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新たな知のパラダイム(その3) as/1127.html
森川林 2011/01/17 21:13 
修 削


 人類における最初の知のパラダイムは、「知によって世界を作り変えることができる」というパラダイムとして始まりました。

 それまでの人類は、知恵はありましたが、その知恵は自然環境に適応するためだけの知恵でした。寒いから服を着る。暑いから木陰に入るというような状況に直接対応するための知恵でした。

 しかし、あるとき、この知恵によって世界を変革できるという考えを持つ人が現れます。この知によって、それまでの掘っ立て小屋というひとりの人間が実感できるサイズの建築物から、より大きく複雑な個人の実感だけでは作ることのできない建築が作られるようになりました。これは、建築技術に主に集中的に表れましたが、軍事や政治の分野にも、人間の実感を超えたより大きな人数を統御する技術として発達しました。

 この「知によって世界を構成することができる」という知が、最初のパラダイムで、これは、人間が徒歩で移動できるスピードではあったものの、瞬く間に世界中に広がりました。同じ知力を持つ人間でありながら、知で世界を構成できるというパラダイムを持つ人間と、実感の世界で生きる人間とでは、文明人と野蛮人というきわめて大きな違いがあったのです。

 このパラダイムに接触した野蛮人は、すぐに自分もそのパラダイムを受け入れて文明人になりました。こうして、人間は世界中で、動物のように自然の中で生きる生活から、人間として社会の枠組みの中で生きる生活へと進化していったのです。



 この「知によって世界を構成できる」という考え方は、ある一組の主体と客体を前提としていました。それは、人間という主体と自然という客体であり、更に範囲を狭く絞れば、味方という主体と敵という客体であり、更に狭くすれば、自分という主体と他人という客体でした。

 この考え方を論理的につきつめたのが、青年時代のデカルトです。デカルトは、青年時代のあるとき、何日間も何もすることがない状況に置かれました。そこで、仕方なく、自分が普段その青年らしい純粋さで疑問に思っていた「自分とは何か」という問題を考え始めたのです。

 若いデカルトが、自分の少ない人生経験は頼りにせずに、ただ論理的に、ということはただその当時あった知的パラダイムだけを指針にして考えた結論は、「我思う故に我あり」という「最初に個がある」という考えでした。最初に個がある。だから、他がある。しかし、個も更に本当の個に向かってどこまでも細分化されるし、他もまた次々と細かい他に分けてどこまでも細分化できる。これが、のちに分析主義哲学とい呼ばれる考え方でした。

 このデカルトの哲学は、若さ故の純粋さという魅力を持っていましたが、釈迦や孔子に代表されるアジアの哲学が持っていた老人の知恵をその哲学の中に組み込んではいませんでした。これが、その後のヨーロッパの発展と支配、アジアの停滞と隷属という関係を生み出しました。しかし、そのヨーロッパの発展は、二度の世界大戦と無数の小戦争、環境破壊と経済危機という若さの持つ暴走と裏腹の関係にあったのでです。(つづく)



 話が何だか大きくなってしまいましたが……。(^^ゞ



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