ログイン ログアウト 登録
 日本文化の抽象化(これからの新しい成長産業) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 1333番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/12/15
日本文化の抽象化(これからの新しい成長産業) as/1333.html
森川林 2011/08/14 17:52 


 ロシアから久しぶりに帰国した北野幸伯(きたのよしのり)さんが「PRE(ロシア政治経済ジャーナル)2011/8/8号」で、日本に来て感動した出来事を書いています。

http://archive.mag2.com/0000012950/20110807025305000.html

・レストランへの道を、わざわざ一緒に歩いて教えてくれた若いサラリーマン

・路上の電話ボックスでの電話が終わったあと、近くでの工事の騒音を謝ってくれた女性の労働者

・屋外のレストランで暑そうにしていると、自分の方にある扇風機の風を向けてくれた年配の客

 いずれも、ごくあたりまえのことのように見えますが、日本標準ではあっても世界標準ではありません。

 日本の新しい産業の芽は、こういうところにありそうです。

 しかし、それはもちろん単なる観光業やサービス業ではありません。日本のよさを、より高い次元で昇華した産業を創造することがこれからの課題になると思います。



 さて、こういう日本文化を育ててきたものは、何なのでしょうか。それは、学校でも、宗教でもないでしょう。民族のDNAのようなわけのわからないものでもないでしょう。文化を支えるものは言語ですから、日本語が影響力を持つことはあるでしょうが、それもはっきりとはわかりません。

 もし日本文化を形成するものが直接形のあるものとして指摘できるのであれば、それは世界中で採用することができるでしょう。そうすれば、イギリスの暴動なども、ソーシャルサービスを制限するというようなやり方ではなく、もっと直接的に対策を立てられるはずです。しかし、そういう形あるものではないようです。

 欧米では、治安のよい社会を作るために、テレビの暴力番組を規制するなどいろいろな政策を立てています。一方、日本では、フランスで暴力番組と見なされた「ドラゴンボール」を何年か前の子供たちは嬉々として見ていました。しかし、それで日本の子供たちに暴力性が高まったとは思われていません。

 日本文化のよさが何に由来するのかということは、まだよくわかっていないのです。



 教育でも政策でも、何かの問題に対しての対策を立てるとき、専門的な知識のある人は、目につく欠点を先に直そうとします。目立つ欠点を直せば、自然にいいものができると誰でも考えがちなのです。

 しかし、本当の専門家は、そのようなことはしません。欠点を直し始めると、次々と欠点の原因にさかのぼっていき、最後には欠点を直すことによって、最初にあったもっといい長所をなくしてしまうことを知っているからです。



 日本社会の今の閉塞状況を打破するために、多くの人がさまざまな対策を提案していますが、その多くは目についた欠点を直そうとするものです。欠点を直すよりも前に、日本の長所がどこにあるのかを考えなければなりません。

 その長所の根は、文化の中にあることは確かです。例えば、2月の節分という行事では、どこの家でも「鬼は外、福は内」と豆を投げると思いますが、この無意識のうちにやっている豆まきの行為の中で、子供たちは日本的な優しさを自然に身につけているように思います。

 「福は内」はどこの国でも共通だと思いますが、日本では、「鬼は外」、つまり、鬼を滅ぼすのではなく、鬼は、「ちょっと悪いけど、外の方に行ってて」という程度なのです。こういう身近なところに流れている文化の総体が、日本というものを形成しています。



 世界の人々のニーズは、今、物から心へと大きく変化しようとしています。確かに、世界にはまだ飢えに苦しむ人が10億人もいますが、飢えからも争いからも解放されたとき、多くの人が望むのは、豊かな消費生活で、その豊かな消費生活の次に来るのが穏やかな生活なのです。

 アメリカは、衰退した製造業のあと、IT産業と金融業で新しい経済を作りました。日本は、中国などの新興国に追い上げられて空洞化しつつある製造業のあとに、どのような産業を作っていくべきなのでしょうか。

 このときに、日本の長所を生かすという発想を持つことです。世界の先進国の人々のこれからのニーズは、日本人のような生活をしたいということです。高級乗用車に乗り、高級住宅に住んで、暴動におびえて暮らすよりも、普通に動く自動車と、普通の住宅でいいから、穏やかな生活をしたいというのが、これからの世界の先進国の人々のニーズです。そのためには、いくらお金を出してもいいと多くの人が考えつつあるのです。



 この経済の流れを素直に見れば、世界のこれからの成長産業は文化で、その中でいちばん売れそうな商品が日本文化なのだということがわかってきます。

 しかし、これは、何度も言うように、観光業やサービス業のような産業ではありません。そういうものに接するというのも確かにニーズのひとつですが、世界の人々のもっと根本的なニーズは、自分たちも日本のような生活をしたいということです。

 しかし、それは日本に来て暮らすということではありません。自分の住んでいる国で、日本のような文化と暮らしを実現したいということです。

 それが日本のこれからの輸出産業です。ところが、ここで何を輸出したらいいのかが、肝心の日本人にもわかっていません。それは大きく言えば教育のようなものでしょう。しかし、その教育の中身は、今の教科書でも学校でも教育制度でもありません。もっと、日本人の家庭と地域の生活の中で自然に行われているものです。

 その日本文化を抽象化して、世界に通用するものにしていくことがこれからの課題なのです。



コメント欄

コメントフォーム
日本文化の抽象化(これからの新しい成長産業) 森川林 20110814 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
うえおか (スパム投稿を防ぐために五十音表の「うえおか」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
日本(39) 
コメント1~10件
森リン大賞が示 森川林
作文力を上達させるコツは、褒めることでも直すことでもなく、書 12/13
記事 5398番
作文コンクール 森川林
 子供たちの教育で大事なのは、知識の詰め込みではなく、読書と 12/10
記事 5395番
読書と作文が子 森川林
 小学生時代は、勉強よりも読書。  中学生以上は、勉強と同 12/9
記事 5394番
子どもの文章力 森川林
今の受験は知識の詰め込みの勉強になっています。 考える問題 12/8
記事 5392番
作検研究。森リ 森川林
作文は、褒められても注意されても、そこに客観的な基準がなけれ 12/7
記事 5391番
「作文検定」「 森川林
 今は、AI社会の前夜。  昔は新聞やテレビが中心だった。 12/7
記事 5390番
AI時代に子ど 森川林
AI時代には、先生の役割は「教えること」ではなくなります。 12/6
記事 5389番
【合格速報】順 森川林
Rさん、合格おめでとう!! よくがんばりましたね。 受験 12/4
記事 5387番
森リン大賞9月 森川林
 従来の作文評価は、小学校低学年では「正しい表記ができている 11/9
記事 5382番
作文の学習で大 森川林
 「何でも自由に書いてごらん。いつでも褒めてあげるから」とい 11/7
記事 5381番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
「給与の決め方 佐藤隆
経営者・経営層の皆さまへ 突然ですが、御社の人件費?? 12/12
森の掲示板
3I/atla 森川林
日本にはかつて穏やかに何万年も続いた縄文文明があった。そのよ 12/12
森川林日記
Re: 11月 森川林
 これは、解き方の問題ではなく、読む力の問題です。  読解 12/5
国語読解掲示板
Re: ICレ 森川林
 ChatGPT、あまり文章うまくないなあ(笑)。  音声 12/5
森川林日記
ICレコーダと 森川林
AI時代に子どもが伸びる――全科学力クラスという新し 12/5
森川林日記
noteのペー 森川林
https://note.com/shine007 12/4
森川林日記
11月分 4  あういと
問題7と問題8が分かりません。 キーワードはわかるのですが 12/3
国語読解掲示板
Re: 森川林
 字がきれいだったのは、そのあとの日記の内容を見ると、弟が葛 11/30
国語読解掲示板
Re: 11月 森川林
 お返事遅れて失礼しました。  易しい国語問題は、「同じ言 11/30
国語読解掲示板
ともとも
小5の11月の読解検定のBの問題が誕生日だから字が綺麗だと思 11/28
国語読解掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン