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脳の働きから見た暗唱の仕組み as/1049.html
森川林 2010/10/20 11:50 
修 削


 言葉の森では、子供たちの毎日の自習として暗唱の指導を行っています。

 この暗唱がなぜできるか、そしてどういう効果があるかということについて、脳の働きから考えてみたいと思います。

 まず左脳は、言語脳で言語の処理を中心に行っています。左脳は、右脳よりも強力ですが、その分活動が粗いので、主にβ波を出しているのではないかと思います。(「脳と音読」(川島隆太・安達忠夫)P176によると、音読などの言語的活動を行うと脳が活性化するそうです。しかし、これは、左脳がβ波が出しているとは言い切れないかもしれません。なお、脳が活性化するということと、音読をすると頭がよくなるということは、関係がないことのように思います。2010/1022追加)

 左脳は、デジタル的な処理をしているので、短期記憶に制約されています。だから、言語処理をするときは、逐語的に少しずつ処理しては忘れていきます。

 例えば、物語を読むとき、数語又は十数語の文字列から次々とイメージを作り、前の文字列はどんどん忘れながら読んでいきます。だから、最後にストーリー全体はわかっているものの、個々の文字列は記憶に残っていないのです。

 次に、右脳です。右脳はイメージ脳で、イメージや音楽の処理を行っています。

 右脳の処理はアナログ的なので、短期記憶に制約されません。例えば、景色を眺めているとき、その景色の中にある無数の要素がひとまとまりに頭の中に入ってきます。

 「青い空。雲がぽっかり浮かんでいる。遠くで鳥の声が聞こえる。静かに風が吹いている。もう秋だ。キンモクセイの花の香りがする」というような大量のイメージが一瞬にして右脳のイメージとして処理されます。

 しかし、右脳の処理は静かなので、α波やΘ波を中心とした脳波になっているのだと思います。(「脳と音読」によると、空で覚えた文章を音読しているときは脳が活性化せずにリラックスするそうです。しかし、これは、右脳がα波やΘ波を出しているとは言い切れないかもしれません。2010/10/22追加)。音楽を聴いていると心がリラックスするのはこのためです。ただし、歌謡曲のように歌詞という言語のあるものは左脳が働くので、クラシックのような曲だけのものの方が脳のリラックスにはいいようです。

 記憶術の仕組みは、アナログのイメージはいくらでも記憶に残るので、そのアナログのイメージに、覚えにくいデジタルの記憶を結びつけるというものです。

 さて、暗唱は、言語をデジタル的に覚えるものなので、一度で覚えられるのは短期記憶の容量となる7文節ぐらいまでに限られています。だから、30-50文字なら一度で覚えられますが、これが100字ぐらいになると短期記憶の容量を超えてしまいます。50字と100字は、単に量が違うだけでなく質が違うのです。

 しかし、この100字の文章も十数回繰り返すと、丸ごと暗唱できるようになります。同様に、300字や900字も手順を踏んで回数を重ねれば、子供でも大人でも誰でも例外なくすらすらと暗唱できるようになります。できないのは単に繰り返すという根性がないだけです(笑)。

 では、この300字又は900字の暗唱ができるようになったとき、脳の働きはどうなっているのでしょうか。

 900字の文章をすらすらとよどみなく暗唱しているとき、人間はこの文章を左脳で言語的に処理しているのではありません。右脳でひとまとまりのイメージか音楽として処理しています。だから、長い文章でも思い出そうとする気持ちなしに、自然にすらすらと言葉が口をついて出てくるようになるのです。

 これを繰り返していると、やがて必要に応じてすぐに言語の右脳処理が行われるようになるのだと思います。

 「古代への情熱」を著したシュリーマンは、もともと記憶が苦手だったようですが、大声で暗唱の練習をしているうちに、何ページにもわたる文章でも数回読めば覚えられるようになったそうです。

 本多静六は、若いときドイツに留学しましたが、経済的事情のために途中で留学を中断することになり、特別の卒業試験を受けることになりました。そこで、最も難しいと言われる教授の経済学の教科書を丸ごと暗唱しようとしましたが、最初は数行も覚えられません。何度も絶望感を抱きながら繰り返しているうちに、1週間ほどたつと急にすらすらと何ページも暗唱できるようになったそsうです。

 しかし、これは記憶力がよくなったというよりも、言語の処理の機構が変わったということだと思います。



コメント欄

森川林 2010年10月22日 5時22分  ▽
 「左脳がβ波を、右脳がα波やΘ波を出す」という部分は厳密な話ではないので、補足を追加しました。
====
(「脳と音読」(川島隆太・安達忠夫)P176によると、音読などの言語的活動を行うと脳が活性化するそうです。しかし、これは、左脳がβ波が出しているとは言い切れないかもしれません。なお、脳が活性化するということと、音読をすると頭がよくなるということは、関係がないことのように思います。2010/1022追加)
(「脳と音読」によると、空で覚えた文章を音読しているときは脳が活性化せずにリラックスするそうです。しかし、これは、右脳がα波やΘ波を出しているとは言い切れないかもしれません。2010/10/22追加)

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