコンの普及ということも考えられるね。ここから導入と二つの方法をつないでいくものが見えてきそうだな。
 自作名言が素晴らしい。ここ10年くらいの問題点は「結果主義」の蔓延にも深く関係しているのだね。最近のノンキィさんの作文のよさは、体験実例であれ歴史実例であれ、テーマに照らして本質を引き出せているところだ。だから、共感と説得力のある作品になっていると思うよ。定期テスト直後で大変だっただろうけれど、そのプレッシャーがいつもいい仕上がりにつながっているというのも、これまたノンキィさんらしい。進級テスト合格。

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