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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   思い出深い物   いろは

「これはな、ママが十三参りの時に着た着物やねん。」
母が少し自慢気に言った。大きな紙に包まれて、大切に置いてある着物。私は初めて見た。でも、匂いはなつかしい匂いがした。薄紅色の生地に、赤の地模様。その上にさりげなく置かれた花。派手ではなく、どちらかといえば地味な色。でも、私は可愛いと思った。この着物は、家にあった母の着物だ。けっこう古いという。着物がきれいなところから見て、とても大切に扱われているに違いない。
 十三参りといえば、もうそろそろ私もしないといけない。今私は十二歳。慎重は百四十三センチ。ちょうど着物もその位のサイズだ。母が着たのは中学二年生の時らしい。私は、この着物を見て、
「可愛い」
と思った。現代の着物は派手で、私もあまり好きではなかった。日本の伝統的なものを感じられなかった。でも、この着物は、決っして派手ではなく、少女らしさを感じさせる。これが、本当の着物というのだと思う。まだ着てはいないが、自分が着るところを想像すると、まるで私が幼いころの母になったかのように思える。この着物は、深い思いがあるのかもしれない。
 これは母に聞いた話だ。祖母の実家はお寺で、金沢にある。その祖母が、その金沢から、着物を持ってきた。その着物はちょうど百五十センチぐらいまでの物だった。その着物を、京都の仕立て屋にたのみ、染め直してもらった。それも、母の希望を聞いて、柄を派手にしなかった。周りとは違う、清楚な物をたのんだ。母は元から着物を着るのが好きだったという。そんな母の事だから、その着物を着た時は、天にも昇る気持ちだった。
「これは私だけのデザイン。他に着てる人なんていないのよ!」
母は誇らしげに思った。とてもうれしく、それに合う髪型を考えたり、かんざしを買ってもらったりした。母の前にも、誰か着てるから、生地はとても薄く、もろいという。それで大切に扱われていたのかもしれない。けれど、私はまた別の意味があると思う。昔のかがやいた思い出が今も心に残っているのだと思う。だから、
「何か古い物ない?」
と聞いた時、一番最初にこれを出してくれたのではないだろうか。
 人間にとって、古い物というのは、思い出がある。そしてそれは、一生変わらない。いくら時が経ったとしても、いつまでもそのままの姿であり続ける。きっとそれは、思い出がある物しか変わらない。その物に思い出が無ければ大切にされずに、捨てられているかもしれない。母が話してくれたのは、きっとそれに思い出があるからだ。私もその着物を、次の子供に受け継いで、より思い出深い物にしたい。
「今度、十三参りの時にこれ来ても良い?」
私は、母にこの着物を見ながら言った。

   講評   sumomo

 「家にある古い物」が今週の作文の課題でしたが、とてもすてきなお話ですね。お母さんが十三参りで着た着物が今でも大切に大切にされているというのは、その着物への思いがとても深いことが想像できます。
 この着物について、お母さんに聞いたときも、きっと楽しそうになつかしそうにお話してくださったでしょうね。お母さんもその時の気持ちをまるで昨日のことのように覚えておられるのでしょう。最近テレビで「モノより思い出」というCMを見ましたが、古いものにはしっかりとその思いでもこめられているのですね。
 書き出しの結びやたとえも、とてもよくできています。自分の十三参りでその着物を着るのが楽しみですね。

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