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作文教室の丘から 小学生、中学生、高校生の作文 (編集)

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   幼き者よ   おむふ

 人と交わることのない、山水に住まうさすらい者。それこそ今や目にすることが少ない狼である。あでやかで豊潤なる風の毛並み、龍の牙かと思うほどのりりしき牙。なんともおぞましく月夜の奥山がふさわしい古よりの真の獣。それこそ狼であろう。これほどまでに太古から人におそれられてきた狼。だが愛らしく、なんとものどかな一面を狼は時折みせてくれる。狼の子供は、生まれたばかりであってはまだ生きゆく術をなにもしらない。それ故、生まれてからすぐには親元を離れず共に血を受け継いだ何匹かの兄弟とともに母のもとで生きてゆく。その際、兄弟の間で早くも業火のごとく煮えたぎり荒れ狂う喧嘩でもするのかと思いきや、多くの狼は兄弟と中むつまじくじゃれあって遊ぶ。まさに人の幼子となんら変わらぬすがたである。笑みのようにも見える春の陽光のごとき和やかな彼らの表情。ほのぼのとしたまなこ。月夜ではなく、野菊のうららかな春の野がふさわしい。狼のみならず猪、鹿、熊など地にある多くの動物が幼き時分じゃれたり群れの中で遊んだりして育っていく。当然そればかりでなく獲物の捕らえかた、土地の細かな風土など人でいえば勉学のようなものも学び修練を経て高貴なる清廉な狼となる。だが真に大人へとなり行く中で自分を研ぎ澄ましつややかに磨くものとはなんなのであろうか。遊びにより多くのものが得られるという意見もあれば遊びだけでなく人でいうところの勉学、古文書による知識の集積、巧妙なる算術などにより心の大いなる豊漁となるのではなかろうかといった考えもある。再度いう。子供時代の人として多くを得るためのものとは、果たしてどういったものなのであろうか。勉学による鍛錬だろうか。もしくは多くの自然界でなされる遊びから生まれ出づるものなのか。それをこれから考えてゆく。
 遊び、とくに子供の時分の友達との遊びからは手に余るほどの多くが得られるという意見がある。子供時代の遊びなどにより、社会性、自立心、思考力といったあらゆる幸が得られるという。まさに七彩の心の富。私にしても思い当たることは多くある。他人と遊ぶ機会があまり多くない三、四歳の子は周囲に対する気遣いや人との接し方が足りず自分勝手であるといった印象がある。だが保育園や幼稚園、近所の子達との遊びにより人間関係や自分が今主張すべきであるかないかなどを学んでいるような気もする。当然年齢が上になっても同じことだ。私にも思いあたることはいくつかある。その一つとして小学校二年生のころよくしていた警察ごっこがある。案外、本格的な遊びなのだ。厚紙で無線機をつくり拳銃もしかり。また、行動班、待機連絡班など役割をしっかり決めてやったものである。「こちら捜査班倉田、佐藤。容疑者は路地を出て東三丁目へと進行中。」・・・・・「了解、三十人の捜査班をそちらに派遣する。二人のけんとうを祈る。容疑者は小型ナイフを所持しているもよう。気をつけろ。」などといったぐあいで無線ごっこをかねて遊んでいた。私も、その時分かなりの目立ちたがり屋、自分勝手であったように思われるがあのころの遊びにより自分の果たすべき役割やちょっとした気遣い。そうしたものを学んでいたような気がする。天地を感ずる心、多くをおもう想像力、人としての良き威風。そういったものもまた得られたものである。古来の人々も遊びにより功名をたてるという意欲を磨き、日本では大和魂といわれしものを感じていった。十五夜の名月だけでなくその晩の前の待宵月を愛でる心もまたここにある。まさに鮮やかな感受性。やはり遊びから得られるものは多くあるだろう。これが第一の意見である。
 第二の意見として勉学、教養により多くが得られるといった意見がある。自らを彫りなし威風を帯びた者となるには勉学がなによりだといったものだ。確かに正こうを射た意見であるかもしれない。おとぎ草子にもこういった話がある。昔、ものぐさ太郎とまで呼ばれたものぐさがいた。住むには申し分ない広い屋敷をもっていたもののあまりのものぐさ故に家に住まうことすら面倒に思い屋敷の前の路地の傍らに寝転がって暮らしをたてていた。湯を飲み、食物を探しに歩くことすら面倒な彼であったが村のものが彼の生活を工面してやったためどうにか生きていた。そんな時、都の国司から村のものを奉公人としてさしだせというめいを村がうけた。ものぐさ太郎は恩返しという形でその奉公人となり都へとのぼったのだ。都での仕事の期間が終わるまで彼は紳士に忙しなく働いた。だが本当に彼が都へと初旅という業苦をへて行こうと思った理由は嫁探しなのだ。それ故そろそろ都より故郷への旅路を行く日が近くなったある日。彼は道行く優美な姫君に声をかけ強引に妻にするようにいったのだ。困り果てたその女性は多くのなぞときをものぐさ太郎にかけその場をしのごうと思ったが、ものぐさ太郎実は皇族の産まれ。帝の血を持つ一族のかたわれである。それ故教養も多くありみやびで才気あふれる詩歌をうたう物だ。女性のなぞときなどなんのその。多くを経ていった末に女性はついにものぐさ太郎のその詩の心に惚れついには夫婦となった。それをもとにものぐさ太郎はその才とともにその名を世にとどろかせ幼いころの歌の教養により大いなる財を成した。またものぐさ太郎を好くものも多くかなりの数の人々が彼を敬愛したとのこと。このように教養、学びにより多くがえられるのではなかろうか。これもまた一つの意見である。
 今まで考え述べてきたように勉強により獲るもの。遊びの中にて芽を吹き育つものそれぞれがある。そして子供とは幼くあるだけでなく独特の価値観や世界が構築されている。大人にならねばできないことがあるように子供でなくてはできないことも多くあるだろう。それこそまさに我らが子供時代にすべきことであろう。

   講評   koni


【複数の意見】 意見を2つ挙げることができました。明確な文で意見化できています。

【昔話の実例・長文実例】 体験実例の警察ごっこの話は、臨場感があっておもしろい。それらを通じて学んだことを説明することができました。昔話の実例もわかりやすく、更に感情豊かに説明できていて説得力がある実例に仕上がっています。

【名言の引用】 よくできています。狼の話から書き出したところもすばらしい。

【総合化の主題】 自分の意見を主張できましたね。将来を見据えて今を生きることも大切だし、今しかできないこともあります。それらを考えながら今しかできないことを経験しそこから学ぶことができたら、大きな財産になりますね。

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 しかし、子供たちの実力はそれぞれ個性的です。上手に書けている子の作文を見せて、自分の子供の作文と比較しないようにお願いします。

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