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　　　お金に飲み込まれる心の豊かさ　　　いちごみるく

首飾りというものは、まず第一に財貨であり、第二に地位や富の象徴であり、そして第三にお守りである。今日もなお、これら三つの機能はそれぞれにはたらき続けている。だが、この第三の機能は、さらに世俗化して第四の役割をも受けもっているように思われる。貴金属としては全く無価値であっても、特定の人間が特定の人間とのかかわりのなかでかけがえのないものとして主観的に絶対の価値をあたえるもの——そういう種類の首飾りもある。しいて名づけるなら、安心型の首飾りとでも呼ぶべきであろうか。一方で、物神崇拝は馬鹿げたこと、と断定する人たちもすくなくはない。第三者からみて、全く無価値、かつ無意味であるようなものが特定の人間にとっては、絶対の価値と意味をもつこともすくなくないのだし、むしろ物神崇拝の対象をなにも持っていない人こそが、実は不幸なのだ。現在では、あらゆるものが商品化され、金銭的価値に還元される社会である。そのような社会の中では、かえって心が貧しくなってしまうことに問題がある。
　その原因は第一に金銭という尺度があまりにも強力だったからである。私が中学生だったころ、同級生が気に入らない先生を徹底的に攻撃していた時期があり、その子たちの口癖は「こっちがお金払ってるんだから、もっとまともな先生に変えろよ」だった。今の私から言わせれば、教えを受ける私たちの方こそ低姿勢で日々の授業を受けるべきで、お金はその関係を強固にするための付加物でしかないと思うが。（笑）昔は先生を尊敬するべき当たり前の対象であった。しかし、それは“多くの知識を持つ貴重な存在”という価値観が人々の中にあるのが大前提にあって成り立つ話である。現在では金銭以外の価値が消失しており、このような生徒の先生に対する暴言が近年増加して、心の病気にかかる先生が増えている現状はお金がものを言う時代の産物なのだ。マンモスの牙も、最初は実用的なものだったはずだが、その実用性が強力すぎたためかある時期から牙そのものが周囲の状況とは無関係に独自に進化するようになったと考えられている。
　第二の原因としては、感謝することの歴史的な継承が少なくなっていることだ。昔は村社会であったため、子供たちは近所のお年寄りに色々な話を聞いていた。それは水神様の話であったり、食べ物を作ってくれている農家の人たちの話だったかもしれない。そこから少なからず感謝の心が芽生え、水を粗末にしない、お米は一粒残さず食べるなどのお金の価値を超えた感謝の心が育てられていったのだ。だが、最近ではそのような機会も減り、他人の好意であったり協力で存在しているものを当たり前のように受け止め、もしそれが少しでも自分の理想より離れていると、不満がすぐに口をついて出てくる。このような人が最初は少なくて気にならなくても、ゆくゆくは、社会のモラル低下を引き起すことになるのだ。
　確かに、金銭という基準があることによって、人類は経済を発展させてきた。ある意味では、全ての人が平等に同じ金額でものを手に入れることが出来るようになったと言えるだろう。しかし、今はその段階を超え、心の豊かさを犠牲にしてまで、発展を続けようとしている。経済は人間の生活を豊かにするために成長しているはずなのに、人間そのものを踏み台にして成長しているなんて笑い話である。価値付けをすることは大切だが、より大切なのは豊かな心を育むことによって価値が必要になるようだと考えられる人間だと思う。
　

　　　講評　　　hira

懸案の（笑）自然科学実例も流れに沿って入れられました。もう、作文を書くための型、フレームのようなものが頭にしっかり入ってきたことでしょう。あとは、自分の知識、経験を乗せつつ、考え、思考を深めていけばいい。そのために何を知るべきか、ものの見方も変わってきたのではないかな。