ログイン ログアウト 登録
 日本文化の抽象化(これからの新しい成長産業) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 1333番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2026/5/9
日本文化の抽象化(これからの新しい成長産業) as/1333.html
森川林 2011/08/14 17:52 


 ロシアから久しぶりに帰国した北野幸伯(きたのよしのり)さんが「PRE(ロシア政治経済ジャーナル)2011/8/8号」で、日本に来て感動した出来事を書いています。

http://archive.mag2.com/0000012950/20110807025305000.html

・レストランへの道を、わざわざ一緒に歩いて教えてくれた若いサラリーマン

・路上の電話ボックスでの電話が終わったあと、近くでの工事の騒音を謝ってくれた女性の労働者

・屋外のレストランで暑そうにしていると、自分の方にある扇風機の風を向けてくれた年配の客

 いずれも、ごくあたりまえのことのように見えますが、日本標準ではあっても世界標準ではありません。

 日本の新しい産業の芽は、こういうところにありそうです。

 しかし、それはもちろん単なる観光業やサービス業ではありません。日本のよさを、より高い次元で昇華した産業を創造することがこれからの課題になると思います。



 さて、こういう日本文化を育ててきたものは、何なのでしょうか。それは、学校でも、宗教でもないでしょう。民族のDNAのようなわけのわからないものでもないでしょう。文化を支えるものは言語ですから、日本語が影響力を持つことはあるでしょうが、それもはっきりとはわかりません。

 もし日本文化を形成するものが直接形のあるものとして指摘できるのであれば、それは世界中で採用することができるでしょう。そうすれば、イギリスの暴動なども、ソーシャルサービスを制限するというようなやり方ではなく、もっと直接的に対策を立てられるはずです。しかし、そういう形あるものではないようです。

 欧米では、治安のよい社会を作るために、テレビの暴力番組を規制するなどいろいろな政策を立てています。一方、日本では、フランスで暴力番組と見なされた「ドラゴンボール」を何年か前の子供たちは嬉々として見ていました。しかし、それで日本の子供たちに暴力性が高まったとは思われていません。

 日本文化のよさが何に由来するのかということは、まだよくわかっていないのです。



 教育でも政策でも、何かの問題に対しての対策を立てるとき、専門的な知識のある人は、目につく欠点を先に直そうとします。目立つ欠点を直せば、自然にいいものができると誰でも考えがちなのです。

 しかし、本当の専門家は、そのようなことはしません。欠点を直し始めると、次々と欠点の原因にさかのぼっていき、最後には欠点を直すことによって、最初にあったもっといい長所をなくしてしまうことを知っているからです。



 日本社会の今の閉塞状況を打破するために、多くの人がさまざまな対策を提案していますが、その多くは目についた欠点を直そうとするものです。欠点を直すよりも前に、日本の長所がどこにあるのかを考えなければなりません。

 その長所の根は、文化の中にあることは確かです。例えば、2月の節分という行事では、どこの家でも「鬼は外、福は内」と豆を投げると思いますが、この無意識のうちにやっている豆まきの行為の中で、子供たちは日本的な優しさを自然に身につけているように思います。

 「福は内」はどこの国でも共通だと思いますが、日本では、「鬼は外」、つまり、鬼を滅ぼすのではなく、鬼は、「ちょっと悪いけど、外の方に行ってて」という程度なのです。こういう身近なところに流れている文化の総体が、日本というものを形成しています。



 世界の人々のニーズは、今、物から心へと大きく変化しようとしています。確かに、世界にはまだ飢えに苦しむ人が10億人もいますが、飢えからも争いからも解放されたとき、多くの人が望むのは、豊かな消費生活で、その豊かな消費生活の次に来るのが穏やかな生活なのです。

 アメリカは、衰退した製造業のあと、IT産業と金融業で新しい経済を作りました。日本は、中国などの新興国に追い上げられて空洞化しつつある製造業のあとに、どのような産業を作っていくべきなのでしょうか。

 このときに、日本の長所を生かすという発想を持つことです。世界の先進国の人々のこれからのニーズは、日本人のような生活をしたいということです。高級乗用車に乗り、高級住宅に住んで、暴動におびえて暮らすよりも、普通に動く自動車と、普通の住宅でいいから、穏やかな生活をしたいというのが、これからの世界の先進国の人々のニーズです。そのためには、いくらお金を出してもいいと多くの人が考えつつあるのです。



 この経済の流れを素直に見れば、世界のこれからの成長産業は文化で、その中でいちばん売れそうな商品が日本文化なのだということがわかってきます。

 しかし、これは、何度も言うように、観光業やサービス業のような産業ではありません。そういうものに接するというのも確かにニーズのひとつですが、世界の人々のもっと根本的なニーズは、自分たちも日本のような生活をしたいということです。

 しかし、それは日本に来て暮らすということではありません。自分の住んでいる国で、日本のような文化と暮らしを実現したいということです。

 それが日本のこれからの輸出産業です。ところが、ここで何を輸出したらいいのかが、肝心の日本人にもわかっていません。それは大きく言えば教育のようなものでしょう。しかし、その教育の中身は、今の教科書でも学校でも教育制度でもありません。もっと、日本人の家庭と地域の生活の中で自然に行われているものです。

 その日本文化を抽象化して、世界に通用するものにしていくことがこれからの課題なのです。



コメント欄

コメントフォーム
日本文化の抽象化(これからの新しい成長産業) 森川林 20110814 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
てとなに (スパム投稿を防ぐために五十音表の「てとなに」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
日本(39) 
コメント1~10件
なぜ公立中高一 森川林
 志望校の過去問に特化した受験対策を進めるためには、まず「春 4/28
記事 5498番
作文検定のプレ あお
お返事ありがとうございます。暗唱検定が早くできてほしいです。 4/9
記事 5493番
作文検定のプレ 森川林
 日本語教育で、簡単なのは会話で、次が読書で、最後が作文です 4/8
記事 5493番
作文検定のプレ あお
日本語作文検定は、日本語を学ぶ外国人のための作文教育にも対応 4/8
記事 5493番
【合格速報】東 ふつ
合格おめでとうございます。 毎週真剣に取り組み、どんどん上 1/7
記事 5403番
国語力、読解力 森川林
読検の解答は個別れんらくでお送りください。 12/29
記事 4331番
国語力、読解力 すみひな
本日の読解検定を受け忘れてしまいました。回答をどちらに送れば 12/27
記事 4331番
森リン大賞が示 森川林
作文力を上達させるコツは、褒めることでも直すことでもなく、書 12/13
記事 5398番
作文コンクール 森川林
 子供たちの教育で大事なのは、知識の詰め込みではなく、読書と 12/10
記事 5395番
読書と作文が子 森川林
 小学生時代は、勉強よりも読書。  中学生以上は、勉強と同 12/9
記事 5394番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
Re: 読解検 森川林
 これは、その言葉があるかどうかではなく、文脈として読み取る 4/28
国語読解掲示板
読解検定小5の みきひさ
読解検定 小5 4月について3問教えてください。 どうぞよ 4/27
国語読解掲示板
茨木のり子さん 森川林
 茨木のり子さんが晩年に書いていた言葉、 「倚(よ)りかか 4/27
森川林日記
軽くて意味のな 森川林
軽くて意味のない広告の文面を書いていたのでくたびれた。 嘘 4/27
森川林日記
Re: 例えば 森川林
 この歌の本質は、「言えない」又は「言わない」というところに 4/27
森川林日記
例えば、敷島の 森川林
 本居宣長の「敷島の大和心を人問はば朝日ににほふ山桜花」は、 4/27
森川林日記
AIに文章を直 森川林
 AIに文章を直してもらうと、  詩的な文章が散文的になる 4/27
森川林日記
雨は龍のメッセ 森川林
 雨は龍のメッセージ。  晴れは太陽のメッセージ。  ど 4/27
森川林日記
五月の薄曇りの 森川林
 五月の薄曇りの空の下をゆっくりと歩く。  自分の心の中に 4/27
森川林日記
走水神社 森川林
 走水神社に行ってきた。  神社の横の山の途中に、弟橘媛( 4/24
森川林日記

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン