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　　　笑いの原点　　　闇の女帝

私にとって笑うという行為は、なんだろうか。笑いの原点を、自分の体験から探ってみようと思う。
　私が最近、笑ったことは犬のことである。私はシェリーちゃんと階段の下で戯れていたのだが、母に用事を頼まれ、二階へ行き、その用事を済ませた。そして、いつもの通り廊下を歩き、いつもの通り段の数を数えながら階段を降りようとした。その後いつもの通り階段を降り切ったと言いたいのだが、なんと階段が一段増えていたのである。どういうことか。というのは、階段の一番最後の段を降りれば一階の床に着くはずであった。しかし、どういうわけか一番最後の段と床の間にシェリーちゃんが横たわっていたのである。私は、口笛を吹いて、しかも天井を見ながら（！？）階段を降りていたため、シェリーちゃんの背中という新しい階段の出現に気がつかなかったのである。こういうことで、階段が16段から17段に増えてしまったのである。
　この場合の笑うという行為の意味は、日常生活ではありえない体験をしたことで起こった作用と考えられる。階段が一段増えるというまるで怪談話に出てきそうなことを、実際に自分で体験し、またなぜそうなったのかということを解明できたため、あとから考えてみれば、「歩くときは前をしっかりと見る」という鉄則を破った自分の不注意から起こったのだと思える状態になったため、笑うという行為が出てきたのだと思う。
　先日、私は中国へ旅行にいった。北京で外見だけ五つ星のホテルに泊まり（というのは、本当は五つ星ホテルなのだが、外見とロビー、食堂だけが綺麗で部屋の浴槽にカビが生えていたから）、天安門に、故宮に、と中国の有名スポットを回りいよいよ最終日。最終日には万里の長城と地下迷宮に行くことになった。万里の長城のあと、農村の人が経営するニジマスが食べられるところに行った。農村の人が経営しているだけあって、なんというか、はっきり言わせてもらうと、汚い。差し出されたコップ、お皿、湯呑茶碗が黒ずんでいたために、使う前に消毒で拭いたほどだ。しかも、驚くことにニジマスは日本から持ってきて養殖したものだった！　あまりおいしいとは言い難い料理を口にしたあと、私はお手洗いに行った。すると、なんと、お手洗いのドアがない。信じられない！　みんな、ドアがないのに平気でお手洗いをしている！　これじゃあ、お手洗いも臭いはずだ・・・・・・・。
　実は、ドアのないお手洗いが存在することはすでに本で読んで知っていた。しかし、まさかGWの楽しい楽しい家族旅行でその光景を目の当たりにするとは思ってもいなかった！　これは、こういうドアのないお手洗いの存在を知っていたものの、実際に目にするとはびっくり仰天、いわゆる不意を突かれてしまったことに対する、笑いである。いや、笑いというより、苦笑いといった方が適切かな・・・。
　笑いというのは、不意を突かれたとき、またなぜ自分がそのような状態に陥ったのかを解明できたときに発生するものだと分かった。人間にとって笑いとは、なくてはならない、精神の癒しである。

　　　講評　　　inoko

　闇の女帝さん、こんにちは。
笑わない日があるとしたら、その一日はどのようなものになるだろう。笑いあふれる一日が極彩色の世界だとするなら、笑いのない一日は灰色の世界。そのぐらいの違いがあるかもしれない。そう考えると、笑いの大切さがとてもよくわかる。

☆　女帝さんは、不意を疲れたときに笑いが発生すると書いています。確かにそうですね。お笑い芸人がねらう笑いも、非日常や不条理、矛盾の世界。私たちの生活は、決まりきった四角四面のことばかりではつまらないということなのですね。