考える力は、中高一貫校の受験に役立つだけでなく、将来の大学入試にも当然役に立ちます。
現在の大学入試の多くは、まだテストに現れる学力だけの評価になっています。もちろん学力があるということは当然の前提ですから、学力よりも大事なものがあるというのではありません。
学力は大前提として大切ですが、実は学力の先にあるプラスαがあるかどうかが、人間の本当の実力になってくるのです。このプラスαは、読む力、書く力、考える力のように言うこともできますが、それらの力の根本にあるのが、テーマのある生き方です。つまり、求めるものがあるような生き方を可能にするのが、読書と知的な対話だということなのです。
大学側でもこのことにだんだん気がついてきているので、今後、テストの形式は変わってくると思います。今はまだ、試行錯誤の段階なので、小論文や面接を取り入れる程度ですが、将来はこの取り入れ方も更に工夫されていくことが予想されます。
しかし、どのようなスタイルの選抜試験であっても、その子に考える力さえあればすぐに対応できます。
公立中高一貫校に合格する力を育てるのは、主に家庭での教育力です。公立校という条件から、受験勉強の訓練を特にしなくても解ける問題が出されるのが原則です。大事なのは、訓練よりも、生活の中で育っている力です。
受験勉強で得点を上げる練習は、学習塾などで勉強した方が能率のよい面もあります。それは、出題されそうな問題に特化した練習ができるからです。しかし、考える力を問う問題は、一斉指導ではなかなかできません。それぞれの子の力に応じて対応した問題を出す必要があるからです。そういう問題を出せるのは、家庭で一緒に生活している両親なのです。
そして、子供と知的な対話を楽しむような家庭に育った子供は、当面の受験や更に大学入試も超えて、将来の大きな可能性を持つようになると思います。
子供時代はいろいろな体験をすることが必要ですが、その体験を深めるものは、その体験をしたときのその子のテーマです。
例えば、親に連れられてアフリカに行ってキリンの背中に乗って遊んだというような珍しい体験よりも、自分で何か欲しいものがあって、初めて隣町まで買い物に行ったというような体験の方が、その子にとってはテーマのある体験になります。
珍しい体験だけであれば、それは思い出にはなるだけですが、テーマのある体験をした子は、そこから新しい体験を発展させていくことができます
このテーマというものがどこから来るかというと、やはり読書や対話などを通した知的な想像力からやってきます。豊かな想像力を持っている子供は、普通に遊んでいるときでも、自分を物語の主人公の一員と見なして遊んでいる面があります。
小学生のころのいたずら好きな子というのも、この想像性ということから理解できます。いたずらをする子の多くは、単に悪いことをしようと思っていたずらをしているのではなく、いたずらという物語を演じています。その背景には、いたずらを楽しく描いた読書などの影響があります。
だから逆に、テレビやアニメなどで根の浅い物語ばかりを見ていれば、その子の体験のテーマも根の浅いものになります。
読書や対話によって多様なものの見方ができるようにするとともに、読書や対話を通してテーマのある体験をしていくということが、子供の考える力を豊かにしていきます。つまり、元になるのは、読む力をつけるということなのです。
そして、その子にどれぐらい読む力や考える力や豊かな体験があるかを見ることができるのが作文です。中高一貫校の作文試験は、このような背景から出されています。
(つづく)