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「言葉の森作文ネットワーク」の理念と方法(その2) as/1277.html
森川林 2011/05/27 14:47 


 進歩と平和の両立ということを考えた場合、それを実現する鍵となるものは、制度ではなく、その制度を支えるひとりひとりの個人です。言い換えれば、個人の教育さえ充実していれば、制度の不備は人間の力によってカバーすることができます。

 江戸時代、当時の世界最大の都市である江戸の治安を守ったのは、公権力の警察機構構や防災機構ではありませんでした。幕藩体制は、多くの無駄を抱えてはいたものの、庶民の生活を守り発展させることに関しては、きわめて低コストで合理的な仕組みになっていたのです。それは、市民の民度が高く、自助努力によって治安や防災や教育の生活基盤が維持、運営されていたからです。



 そして、これが、未来の社会の姿なのです。

 どのように優れた制度であっても、また、どのように予算をかけた運営であっても、国民ひとりひとりの教育水準が高まらないかぎり、安定した社会は生まれません。反対に、国民の文化的水準さえ高ければ、制度も予算も、つまり、法律も警察もほとんど要らない形で豊かな社会生活を実現することができます。日本は、そのような社会を江戸時代に、世界最大の規模と、世界最高の水準で既に実現していました。私たちのすることは、その過去の経験をもう一度思い出すことだけなのです。

 理想の未来の社会を作ろうとするときに、欧米では、新しい理論を作り、それを議論をし、さまざまな試行錯誤を行わなければなりません。大多数の国民が合意できる安定した社会の設計図ができるまでの間には、多くの紆余曲折や対立があるはずです。

 しかし、日本は、理想の未来の社会を作るために、過去を思い出すだけで済むのです。世界のほかの国でも、そのような理想の社会の萌芽となる時代がいくつもあったはずです。しかし、日本以外の国では、主にその地理的な条件から、異民族の侵入によってしばしば歴史が中断され、その理想の社会を長期間にわたって継続させ発展させることができませんでした。そういう社会が現実に発展したのは日本だけだったのです。



 もちろん、古きよき時代は、その古さゆえの制約を持っていたからこそ、当時の歴史状況では世界に影響を与えることはできませんでした。江戸時代に日本に来た欧米人の多くが、その江戸社会の庶民の生活に、深い尊敬と羨望の念を抱きながらも、それが世界史の中では消滅する運命にあると感じていたのは、当時の日本文化がまだ欧米の文化を包み込むほどの普遍性を持っていなかったためです。

 しかし、今は違います。現代の日本人の生活のほとんどは、欧米の文化の枠の中で営まれています。だから、私たちがこれからすることは、今の生活を前提にして過去を思い出し、過去を基準にして今の生活を変える、ということなのです。そして、繰り返して言えば、これは、制度や予算の問題ではなく、ただ個人の教育の問題に帰着するのです。



 未来の世界の理想となる社会のモデルを提案する役割が、日本にはあります。しかし、そのためには、日本の教育を根本から変えていく必要があります。従来の日本の教育のままでは、未来の社会の建設という仕事を担うことはできません。

 その新しい教育の考え方は、大きく言えば、
1、受験の教育から、実力の教育へ
2、学校の教育から、家庭の教育へ
3、点数の教育から、文化の教育へ
4、競争の教育から、独立の教育へ
ということになると思います。(注1)

 2の「学校の教育から、家庭の教育へ」というのは、学校が不要だというのではなく、従来の「分業として成り立つサービスに、子供の教育を委託する」という発想から、「地域や家庭の文化として、教育を担う」という発想に切り換えるということです。

 これは、教育に限らず、今後の社会の基本的な考え方になります。例えば、治安、防災、医療、福祉、介護、環境整備などのサービスは、これまで、役所が管轄する仕事として考えられていたために、多くの無駄と非効率を生み出していました。

 しかし、その無駄と非効率を解決するために民間の効率的なサービスに期待するというのは、過去の古い資本主義的な枠内の考え方です。人間生活の土台となる教育、治安、防災、医療、福祉、介護、環境整備などを民間に委託すれば、その分だけGDPは上がります。しかし、もともとこれらの人間生活の土台は、役所のサービスにも民間サービスにも頼らずに、地域や家庭の文化の中で自然に最適な状態で生活の一部として解決されていたものなのです。そのモデルのひとつが、何度も述べるように江戸時代の文化でした。そして、江戸時代の民間サービスは、もっと高度な文化の創造の方に向けられていたのです。



 世界を変えるためには、個人がまず変わっていく必要があります。

 これから、私たちがすることは、新しい教育の理念にもとづいた新しい教育の文化を創り出していくことです。これは、小手先の改良ではなく、根本的な改革として行われる必要があります。

 だから、当然、教科の枠組みなども大きく変わります。現在の、国語、数学、英語、理科、社会、音楽、美術、家庭、体育という区分も大きく変化する可能性があります。

 教育の改革の中で、学年の分け方も大きく変わります。特に、これまで見過ごされがちだったために民間が先行していた幼児教育を、人間の自然の成長の中に正しく位置づけて行っていく必要があります。

 また、教育を、サービスとして学校や塾や先生に委託するという発想から、教育を文化として地域と家庭の生活の中で担っていくという発想に大きく切り換える必要があります。



 このように、教育におけるあらゆるものが変化する中で、その変化に伴う混乱をできるだけ少なく、しかも、教育のあり方を未来の理想に向かって進めるための羅針盤となるものがあります。

 それは、現在の教育と未来の教育の両方に属し、現在の教育と未来の教育の架け橋となるような教科で、それが、作文教育なのです。

 作文は、現在の教育において、国語、読解、作文、小論文の教科として、入試の重要科目のひとつとなっています。しかし同時に、作文は、未来の教育の要素も持っています。つまり、作文教育の中で、創造性、自律性、対話性、文化性もまた育てることができるのです。

 作文は、国語力もつく、読解力もつく、作文の受験にも役立つ、そして、未来の社会に必要な創造性や人間性を育てることにも役立つという特殊なk性格を持つ教科だったのです。



 しかし、そのように高度な作文教育を行うためには、従来の方法では不十分です。つまり、いい教材、いい先生、いい教室だけでは、新しい作文教育を担うには力不足なのです。

 新しい作文教育を行うためには、その教育の前提となる対話を欠かすことができません。それは、子供と先生との対話、子供と親との対話、親と先生との対話であるとともに、それぞれ、ほかの子供や親や先生との対話も含む、多様なつながりを持った対話となる必要があります。その対話を、日常的に持てる仕組みがあって初めて、作文教育は従来の教育の枠を超えた、現在と未来の教育の架け橋となる役割を持てるのです。

 そして、このように未来の教育の方向が明らかになってきた時期にちょうど合わせるかのように、facebook(フェイスブック)というプラットフォームが生まれていました。

 未来の社会を担う教育は、これまでは理論の中だけでしか語られていませんでした。しかし、今ようやくその現実の後ろ姿が見えてきました。これから、多くの試行錯誤があるはずですが、新しい教育は着実に進んでいくでしょう。

 アメリカが作ったfacebook(フェイスブック)というレールの上を、これから日本の教育文化というコンテンツが走ります。しかし、それは決して日本だけに限定された文化ではありません。世界のモデルとなるような、普遍化された日本の文化です。

 日本の力では、facebookのようなプラットフォームは作れなかったでしょう。それは、技術的に作れなかったのではなく、そういう発想がなかったからです。アメリカだからこそ、このような仕組みを現実のシステムとして創造することができました。

 同様に、世界のすべての文化には、その国やその民族でなければ創造できない独自の内容があります。だから、日本がこれから世界に貢献する道は、日本の文化を他の世界に押しつけることではありません。日本の中で、世界に通用する理想の社会を黙々と作ることなのです。

 そして、そのようにして日本がこれから作り出す新しい教育と新しい社会が、やがて、世界の人々が自分たちの歴史に合った未来の理想社会を考える際の貴重なモデルとなります。



 言葉の森は、未来の社会を支える柱を、未来の教育として作り出していく森です。言葉の森作文ネットワークに参加するみなさんの応援によって、これから、日本を守り、発展させ、世界の未来の理想のモデルとなる新しい社会と新しい教育を作るようにがんばっていきたいと思います。


(注1)
1、受験の教育から、実力の教育へ
https://www.mori7.com/index.php?e=1227
2、学校の教育から、家庭の教育へ
https://www.mori7.com/index.php?e=1228
3、点数の教育から、文化の教育へ
https://www.mori7.com/index.php?e=1229
4、競争の教育から、独立の教育へ
https://www.mori7.com/index.php?e=1250


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